(2020年12月2日更新)現代人にとって、パソコンやスマホは生活に欠かせないものになっています。さらに昨今のコロナ禍で、モニターを見る時間が増えた人も多いのではないでしょうか。「スマホ老眼」という言葉がよく聞かれるように、近くばかりを見る生活が続くと、目の不調が現れることが少なくありません。子供や若者の目のコンディション低下も、問題になっています。自力で視力低下を予防・改善できる方法はあるのでしょうか。ほんべ眼科院長の本部千博医師と、Y’sサイエンスクリニック広尾理事長の林田康隆医師に、お話を伺いました。

視力低下を防ぐには「脳」の働きも重要

私たちはふだん、「目」で物を見ると思っています。しかし実は、目を使って情報を収集し、脳で物を認識しているのです。つまり、視力低下を予防・改善するには、目だけではなく、脳の疲れや老化も防がなければなりません。目と脳を同時に刺激し、鍛える方法について、Y’sサイエンスクリニック広尾理事長の林田康隆先生に伺いました。

②解説者のプロフィール

画像: ②解説者のプロフィール

林田康隆(はやしだ・やすたか)

医療法人社団康梓会Y’sサイエンスクリニック広尾理事長。医学博士。第二大阪警察病院(アイセンター)・医療法人セントラルアイクリニック執刀医。日本眼科学会認定眼科専門医。『1日1分見るだけで目がよくなる28のすごい写真』(アスコム)など著書・監修多数。
▼Y’sサイエンスクリニック広尾(公式サイト)
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ブルーライトの悪影響も

目は本来、遠くを見るほうが得意

私たちの目は本来、遠くの物を見やすく、近くを見ると疲れやすい構造になっています。目のピント調節は、主にカメラのレンズに似た働きをする「水晶体」と、その周りの筋肉「毛様体筋」で行われます。遠くを見るときは毛様体筋が緩み、水晶体を薄くします。近くを見るときは毛様体筋が縮んで、水晶体を厚くします。近くを見続けるのは、ずっと筋肉を緊張させて力こぶをつくり続けるようなもの。負担がかかるのです。
 
そもそも人類の歴史においては、長らく「遠くにピントを合わせる」ことのほうが、自然かつ重要でした。狩猟採集生活では、遠くにいる獲物や危険な敵をいち早く発見することが、自らの生命に直結します。現在も、狩猟生活をしている人は視力がよいものです。
 
ところが現代社会では、ほとんどの人が手もとを見る作業を中心に生活していて、アフリカのマサイ族すらスマートフォンを持っている時代です。顔から20㎝ほどの超至近距離で、スマホの画面を長時間見つめて過ごしていれば、目に負担がかかるのは当然です。
 
今までの論文からも、環境の変化が近視人口の増加原因になっていることは間違いないようです。しかもスマホの画面は、ブルーライト(波長が短く強い光)を含む光を発しています。こんなに長時間、光源を見つめ続ける時代を迎えた私たちは、「見る」ということをもっと大切に考えなければなりません。
 
しかし、あまり問題視されないまま、目を取り巻く環境は激変の一途です。この調子では、今後もさらに近視人口が増え続けるでしょう。近年は、20~30代の若い人に起こる「スマホ老眼」も問題になっています。

環境と目の使い方で進行を予防できる

いわゆる老眼は、主に加齢によって水晶体がかたくなることで起こります。私が危険視するスマホ労眼は、これまで老眼とは無縁だった若い人たちでも、至近距離を見続けることで毛様体筋がこり固まり、ピント調節がうまくできなくなった人たちを指します。
 
しかし、このような目の不調もあきらめる必要はありません。ひと昔前まで、近視は遺伝によるもので、老眼は老化現象だから、あきらめるしかないと考えられていました。けれど、ここまで述べてきたように、現代人の近視やスマホ老眼は、生活環境と目の使い方が一因です。すなわち、これを改善すれば、進行をある程度は予防できると考えられます。
 
実際に論文でも、デスクワークと違って、比較的遠くを見る屋外作業は、近視の進行を抑制し得ると発表されています。また、近くを見続けると近視を進行させる可能性があるという研究もあります。これらは、目を使う環境が視力に影響を与えることを示唆しています。

