家庭で気軽に、香りと味わいが楽しめる話題のエールビール/ヤッホーブルーイング【キーパーソンに訊け!】

文具・ホビー・カメラ

クラフトビールが盛り上がりを見せている。日本におけるクラフトビールの代表的存在は、ヤッホーブルーイングの「よなよなエール」だ。個性豊かなビールを生み出し続け、ビール業界でも確固たる地位を築いている同社の井手直行代表取締役社長に、創業の経緯や企画・開発の裏側などを訊いた。

ラガー一辺倒の市場に一石を投じて20年。夜な夜な、気軽に飲める本格エールビール

よなよなエール(248円・税抜)

ヤッホーブルーイングの第1号ビールにして主力商品。濃厚な味わいと芳醇な香りを楽しめる伝統的なエールビールをお手ごろな価格で提供。モルトの甘みとホップの香りに、柑橘系のアロマを堪能できる。

<キーパーソンはこの人>
株式会社 ヤッホーブルーイング 代表取締役社長 井手直行さん

味の基本方針もパッケージも価格も20年間変えずにやってます!

観光商材としてのビールとは一線を画す

小規模な醸造所が作る、個性豊かなビール。それがクラフトビールの一般的な定義だ。数年ほど前から、日本でクラフトビールに注目が集まり始めた。

現在は、クラフトビールを売りにする飲食店が増加し、大手メーカーも参入するなど、クラフトビール界は盛り上がりを見せている。

そんなブームの中心にいるのが、日本のクラフトビール界のトップメーカーであるヤッホーブルーイング(以下、ヤッホー社)だ。

キンキンに冷やすのではなく、香りを楽しむために13℃で飲むのがよなよな流。「目をとじて、静かに一分間正座」「肩の力を抜いて、三回深呼吸すべし」「まず勢いよく、そして静かにグラスに注ぐ」など、パッケージの裏に書いてある”作法”にも遊び心が感じられる。

「ヤッホーブルーイングの設立は1996年。創業者が海外留学中にパブで飲んだクラフトビールのおいしさに感銘を受け、このビールを日本でも広めたいという思いで作ったのが、主力商品の『よなよなエール』です」

こう語るのは、同社代表取締役社長の井手直行さん。

創業者である星野リゾートの星野佳路代表に誘われ、会社設立時から苦楽をともにしてきた創業メンバーの一人だ。日本におけるクラフトビールの歴史は、1994年に始まっている。

酒税法の改正によりビール製造免許の製造量下限が大きく引き下げられ、小規模な醸造所でもビールを作れるようになったのだ。

これにより、全国各地でさまざまな地ビールが誕生し、ブームが起こった。

ただ、ヤッホー社は最初から、それらの地ビールとは異なる商品作りを目指していたという。

「よなよなエールのコンセプトは‶家庭で気軽に飲める本格的なエールビール″というもので、当初から全国のビールファンに飲んでもらいたいという思いがありました。そのため、商品名には地名を入れず、観光商材としてのビールとは一線を画しました。また、税抜き248円という購入しやすい価格設定にしました。この価格は発売以来、ずっと変わっていません」

地ビールはやがて、価格が高い、品質にばらつきがあるといった理由で消費者に飽きられ、ブームは終わりを迎えた。

ヤッホー社もブーム終焉のあおりを受け、1999年をピークに売り上げが数年間は低迷。

だが、インターネット販売の活用などで地道にファンを増やし続け、現在ではビール業界で確固たる地位を確立している。

華やかな香りとしっかりとしたコク

よなよなエールをはじめとするヤッホー社の商品はすべて、「香りと味わいを楽しむエールビール」という種類に分類される。

これに対し、国産ビールメーカー大手の商品は、そのほとんどが「喉ごしを楽しむラガービール」という種類だ。

クラフトビールとしては非常に珍しい缶充填のライン。20年前、設備投資はばく大だったが、品質の保持と流通性のよさは、ビンのそれをはるかに凌駕した。

「ラガービール一辺倒の日本のビール業界に一石を投じたいという思いも、創業の動機でした。世界には個性豊かなビールがあり、シーンに応じたビールを楽しむ文化を日本にも持ち込みたかったんです。よなよなエールの特徴は、華やかな香りとしっかりしたコク。夜な夜な、のんびりした気分で飲むイメージを商品のネーミングやパッケージにも取り入れています」

