2017年2月、ハウス食品が“新時代のカレールウ”と銘打って「きわだちカレー」を発売した。固形ではなくペーストタイプ。開発に異例の7年半もかけたというカレールウは、これまでにない豊かな旨みとスパイスの香りが味わえるとして、大きな話題になっている。開発の経緯や苦労、製法の秘密などを製品企画の担当者に訊いた。

開発期間7年半! ハウスのカレーの新定番は豊かな香りがブワッと口の中に広がる本格派

画像: 開発期間7年半! ハウスのカレーの新定番は豊かな香りがブワッと口の中に広がる本格派
画像: 果実感がきわだつマイルドタイプ/コクがきわだつ中辛/スパイスがきわだつ辛口

果実感がきわだつマイルドタイプ/コクがきわだつ中辛/スパイスがきわだつ辛口

<キーパーソンはこの人>
ハウス食品株式会社 
食品事業一部 チームマネージャー 
萩原祐樹さん

お店のカレーの香りと味がおうちで手軽に楽しめます!

既存のルウへの消費者の不満はほぼなかった

日本人の国民食であるカレー。明治時代に日本の食生活に浸透したといわれているが、国民食にまでなった背景には、誰もが家庭で簡単においしいカレーを作れるようにしてくれるカレールウの存在がある。

そのカレールウの市場に話題の製品が登場した。「バーモントカレー」や「ジャワカレー」といった定番製品で市場シェアの約6割を占めるハウス食品が、2017年2月に“新時代のカレールウ”と銘打って発売した「きわだちカレー」だ。

「コクやスパイスが際立つカレーということで、きわだちカレーと名付けました。我々が目指したのは、飲食店でしか食べられないような本格的なカレーを、家庭でも手軽に再現できるカレールウです。製品開発では苦労も多かったのですが、ハウス食品の新たな定番となる製品が完成しました」

こう話すのは、きわだちカレーの製品企画を担当した萩原祐樹さん。約7年半という異例の長さに及んだ開発期間は、試行錯誤の連続だったという。

新製品の開発はまったくのゼロからスタートした。

最初に行われたのは、既存のルウに対する消費者の不満を探ること。だが、これがうまくいかない。例えば、ヒアリングで「ルウが溶けにくい」という不満が出て、ルウの形状を変えてテストしてもらうなどしたのだが、モニターの反応はイマイチなのだ。

「ほかにも不満は出たのですが、どれもあえていうならというレベルのもの。つまり、消費者は既存のルウに満足していて、新製品につながるような不満はなかったのです。いろいろと方向性の模索を続けてきましたが、新製品はこれまでとは違うおいしさを追い求めようという結論に達しました」

この結論のヒントになったのは、2011年に発売された東洋水産の「マルちゃん正麺」だ。新発想の独自製法により、袋麺のおいしさを劇的に進化させたこの製品のヒットを目の当たりにし、カレーでも同じことができるのではないかという着想が生まれたのだという。

そして、飲食店の本格カレーを家庭でも作れるカレールウという、新製品の方向性が定まった。

きわだちカレーの独自製法のイメージ

独自の技術によってホールスパイスを焙煎。スパイス本来の華やかな香りを抽出する。

焙煎したスパイスに、チャツネやトマトなどの、風味豊かな素材を加える。

製造時の加熱温度と加熱時間を可能なかぎり抑えることで、素材本来の豊かな風味を出す。

素材が本来持つ風味が生かされた、豊潤な旨みと華やかな香りのカレーペーストが出来上がる。

固形ルウではできない素材や製法を使用

きわだちカレーが目指したのは、素材の持つ豊かな旨みや香りを存分に味わえるプロの味だ。萩原さんたちは、インドカレーや洋食カレーのお店を食べ歩いて、研究を重ねた。

「カレーソースのベースになるのは旨みや甘みで、これにスパイス感が加わります。このバランスを整えるのが非常に難しいんです。試作を繰り返し、モニターからも意見をもらいながら、中辛は旨みやコク重視、辛口はスパイスの辛さや香り重視という味わいを決めました」

きわだちカレーのラインアップは、発売当初は中辛、辛口の2種類。これに、発売から半年で果実感を重視したマイルドが加わった。

ハウス食品では、同じベースを使った辛味で中辛と辛口の差を作るケースもあるそうだが、きわだちカレーでは3種類ともまったく違う味の組み立てをしているという。

味を決めるのと同時並行で取り組んだのは、製法の開発だ。

「家庭では難しいプロの技法や素材を製法に取り入れたいと考えたんです。結果、華やかな香りを得るためにホールスパイスを油で炒めたり、チャツネやトマトなどの風味豊かな素材を使用することにしました。ただ、これは従来の固形タイプのルウでは実現できないため、ペーストタイプを選択しました」

