DAPはエントリー機でもハイレゾ再生は当たり前
スマホの音質も向上し、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)はしばらく買っていない、という人も多いだろう。しかし、DAPには、スマホにはない多くのメリットがある。
まずは、高音質なこと。最近では、高音質なハイレゾ音源が手に入れやすくなったが、多くのスマホはDACや回路設計がオーディオ向きにはなっていない。しかし、DAPではハイレゾ対応は当たり前で、エントリー機でもDSD再生が可能。採用DACや回路設計にもこだわり、音質を追求しているのだ。また、最近のスマホはヘッドホン出力端子を備えないものも増えており、高音質な有線ヘッドホン/イヤホンを使いたいなら、やはりDAPが便利。
そして、オーディオ専用だけに、操作性が練られている点も特徴。専用ボタンで手探り操作ができる製品も多い。携帯性は製品によってかなり異なるが、コンパクトな機種は驚くほど小さい。USB DACとして使えたり、バランス接続端子を備えたりなど、付加機能も充実している製品が多い。
さらに、スマホだと、いいところで通知音が入ったり、バッテリーの残量が気になったりするが、DAPは音楽以外に気を遣わなくていい。音楽好きなら、スマホと2台持ちするのが正解といえるだろう。
以下では、エントリークラスからハイエンドクラスまで、注目のDAPを集めて試聴してみたので、機種選びの参考にしてほしい。
■注目すべき四つのポイント
たくさんの音楽を転送するにはメモリー容量も重要だが、最近はmicroSDカードスロットを備えて自分で差し替えられる場合がほとんど。
ハイレゾ音質
何といっても気になるのが音質。ハイレゾ再生をこなす採用DACにも注目したい。
携帯性
超小型からポータブルらしからぬ大きく重いものまである。使うシーンを考えよう。
操作性
専用機だけに再生/停止などの専用ボタンを装備。メニューなどの使い勝手はさまざま。
付加機能
USB DAC、ブルートゥース、バランス接続など、自分に必要な機能があるかチェック。
■バランス接続対応機種も増加
対応ヘッドホンやイヤホンをつなぐことで、より高音質に楽しめるのがバランス接続だ。ただし、現状では、端子形状が複数存在している点には注意。
エントリークラスの注目モデルをチェック!
ハイレゾ対応プレーヤーというと高そうなイメージを持つ人もいるだろう。しかし、今はお手ごろ価格でハイレゾまでカバーし、携帯性に優れ、機能的にも十分な魅力を備えた製品が増えている。
持っていることを忘れる超小型&多機能プレーヤー
SHANLING
M0
実売価格例●1万5800円

わずか4センチ四方の超小型モデル。金属筐体で安っぽさは感じさせず、専用ケースも付属。本体メモリーは搭載せず、microSDに保存する。DACはES9218P。
●幅40㎜×高さ45㎜×奥行き13.5㎜●38g
PCM384/32、DSD5.6M(PCM変換)
まるで、AppleWatchのような小ささだが、384kヘルツまでのPCM音源再生可能など、スペックは本格派。ブルートゥースはLDACに対応し、手持ちのイヤホンをワイヤレス化することも可能。コンパクトなだけに、小型画面での操作は少し慣れが必要。音質は低域が軽いが、ハイレゾらしい高域のきらびやかさは楽しめる。
操作部/物理的な操作部は、音量ダイヤル兼用ボタンのみ。選曲は画面のタッチとフリックで行うが、画面が小さいため慣れが必要。
ソニーならではの高音質化機能を搭載し、操作性も良好
ソニー
NW-A45
実売価格例●1万9240円
片手で無理なく持てて、操作性は良好。USB DAC機能のほか、圧縮音源をハイレゾ化するDSEE HXなど、高音質化機能も充実。ブルートゥースはLDAC対応。
●幅54.8㎜×高さ97.3㎜×奥行き10.7㎜●98g、PCM192/32、DSD11.2M(PCM変換)
豊富なラインアップを誇るウォークマンの中で、本機はハイレゾエントリーモデル。とはいえ、独自の高音質化機能が取り入れられ、実際に音源を聴いてもとてもバランスがよく、整った音で、万人におすすめできる。16Gバイトの本体メモリーに加え、microSDにも保存可能。また、ノイズキャンセリングイヤホン付属モデルも用意。