実は、よなよなエールには、モデルとなる海外のクラフトビールが存在しており、開発では、その味に近づけるべく試作が繰り返された。

海外のクラフトビールメーカーは、使用している原材料の情報をオープンにしていることも多く、それらしいビールを作ること自体はそれほど難しくない。

ただ、まったく同じ味にするための原材料の選定や製法の確立までには、試行錯誤の連続だったという。

麦汁やホップの香り漂う製造ラインを見学。ここは麦汁に酵母を加えて上面発酵を行うタンクが並ぶ。銘柄によっては、この段階でもホップが加えられる。

「よなよなエールの柑橘を思わせる爽やかな香りは、米国のクラフトビールでよく使われているカスケードホップが決め手になっています。また、ほかのホップとのブレンドの割合や、麦汁へのホップの投入タイミングなどにも、独自のノウハウがあります」

発売から20年。よなよなエールの製法は、製造技術や設備の進歩に伴って細かな調整はされているが、味の基本方針はずっと変わっていない。

発売当初、ラガービールしか知らないほとんどの日本人には、エールビールの味は衝撃であり、中には拒絶を示す人もいたはずだ。

それでも味を変えなかったヤッホー社の姿勢も、ビールファンの支持を集める要因なのかもしれない。

大手のビールメーカーにはできない創作性が爆発 !

大手では実現できない多彩なテイストや企画性は、クラフトビールならでは。

しかも、いわゆる地ビールとは異なり、ビンではなく、缶で全国に商品を流通させるシステムを持つのもヤッホー社の強みだ。

グラスにビールを注ぎ、缶のデザインやコピーを眺めながら飲むのも楽しい。

▼東京ブラック(267円・税抜)

本場イギリスの濃厚な黒ビールをイメージしたロブスト・ポータースタイル。ロースト麦芽の色合いとココアを思わせるロースト香が特徴。

▼水曜日のネコ(267円・税抜)

大麦と小麦の麦芽を使用し、コリアンダーシードとオレンジピールで風味付け。ホップの苦みが控えめの、女性におすすめのエール。

▼インドの青鬼(267円・税抜)

ホップを大量に投入することで、強烈な苦みと深いコクが楽しめるインディア・ペールエール(IPA)というスタイルの個性的なビール。

どんな人に飲んでほしいかをまず定める

現在、ヤッホー社の商品ラインアップには、よなよなエール以外に「インドの青鬼」や「水曜日のネコ」などが加わっている。新商品の企画・開発はどのように行われているのだろうか。

「企画・開発は、私を中心にした数人の社内プロジェクトチームをそのつど作り、まずは、どんな人に飲んでほしいかというターゲットを定めます。次にターゲットへのインタビューなどを行い、商品コンセプトを決定。そのコンセプトにマッチするビールの開発をしながら、ネーミングや缶デザイン、コピーの作成も進めていきます」

ヤッホー社の商品は、味だけでなく、ネーミングもユニークなものが多い。

シリーズ化されている「前略 好みなんて聞いてないぜSORRY」などは、一見するとユルいノリで考えられた商品名のようだが、かなり綿密なマーケティングの結果だというのは興味深い。

また、ヤッホー社は、新たな消費者層の開拓にも積極的だ。

2014年には、ローソンと共同で「僕ビール、君ビール。」を開発し、ビールをあまり飲まない30歳前後の男性からも好評を得ることに成功している。

「インタビューでわかったのは、彼らはお酒が嫌いなわけではなく、ビールの味とイメージが嫌いなんだという事実でした。特にイメージは、”上司に無理やり飲まされた味”というひどいもので、それならまったく違うビールを作ろうと、セゾンというベルギーなどの伝統的なスタイルにしたんです。これを飲んで『こういう味のビールもあるんだな』と、ビールの魅力に気づいてくれる人が増えるといいなと思っています」

ヤッホー社が日本にもたらしたのは、ビールの多様性だ。

今後、クラフトビールのブームは落ち着きを見せるかもしれないが、さまざまな個性を持つビールが日本のビール文化として定着することを期待したい。

ヤッホーブルーイングの銘柄が味わえる直営バル「よなよなビアワークス」は、現在、東京都内で新宿、青山、神田、吉祥寺、赤坂、恵比寿の6店舗を展開中。4/13には新宿・歌舞伎町にオープン予定。

佐久の醸造所直送のビールを、各銘柄に合わせた形のグラスで、ベストなコンディションで飲める。供される料理もビールに合う、こだわりのメニューばかり。

Memo
今回の取材で目からウロコだったのは、ビールの品質維持にはビンよりも缶のほうが適しているという事実だ。ビンのほうがおいしそうだと感じていただけに、かなりのインパクトだった。

SPECIFICATION
●ブルワリー/ヤッホーブルーイング●産地/長野県軽井沢町●タイプ/エール(上面発酵)●ビアスタイル/アメリカンペールエール●テイスト/フルーティー、ホッピー●アルコール度数/5.50%●容量/350ml●原材料/麦芽・ホップ

インタビュー、執筆/加藤 肇(フリーライター)

※価格は、記事制作時のものです。

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