りんご果汁やハチミツなど、みずみずしい旨みを持った素材の風味を生かせるペーストタイプのルウだが、クリアしなければならない課題もあった。水分が多いため菌が繁殖しやすく、殺菌をしないといけないのだ。ただ、殺菌温度が高過ぎれば風味が失われてしまい、逆に低過ぎれば菌の繁殖を抑えられない。

「最適な温度を見極める作業を繰り返しました。また、ハウス食品の生産ラインにはレトルト食品のための殺菌設備はありますが、これでは繊細な温度制御ができないため、新たな設備投資も必要でした」

こうして、きわだちカレーの開発が完了。製品の方向性が定まるのに2年、味と製法が決まるのに4年、生産設備を整えるのに1年半という異例の長さの期間を経て、ようやく発売へとこぎつけたのだった。

ペーストなので溶けやすく、具材を煮込んだ鍋に入れたとたんにおいしそうな香りが一気に広がる。

繊細な風味を味わうなら牛肉と玉ねぎで

さて、筆者が試食した感想だが、予想をはるかに上回るおいしさに驚かされた。作っている段階から香りのよさを感じていたが、出来上がったカレーを口に入れると、豊かな香りがブワッと口の中に広がる。

もちろん、旨みもしっかりと感じられる。もう一口、もう一口と、どんどんスプーンが進む味わいだ。

筆者宅では、中辛と辛口を試食して、中辛のほうが好みだという意見で一致した。萩原さんによると、カレー好きには辛口のウケがよく、ハウス食品の社員にも好評だそうだ。

「マイルドは、お子さんと一緒に食べたいというお客様からの要望で追加されました。単なる甘口ではなく、スパイス感もちゃんとある、大人向けの甘口に仕上げています」

最後に、萩原さんにおすすめの具材を聞いてみた。

「きわだちカレーの繊細な風味を味わっていただくには、牛肉と玉ねぎのみというシンプルな組み合わせをおすすめしています。ただ、カレーは包容力のある料理で、何を具材にしてもまとめてくれるのがいいところです。個人的には、豚肉のように脂身の多いお肉でもシーフードでもおいしく作れると思います。自分の好きな具材を使って、本格的な飲食店のカレーを楽しんでいただきたいですね」

日本人の食文化の変化に合わせてハウスのカレールウもバラエティ豊富に

食文化が多様化し、インド料理店のカレーやそば屋のカレー、欧風レストランのカレー、スープカレーなど、日本人の“カレー偏差値“が上がっていく中で、ハウスのカレールウもバラエティさを増している。下に並ぶのはその一部だ。

画像: 上段右より「熟成コクデミカレー」「だしの匠カレー」「スパイス香る チキンマサラカレー」。

上段右より「熟成コクデミカレー」「だしの匠カレー」「スパイス香る チキンマサラカレー」。

「ジャワカレー キーマカレー」。

カレーを日本人の食生活に浸透させたハウスのルウ

ハウス食品がホームカレー(後にハウスカレーに改称)を発売したのは大正15年(1926年)。1960年代には印度カレー、バーモントカレー、ジャワカレーという現在も続く大定番商品を発売し、カレーを日本人の国民食へと定着させた。

ハウスカレー(1928年)/印度カレー(1960年)

バーモントカレー(1963年)/ジャワカレー(1968年)

Memo きわだちカレーの当初のターゲットユーザーは、子育てを終えて夫婦二人暮らしとなった「成熟家族世帯」。ただ、SNSでの反応などを見ると、共働き世帯にも好評だという。

インタビュー、執筆/加藤肇(フリーライター)

SPECIFICATION
●実売価格例・270円(税込)●内容量:155g(4皿分)●原材料名(コクがきわだつ中辛):果糖、デキストリン、植物油脂、でんぷん、ソテーカレーペースト、牛脂豚脂混合油、焙煎スパイスオイル、食塩、カレーパウダー、小麦粉、オニオンパウダー、チャツネ、バターミルクパウダー、みそ、ローストオニオンペースト、チキンエキス、りんご濃縮果汁、ウスターソース、加工黒糖、香辛料、にんじんペースト、脱脂大豆、トマトペースト、焙煎フェヌグリーク、チーズパウダー、粉末ソース、ガーリックパウダー、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、酒精、カラメル色素、乳化剤、酸味料、香料、香辛料抽出物

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