操作部
右側面にボタン類が集中し、手探りでも操作しやすい。画面タッチでもボタンでも好みに合わせて選べるのはうれしい。
Astell&Kernが技術協力したバランス良好な入門モデル
ACTIVO
CT10
実売価格例●3万9800円
コンパクトで丸みを帯びているので、手にしたときの収まりがいい。DACはCS4398でバランス接続端子は装備しないが、ブルートゥースはaptX HDに対応する。
●幅65.2㎜×高さ93.2㎜×奥行き15.5㎜●112g
PCM192/24、DSD11.2M(PCM変換)
Astell&Kernが開発に協力、DACなど主要回路を一体型モジュールとしてまとめた「TERATON」を採用する。フリックでメニューを引き出す操作は高速で快適かつわかりやすい。音質はふくよかで力強さを感じさせるもの。ハイエンド機に比べると機能や音質で違いはあるが、総じてバランスよくハイレベルにまとまった秀作だ。
背面
前面が黒を基調としているのに対し、背面は一転して白を基調としたカジュアルデザイン。
ミドルクラスの注目モデルをチェック!
せっかく買うならいいものが欲しいけど、ハイエンドはさすがに高価すぎる、そんな人には少し上位のミドルクラスを試してみてほしい。ハイエンドに迫る機能と音質の製品が登場している。
ワイヤレス機能非搭載で音質重視。バランス接続も使える
audio-opus
OPUS#1S
実売価格例●4万9680円
シャープな形状の本体は、がっしりとして少し大きめ。DACはCS4398を2基搭載し、バランス接続や光デジタル出力にも対応するなど、ハイエンドに迫るこだわりを見せる。
●幅72㎜×高さ112㎜×奥行き18㎜●190g
PCM192/24、DSD5.6M(PCM変換)
本機は、デュアルDAC構成でバランス出力(2.5ミリ)端子も装備するなど、かなりこだわりの回路設計。聴いてみると、各楽器音のディテールがわかりやすいシャープなサウンド。ただ、音質重視でWi-Fiやブルートゥースは非搭載なため、たまにはワイヤレスで気軽に使いたい、という人には向かない。

カードスロット
microSDスロットは2基。内蔵メモリー含め最大832Gバイトの大容量。
ハイエンドクラスの注目モデルをチェック!
ポータブルオーディオとはいえ、もはや価格的にもサイズ的にも手軽さの枠を超えているモデルが多いハイエンドクラス。では、下位クラスの製品と何が違うのか、検証してみよう。
プロ向きのDAC回路を使ったハイスペックモデル
Astell&Kern
A&futura SE100
実売価格例●21万9880円
同ブランドのプレミアムライン。シャープな造形の本体いっぱいに画面が配置される。DACはプロ向けの贅沢な8チャンネル構成のES9038PROをポータブル機として初めて採用。
●幅75.8㎜×高さ132㎜×奥行き15.3㎜●241g
PCM384/32、DSD11.2M(ネイティブ)
現在のAstell&Kernは3ライン構成で、A&futuraは真ん中に位置する。つまり、さらに上位モデルもあるのだが、実際にこのSE100を聴くと、静まり返った空間がシャープな音でハイスピードに満たされていき、下位モデルとの違いにうならされる。確かに安価ではないが、聴き比べると納得させられる。

操作部&端子部
ボリュームダイヤルが使いやすい。底面にバランス出力端子(2.5ミリ)を装備。
解説/大坪知樹(フリーライター)
※価格は記事制作時のものです。