相変わらず人気が高い高級IH炊飯器。2006年に三菱が「本炭釜」を発売して以降、IH炊飯器に高級タイプという新ジャンルが確立した。それから10年余りたった現在も、各社が最高の炊き上がりを追求し続けている。ご飯をおいしく食べたい人にとって、高級タイプはもはや特別な存在ではない。

IH式が主流の中で、大半が「圧力IH」タイプ

かつて、炊飯器の炊飯方式は、「マイコン式」が当たり前だったが、1988年に「IH式」が登場すると、よりおいしくご飯が炊けるということで徐々に人気が高まり、約30年を経た今では、IH式が主流となっている。

IHとは、インダクション・ヒーティングの略で、日本語でいうと「電磁誘導加熱」。マイコン式は、ヒーターの熱を釜底から伝える仕組みだが、IH式は、電磁力を使って釜自体を発熱させるため、熱効率がよく、均一に熱くなる。このため、加熱ムラの少ない炊き上がりになるのが特徴だ。

ただし、IH式は内釜の素材によって発熱性能が異なるため、IHと相性のいい素材を選ぶ必要がある。マイコン式では、熱伝導性に優れるアルミや銅素材が利用されていたが、IH式では発熱性能の高い鉄、ステンレスなどを含む多層構造や炭素材料を用いることが多い。

また、IH式では、釜の内部の圧力を変えられるモデルが多く、炊飯時に100℃以上の高熱をコントロールしたり、吸水時に真空にしたりすることが可能。現在では、高級タイプを中心に、IH炊飯器の大半が「圧力IH式」になっている。

ここでは主要6社の最新モデルから、主力のIH式5.5合炊きモデルを取り上げた。だが、最近は、単身や二人暮らし世帯が増えていることから、必要なときに必要な分だけを炊ける3.5合炊きの高級タイプもラインアップされている。生活スタイルによっては、小容量モデルも併せてチェックするといいだろう。

炊飯器選びの基礎知識

●炊飯方式の違い

【IH式】
電磁力の働きで、金属製の釜そのものを発熱させる方式。熱効率がよく、均一に熱くなるので、加熱ムラの少ない炊き上がりが可能。

【圧力IH式】
炊飯中に内釜を密閉することで圧力を上げて、100℃以上の高温で炊飯する方式。お米の芯まで熱が通るので、旨みが引き出される。

画像1: ※写真は東芝機

※写真は東芝機

【マイコン式】
ヒーターの熱で内釜の底部から加熱する方式。銅やアルミ素材を使うと、伝熱性がよく、均一に加熱できる。小容量タイプの製品に多い。

●炊飯容量の種類

IH炊飯器の炊飯容量は、「〜3.5合」「5.5合」「1升」の3種類に大別できる。単身や夫婦二人世帯なら「3.5合炊き」が、4〜5人家族なら「5.5合炊き」が、大家族なら「1升炊き」が向いている。

画像: 炊飯器選びの基礎知識

●内釜の形状と素材

【羽釜形状が話題】
羽釜の特徴は、腹部の羽と上部の高さにある。羽があると、熱が逃げないので大火力を維持しやすい。また、高さがあると、噴きこぼれしにくく、連続加熱・沸騰が可能だ。

画像2: ※写真は東芝機

※写真は東芝機

【各社がさまざまな素材を活用】
発熱性の高い鉄、ステンレス、炭素。熱伝導性の高いアルミ、銅。これらの素材を取捨選択して各社各様に独自の内釜を追求している。例えば、タイガーでは、IHで発熱しない土をあえて採用し、周囲の熱で炊く「土鍋ごはん」を提案する。

内釜の素材は各社さまざま。羽釜形状がトレンド

各社とも、内釜の形状や素材にこだわりを持っている。注意深く見ていくと、考え方や方向性が微妙に異なっていて、なかなか興味深い。

まず注目したいのは、素材へのこだわりだ。象印の鉄、三菱の炭はその典型といえよう。鉄や炭素はIHと相性がよく、高い発熱性が得られるため、大火力で勢いよく炊き上がる特徴がある。

