私は腸の働きを「ぬか床」にたとえて説明するのですが、まさに、自分の腸をぬか床だと考えてほしいのです。腸内細菌がよい状態であれば、たとえ毒素が入っても、腸内細菌が無毒化してくれるのです。【解説】田中保郎(医師)

解説者のプロフィール

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田中保郎(たなか・やすお)
昭和17年長崎生まれ。42年長崎大学医学部卒業。同大学第2外科入局。長崎労災病院外科部長、長崎県松浦市民病院副院長などを経て、54年長崎県諫早市で開業。東洋医学のすばらしさに目覚めて、鍼や漢方による治療を開始、現在に至る。

どの部分の不調だろうとおなかを触って診断

突然ですが、質問です。
植物の葉っぱが枯れたとき、どこに原因があると思いますか? 葉っぱでしょうか? それとも根っこだと思いますか?

私が講演会などでこの質問を投げかけると、多くの人が「根っこじゃないか」「いや、葉と根っこ、どちらも」と答える人が多いです。
専門の庭師なら、まず根腐れを疑うことでしょう。根っこは水や栄養を吸収する部分だからです。

では、もう一つ質問です。
鼻水が出たら、どこに原因があると思いますか? 鼻でしょうか? 西洋医学では、鼻に不調があれば鼻を診るのが普通です。

ですが私は、人体の植物でいう「根」に当たる部分は「腸」だと考えています。そのため、どの部分に不調があっても、まずはおなかを触って診断をつけています。

なぜならおなか(腸)は、栄養を分解し、吸収する器官です。腸の状態さえよくしておけば、さまざまな病気が防げるし、改善することもできる、そう考えているのです。

私はかつては外科医として治療に当たっていましたが、生活習慣病からくる病気を根治するには、西洋医学だけでは限界があると感じてきました。

そこで東洋医学を勉強するようになり、同時期に盆栽を始めたこともあり、「根っこ」の重要性に気がついたのです。

そして古今東西のあらゆる文献を調べる中、私の人生を大きく変えた言葉に出合いました。それが、江戸時代中期の漢方医・吉益東洞の残した「万病は腹に根ざす。これをもって病を診するには、必ず腹を窺う」という一文です。

これはつまり「おなかの調子を整えれば、あらゆる病気は治る」と言っているのです。
こうして私も患者さんのおなかを触って診断をし、それぞれに合った漢方薬を処方する治療を行うようになりました。

腸しか持たない生物から進化した人間

すると、今までは治せなかった、うつ病やパニック障害など、心の病気といわれるものが治ったり、パーキンソン病のような難病まで改善したりするケースが出てきたのです。

これまで頭や心の病気だと思われていたものが、腸の状態を整えることで治っていくのです。それはなぜでしょうか。

実は、心と呼ばれるものは、腸にあるからだと私は考えています。これは、発生学的に見ても正しいといえます。

最も初期の動物が、単細胞のアメーバであるなら、それが多細胞のヒドラへと進化したときに最初に持った器官が「腸」なのです。

ヒドラには、脳はありません。腸と口と触覚だけです。それでも「おなかが減った」と感じ、子孫を残すために行動するのは、腸が感じて、考えて、指令を出すからです。

腸が考え、指令を出す。この機能は私たち人間にも受け継がれていると考えて間違いないでしょう。

では、腸の状態を改善するにはどうすればよいかということですが、実は、これが個人差があるため、ひとことで言うのは難しいのです。

自分のぬか床(腸)をよい状態に育てる

私は腸の働きを「ぬか床」にたとえて説明するのですが、まさに、自分の腸をぬか床だと考えてほしいのです。

ぬか床は、細菌が野菜を発酵させておいしい漬物を作ります。それどころか、石川県では、猛毒のフグの卵巣を2年以上ぬか漬けにすることで毒素を消失させ、珍味として販売しています。

腸も同様です。腸内細菌がよい状態であれば、たとえ毒素が入っても、腸内細菌が無毒化してくれるのです。

よい腸内細菌をつくるには、まずは自らを知ることです。
おなかを触って、温かいか冷たいか、硬いのか柔らかいのか、押すと痛いか、便の状態、色やにおいはどうか、どんな食べ物を食べるとそうなるのかを観察してほしいと思います。

次に、よく嚙んで食べること。これも大事です。

それから、自分の体調がよくなると感じることができる発酵食品を食べること。私のお勧めは「醍醐」と呼ばれる究極の発酵食品です。

とはいえ、醍醐がどういうものか、実はわかっていません。牛乳や大豆、米などが発酵すると、それぞれブルーチーズ、熟成みそ、酢などになりますが、さらにそのもう一歩先の発酵した段階の物らしいです。私もいろいろ探して、試しているところです。

健康食品などは玉石混合ですが、
・3日試して体調がいいなら3週間続ける。
・3週間続けて体も心もよい方向に向かっていると感じるなら、3ヵ月続ける。
さらに体調がよくなっていると実感したなら、一生続ければいいと思います。

万人に合った健康法はありません。日々、ご自身と向き合い、ぬか床を育ててください。

画像: 自分のぬか床(腸)をよい状態に育てる
画像: この記事は『安心』2018年12月号に掲載されています。

この記事は『安心』2018年12月号に掲載されています。

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