「セカンドオピニオンを聞きたい」と切り出したときの医師の反応はピンキリです。行ってらっしゃいと笑顔で送り出す医師と、そんなの意味がないという顔をする医師がいます。セカンドオピニオンを認めるかどうかは、その医師の自信と知識、そして自意識が最も出るところなのです。【解説】佐藤綾子(ハリウッド大学院大学教授・博士<パフォーマンス学、心理学>)
解説者のプロフィール
セカンドオピニオンを切り出した時の主治医の反応は…?
どの科の医師でも同じ傾向がありますが、その医師の診断のほかにセカンドオピニオンを聞きに行きたいと切り出し、「ついては現在のカルテをください」といったときの反応は、ピンキリです。
「それはいいですね。行ってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれる医師と、「そんなのを聞いてもあまり意味がない」という顔をしたり、実際にそのようにいったりする医師がいます。
▪セカンドオピニオンを受けて良い結果に向かった
そのいい目印として、漢方薬の話をしましょう。長年、私は墨田区の同愛記念病院で、変形性股関節症の定期診断を、2ヵ月に1回受けていました。日常生活に支障はないのですが、大腿骨(太ももの骨)骨頭と臼蓋(骨盤のくぼみ)がほんの少しだけずれていて、激しい運動を何日か続けると、股関節の同じところが痛くなるのです。
それで、当時院長だった土屋正光先生(2012年6月から2016年まで院長在職)に、漢方薬について専門医にセカンドオピニオンを聞いてもいいかと尋ねました。
すると先生は、「どうぞどうぞ、行ってらっしゃい」といって、レントゲン写真を渡してくれました。「漢方薬が、あるいは漢方的な治療が何かプラスの影響を与えるならば、それはそれでとり込んでいこうではありませんか」というわけです。
そのとき私が相談したのは、漢方薬と、鍼治療についてでした。
先生が全く反対しなかったので、私は安心して漢方薬と鍼治療を受けました。
両方ともよく効いたようです。こうして、西洋医学と東洋医学を組み合わせながら、よい結果に向かいました。
▪自身のなさと自意識がでるところ
セカンドオピニオンを認めるかどうかは、その医師の自信と知識、そして自意識が最も出るところです。
「自分が診察しているのに、セカンドオピニオンなどというのはけしからん」というのは、自意識過剰の医師。
そして、自分の診断や治療になんとなく自信がない医師も、セカンドオピニオンを聞くといわれると、ちょっと心配になったりします。
セカンドオピニオンを認める医師が増えてきている
メディカルパフォーマンスの研究で多くの医師たちとごいっしょし、また、いくつかの病院や医師会、医学系学会に、おそらく30回近くは講演や研究発表に行っている私としては、そこでセカンドオピニオンについての考えを必ず聞くことにしています。
私の実感としては、この10年間でずいぶん医師たちの考えが変わり、「セカンドオピニオンを聞いて、両方合わせて考えるほうが大いによろしい」という医師がほとんどになりました。
▪少しでも違うと思ったら遠慮なく申し出てよい
もしもあなたが、この医師の意見はちょっと違うかもしれないと思ったときは、遠慮せずその医師に真正面から相談をして、「セカンドオピニオンを聞きにいくので、紹介状や、レントゲンなどのデータをください」といってみるべきです。専門医は専門分野についてよく知っています。
主治医はあなたとのつきあいも長いでしょう。けれども、あなたの人生の中でいちばん長くあなたの体とつきあっているのは、あなた自身です。セカンドオピニオンを聞きたいと思ったら、遠慮なく申し出てみましょう。
私と大阪市立大学理事長兼学長との共著『あなたの主治医が名医に変わる本』では、「いい医療を受けるための13ポイント」「名医を味方につける診察室のふるまい16」など、さらに詳しくご紹介しています。