象印は伝統工芸「南部鉄器」の技術で、三菱は職人の手作業でと、どちらも一つずつ丹精込めて仕上げられていて、逸品感がある(三菱の内釜には、シリアルナンバーが付く)。両機とも羽釜形状となっているが、象印は、側面を少し斜めにして複雑な対流を起こすことで、また、三菱は、大きな泡を次々と沸き立たせ、お米を押し上げることで、激しくかき回して炊きムラを抑えている。

タイガーは、厳選された土から整形した、四日市萬古焼を採用する。土は、ほとんど発熱しないが、底部から内釜を取り囲む「遠赤特大土かまど」がIH発熱し、その熱がしっかりと内釜に伝わる構造だ。いわば、土鍋を火にかけてご飯を炊いているイメージ。内釜には熱伝導性を高める炭化ケイ素が新たに配合されていて、土鍋の特徴である蓄熱性のよさに、炭化ケイ素の熱効率の高さをプラスし、よりかまどに近い火力を実現する。

鉄や土ではなく、複数の素材を組み合わせてIHのよさを引き出そうという考え方もある。パナソニックはその好例で、沸騰を促進するダイヤモンド、素早く熱を伝えるアルミニウム、大火力を促すステンレス、釜内の高温を保つセラミックスの4層構造。ふたにもIHが搭載されていて、釜の上から加熱し続けることが可能。上部空間の温度が下がらず、高い発熱性と蓄熱性を実現する東芝も、複数の素材を用いてIHのよさを引き出す方向性。熱伝導率のいいダイヤモンドチタン、熱を素早く伝えるアルミニウム、大火力で熱対流を高める鉄+ステンレス、遠赤効果の高い備長炭コートという4層構造。底部の丸み、熱を閉じ込める羽、連続沸騰を可能にする上部空間など、フォルムは羽釜そのもの。一品一品削り出して仕上げている。日立は、アルミ合金に鉄の粒子を打ち込む独自の手法を採る。発熱性の高い鉄で効率よく熱を発生させ、その熱をアルミ合金の高い伝熱性で釜全体に素早く伝えることで、釜内の温度上昇のバラつきを減らして炊きムラを抑える。アルミ合金の採用で内釜が驚くほど軽いのも特徴で、持ち運びや手入れが楽だ。

■象印 NW-AT10
実売価格例:10万7730円

伝統工芸品「南部鉄器」を内釜に採用。大きな羽と角度のついた釜底の独自の形状で、ふっくらとした甘み豊かなご飯を炊き上げる。

■三菱 NJ-AW108
実売価格例:9万970円

純度99.9%の炭を削り出して作った厚さ10ミリの本炭釜を採用。お米に無理な負担をかけない1.0気圧で"かまどごはん"の味を追求する。

■タイガー JPG-X100
実売価格例:13万8240円

自慢のプレミアム本土鍋に新素材の炭化ケイ素を配合。お米に、よりしっかりと熱が伝わることで、お米本来の甘みや香りを引き出す。

鉄や土ではなく、複数の素材を組み合わせてIHのよさを引き出そうという考え方もある。パナソニックはその好例で、沸騰を促進するダイヤモンド、素早く熱を伝えるアルミニウム、大火力を促すステンレス、釜内の高温を保つセラミックスの4層構造。ふたにもIHが搭載されていて、釜の上から加熱し続けることが可能。

上部空間の温度が下がらず、高い発熱性と蓄熱性を実現する東芝も、複数の素材を用いてIHのよさを引き出す方向性。熱伝導率のいいダイヤモンドチタン、熱を素早く伝えるアルミニウム、大火力で熱対流を高める鉄+ステンレス、遠赤効果の高い備長炭コートという4層構造。底部の丸み、熱を閉じ込める羽、連続沸騰を可能にする上部空間など、フォルムは羽釜そのもの。一品一品削り出して仕上げている。

日立は、アルミ合金に鉄の粒子を打ち込む独自の手法を採る。発熱性の高い鉄で効率よく熱を発生させ、その熱をアルミ合金の高い伝熱性で釜全体に素早く伝えることで、釜内の温度上昇のバラつきを減らして炊きムラを抑える。アルミ合金の採用で内釜が驚くほど軽いのも特徴で、持ち運びや手入れが楽だ。

