アメリカで開発され、1999年に日本でも使用されるようになったのが手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」。最新のダ・ヴィンチは第4世代になる。第3世代と比べ、視野が広がり、より鮮明な画像で映し出すことができる。さらにアームが細くなったことでより細かい手術も可能になるという。また、2018年4月の診療報酬改定で新たに12術式が保険適応となり、医療選択の幅が広がってきた。(特選街web編集部)

開腹手術と低侵襲治療

近年大きく変わったものの1つに「外科手術」が挙げられるだろう。
以前の外科手術では、メスによって大きく患部を切開して病気の治療をする開腹手術がメインであった。文字通り、腹部の切開をしていることから、肉体的な負担はもちろん、長期の入院などによる精神的な負担があった。
そこで、発展してきたのが「低侵襲治療」だ。侵襲とは、ざっくり言えば、患者の体に負担になることを指す。つまり、低侵襲治療とは標準治療と比較して、患者の負担が少ない治療のことをいう。

●腹腔鏡手術とは

外科手術においてはこの「低侵襲化」が顕著だ。たとえば、開腹手術で行われていた治療を内視鏡手術にすることは低侵襲治療だといえる。内視鏡手術では、できるだけ出血を少なくしたり、傷が小さかったり、術後の痛みが少ないため、患者側の負担は少ない。
しかし、内視鏡手術は、あらゆる病気に対応できるわけではない。胃や大腸ポリープなどの消化管、気道、尿路などの疾患に限定されたり、早期がんのような病変が浅いものが対象となっており、開腹手術と比較して、適応が限定されている。

開腹手術の高い治療効果と、内視鏡手術の低侵襲性を併せもった手術「内視鏡外科手術」が注目されるようになってきた。それが、腹腔鏡手術や胸腔鏡手術といわれる、体内に空間を作って体の中で行う手術のことだ。
患者側にはメリットが多いように見えるが、実は欠点もある。腹腔鏡手術は、医師にとって「難易度が高い」ということだ。
習得には時間を要し、手術する医師の技術にも差がでてくる可能性もある。

●さらなる侵襲性と治療効果を

そこで、アメリカで開発され、1999年に日本でも使用されるようになったのが手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」だ。
術者はこのダ・ヴィンチのロボットアームを操作し、3D画面を見ながら手術を行う。期待される効果として挙げられるのが、手術の質の向上、医師の技術習得時間の短縮、術者の負担軽減がある。
ダ・ヴィンチは改良を続け、現在は第4世代目。システムは、内視鏡や電気メスを搭載したアームがついた「ペイシェント・カート」、術者が操作をする「サージャン・コンソール」。モニターがついた「ヴィジョン・カート」の三台で構成されている。
第3世代と比べ、視野が広がり、より鮮明な画像で映し出すことができる。さらにアームが細くなったことで、より細かい手術も可能になるという。例えば、狭い範囲の病変や、体の小さい子どもにも適用できる可能性もでてきた。

画像: 術者は操作台に座り、遠隔操作でアームを動かす。

術者は操作台に座り、遠隔操作でアームを動かす。

画像: 実際に操作台のレンズをのぞき込むと、奥行まで鮮明に映し出されていた。

実際に操作台のレンズをのぞき込むと、奥行まで鮮明に映し出されていた。

ロボット支援腹腔鏡手術の保険適応について

このようなロボット支援腹腔鏡手術は実は保険適応のものがある。
2012年には腹腔鏡下前立腺全摘除術に、2016年には腹腔鏡下腎部分切除術にと、泌尿器科に限定されていたのが、2018年4月の診療報酬改定で新たに12術式が保険適応となった。

新たに保険適応となった12術式

1 腹腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術(呼吸器外科)
2 腹腔鏡下良性縦隔腫瘍手術(呼吸器外科)
3 腹腔鏡下肺悪性腫瘍手術※肺葉切除又は1肺葉を超えるもの(呼吸器外科)
4 腹腔鏡下食道悪性腫瘍手術(上部消化管外科)
5 腹腔鏡下弁形成術(心臓血管外科)
6 腹腔鏡下胃切除術(上部消化管外科)
7 腹腔鏡下噴門側胃切除術(上部消化管外科)
8 腹腔鏡下胃全摘術(上部消化管外科)
9 腹腔鏡下直腸切除・切断術(下部消化管外科)
10 腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術(泌尿器科)
11 腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術※子宮体がんに限る(婦人科)
12 腹腔鏡下膣式子宮全摘術(婦人科)

北里大学病院の取り組み

北里大学病院(神奈川県相模原市)で、11月25日(日)に高校生向けに手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」の体験教室が開催された。

画像: 岩村正嗣院長の説明を熱心に聞き、メモを取る学生の姿が印象的。

岩村正嗣院長の説明を熱心に聞き、メモを取る学生の姿が印象的。

画像: 中村雅敏医師にアドバイスをもらいながら実際に、腹腔内視鏡を体験。力加減や手先の器用さに加え、集中力も必要だ。

中村雅敏医師にアドバイスをもらいながら実際に、腹腔内視鏡を体験。力加減や手先の器用さに加え、集中力も必要だ。

画像: ダ・ヴィンチを目の前にして、緊張する学生。実際にアームを動かして、小さな輪を突起に掛ける操作を行った。上手く成功して笑顔も見られた。

ダ・ヴィンチを目の前にして、緊張する学生。実際にアームを動かして、小さな輪を突起に掛ける操作を行った。上手く成功して笑顔も見られた。

画像: 手術ロボット【ダ・ヴィンチ】はどう変わった?保険適応の現状とメリット・デメリット

北里大学病院は、2013年に第3世代に当たる「da Vinci Si」を導入し、泌尿器科手術と消化器外科手術を行ってきた。2017年の手術実績は162例、2018年は9月の段階で112例と数字を伸ばしている。(ダ・ヴィンチ1台の至適症例数は年間200例程度)。
そこで、同院は、第4世代の「da Vinci X」と「da Vinci Xi」を2台同時に導入。「da Vinci Si」は関連施設の北里メディカルセンター病院に移設される。

日本初ともいえる第4世代ダ・ヴィンチの2台同時導入と第3世代の移設。その目的は、なんだろうか。実は、第3世代と第4世代には互換性がなく、消耗品などを含む手術器具をそれぞれ別に購入する必要があり、同時に使用することは難しいということが、理由の1つだ。その点、第4世代で統一することで、手術機器を共有でき、運用面でメリットがあるのだという。
また、術者2名体制での手術が可能となり、より安全面の強化にもつながる。

画像: 北里大学病院に導入された「da Vinci Xi」システム

北里大学病院に導入された「da Vinci Xi」システム

進化し続ける医療

現在ダ・ヴィンチは世界で4666台導入されており(2018年4月時点)、ロボット支援手術はさらに普及するはずだ。実際に新たな「da Vinci SP」がすでに開発されている。SPは、1か所の穴から複数の手術器具を挿入して行う単孔式腹腔鏡手術支援ロボットだ。臨床応用されれば、頸部を大きく切開する耳鼻科手術を、口腔内から行うことも可能となるのだという。

変化するのは、手術支援ロボットだけではないはずだ。2018年ノーベル賞受賞の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」は記憶に新しいし、iPS細胞も研究がどんどん進んでいる。平成もあとわずか。次の時代でも、医療は我々の想像を超えて進化し続けるのだろう。

画像: 進化し続ける医療

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