「物を見る」には脳の働きが重要

「ながらスマホ」は脳にも負担をかける

私たちは物を見るとき、「目で見ている」と思っています。しかし実は、目がとらえているのは視界の中心付近のごくわずかの範囲で、それ以外のあいまいな情報は脳が補完しています。つまり、私たちが物を「見る」ことには、実は脳の働きが大きくかかわっているのです。

ですから、四六時中の「ながらスマホ」は目だけでなく、脳にも常に負担をかけているといえます。

現代は、科学技術の進歩がどんどんスピードアップし、環境の変化に人間の体が追いついていない状態です。今を生きる我々は、意識して、目に本来の動きをさせることが大切なのです。

目の中の筋肉をほぐし脳も刺激する

衰えたピント調節力を回復するには、目の中の筋肉をほぐし、水晶体の柔軟性を高めるストレッチのような運動が大切です。難しく考える必要はありません。要は、目をゆっくりと大きく動かせばいいのです。
 
そこでお勧めしたいのが、「ペンさし運動」です(やり方は次項参照)。右手に持ったペンの先が、左手に持ったキャップにささるまで、目で追います。

あるテレビ番組で、女優のいとうまい子さんにペンさし運動を行ってもらったところ、両目とも0.02だった視力が、右目0.08、左目0.09に回復しました。視力は、低い人ほど数字が上がる意味が大きくなります。0.9の人が1.0になるのと、0.1の人が0.2になるのとでは、同じ0.1でも価値が全く違います。
 
ペンさし運動は、一点を注視しつつ、ゆっくりと目を動かすのがポイントです。それによって、目の運動とともに、脳への刺激にもなります。

▼「ペンさし運動」のやり方

用意するものは、キャップつきのペンだけです。ボールペンでもサインペンでもOK。大きさは問いません。

ペンさし運動は、目をゆっくりと動かすことで、目の筋肉をほぐすとともに脳も刺激して、ピント調節力を高めるトレーニングです。いつ行ってもかまいません。1日20回行いましょう。

右手でペンのキャップを持ち、胸より低い位置で構える。左手はペン本体を持ち、頭より高い位置に上げる。一度まばたきをしてから、ペン先を両目で見る。

画像1: ▼「ペンさし運動」のやり方

ペン先をじっと見つめながら、ペン本体をゆっくりと(5秒ほどかけて)キャップを目がけて動かし、キャップにペン本体をさす。さし終わったら、一度まばたきを行う。できるだけ顔を動かさず、目だけを動かすようにすること。①~②の一連の動作を、1日20回行う。

画像2: ▼「ペンさし運動」のやり方

より効果がアップする「ペンさし運動」のアレンジ

いつも同じパターンで行っていると、脳がペン先の動きを覚えてしまい、刺激が弱まります。ペンが毎回簡単にキャップにささるようになったら、やり方をアレンジしてみましょう。少し変化をつけるだけで、別の刺激になります。ペンがキャップにささらないうちは、無理に変える必要はありません。

ペンと目の距離を変える

ペンさし運動を行う際に、毎回、腕を伸ばしたり縮めたりしてみましょう。ペンと目との距離が変わるだけで、目の動きや脳への刺激が違ってきます。

画像: ペンと目の距離を変える

ペンとキャップを持ち替える

ペンとキャップを持つ手を、左右反対にしてみましょう。目の動きや脳への刺激が変わり、それだけでもキャップにさすのが難しくなります。

画像: ペンとキャップを持ち替える

まとめ

目の不調を感じたら、まずは眼科を受診をして、状態を確認することが大切です。病気の場合は適切な治療を受ける必要がありますが、目も他の臓器と同様、生活習慣によって不調になったり、改善したりすることがわかりました。日々の生活のなかで、体力だけでなく、「目を鍛える」という意識を持ちたいものです。

今回、本部先生と林田先生に教えていただいたトレーニングは、いずれも簡単にできるものです。「遠くを見る機会を増やす」「ながらスマホをやめる」といった生活習慣の改善とともに、1日数分、目のトレーニングを始めてみてはいかがでしょうか。

*なお本稿は『老眼・近視 名医が教える最高の治し方』を一部抜粋・加筆して掲載しています。

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