■パナソニック SR-SPX107
実売価格例:8万9510円

大火力おどり炊きと可変圧力おどり炊きの「Wおどり炊き」で均一に熱を伝え、甘みともちもち感がアップしたご飯を炊き上げる。

■東芝 RC-10ZWL
実売価格例:9万4220円

内部を真空にして素早く吸水させる「真空αテクノロジー」と、炊飯時に圧力をかける「圧力可変コントロール」で、甘みと粘りを引き出す。

■日立 RZ-AW3000M
実売価格例:7万800円

圧力をかけながら、スチームで蒸らしてご飯を炊く独自機能「圧力スチーム炊き」を搭載。ふっくら甘く、艶やかなご飯が炊き上がる。

各モデルの特徴ポイント

各社オリジナルの一工夫がとてもユニーク

象印は、「わが家炊き」がおもしろい。これは、最初に「ふつう」で炊き、食べたご飯の硬さや粘りの感想を入力すると、次回から自動的に炊き方を変えて、食感を調整してくれる機能だ。食べた後、操作パネルから感想を入力することで、「かためでもちもち」「やわらかめでしゃっきり」など、硬さと粘りが微妙に変化し、求めていた食感に進化していく。

タイガーは、「押麦」「もち麦」の2種類の大麦に合わせた独自の炊飯プログラムが目を引く。押麦では、白米・大麦それぞれに合わせた2段階の吸水を行ったり、もち麦では、十分な吸水と高温の炊き上げでニオイを抑制したりする。「麦1割」と「麦3割」を選べる麦専用計量カップが付属し、内釜には、麦めし専用の水目盛りもある。

東芝は、「真空αテクノロジー」に感心する。内釜内部を真空にする機能で、吸水時は、お米の中心部まで水を浸透させることが可能。炊飯時は、一粒一粒の芯まで熱が届いて甘みを引き出し、ふっくらと大粒に炊き上げる。保温時も、内釜に残る空気を追い出して密閉するので、水分の蒸発が抑えられ、白米なら最大40時間おいしく保温できる。

パナソニックは、「220℃ IHスチーム」がユニークだ。内釜の中に最高220℃のスチーム(過熱水蒸気)を噴射して高温加熱し、お米の芯まで熱を浸透させて、溶け出た旨みをコーティング。張りのあるご飯を炊き上げる。スチームは保温時にも働き、約6時間後と約12時間後に自動的に噴射。ご飯の乾燥を防いで艶々に保温する。

日立は、「圧力スチーム炊き」が注目される。こちらは、圧力をかけながら、最高105℃のスチームで蒸らすという仕組み。加熱時の蒸気を水分にしてためておき、蒸らし時に加熱してスチームを発生するので、給水は不要だ。保温時も、ためた水分を定期的にスチームにして送り込み、ご飯を約40時間、しっとりと保つ。

三菱は、「銘柄芳潤炊き」が秀逸。選択ボタンで銘柄を指定すると、個々の特性を生かした極上の味に炊き上がるという機能で、全国35銘柄がプリセットされている。パナソニックでも同様の機能を装備し、50銘柄に対応するが、三菱では各銘柄に対して、「もちもち」「しゃっきり」など、全9種の食感を炊き分けることができる(パナソニックでは、全3種)。

今月の極意!
食感の調節が可能なので、好みの味を追求するといい

実際に白米を炊いて試食してみたが、いずれも最上級モデルだけあって、どれも格別なおいしさを実感できた。具体的な味については、人それぞれ好みがあるので、深くは言及しないが、どのモデルも食感の微妙な調節が可能なので、こうした機能を使って自分好みの味を追求すれば、さらなる満足感が得られるだろう。

なお、今使っている炊飯器の味に不満がないなら、同じメーカーを選ぶと間違いが少ないことも知っておきたい。

ここもポイント!
◆玄米、雑穀米、麦めしなど、自分に必要な炊飯モードをチェック
◆おこげ、おかゆ、温泉卵など、炊飯以外の調理が可能な機種もある
◆内釜の質感や重さなどは、実際に自分の手で触って確かめたい

監修/中村 剛
◆Profile/「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権で優勝の実績を持つ家電の達人。家電製品総合アドバイザー、消費生活アドバイザー。東京電力「くらしのラボ」所長。現在、暮らしに役立つ情報を動画(Facebook)で配信中。
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取材・執筆/市川政樹(テクニカルライター)

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