脂肪肝と腸内細菌の関係に注目!NASHを防ぎ、改善する食品とは?

美容・ヘルスケア

近年、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)やNASH(非アルコール性脂肪肝炎)の発症に、リーキーガット症候群(腸もれ)が関係していることがわかってきました。肝臓は腸内細菌や、腸内細菌の代謝物の影響を強く受けます。【解説】冨田謙吾(防衛医科大学校消化器内科准教授)

解説者のプロフィール

冨田謙吾(とみた・けんご)
防衛医科大学校消化器内科准教授、日本内科学会認定内科医・指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本肝臓学会肝臓専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化管学会胃腸科専門医・指導医、米国内科学会上級会員

特定の腸内細菌が脂肪肝を起こしていた!

毎年、健康診断で脂肪肝と診断されながら、脂肪肝は病気ではないと放置している人がいます。しかし、それは危険な場合があります。

飲酒歴がないのに脂肪肝になる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、以前は健康には問題ない脂肪肝と思われていました。

ところが近年、こうした脂肪肝の10〜20%は肝炎を起こし、肝硬変へと進行するタイプのものがあるとわかり、新しい病気として危険視されるようになったのです。これを非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と呼びます。

NAFLDのリスクは、NASHに移行するだけではありません。NASHにならなくても、糖尿病を悪化させたり、心血管障害を招いたりすることがあります。つまり、脂肪肝というだけでリスクがあるのです。

私は、肝臓の病気と腸内環境の関係を調べていますが、近年、NAFLDやNASHの発症に、リーキーガット症候群(腸もれ)が関係していることがわかってきました。

腸粘膜には、体内に有害物質を通さないバリア機能があります。ところが、腸粘膜が傷つき細胞の結合部が緩むと、それらが通過しやすくなります。これがリーキーガット症候群です。リーキーは「もれる」、ガットは「腸」という意味です。

腸からもれ出た物質は、血中に入り、門脈(消化管から肝臓へ向かう血管)から直接肝臓に流れ込みます。そのなかには、腸内細菌由来の刺激物質も含まれています。

例えば、腸内細菌由来の毒素(エンドトキシン)は、肝臓のさまざまな細胞を刺激して、炎症や肝臓の線維化(肝臓がかたくなること)を引き起こします。つまり、NASHが悪くなり、肝硬変へと進行していくのです。

このように、肝臓は腸内細菌や、腸内細菌の代謝物の影響を強く受けます。

最近、次のような実験がありました。
マウスに高脂肪食を食べさせると、高血糖や高インスリン血症(体への糖の取り込みが障害されている状態:糖尿病のときに見られる)になるマウス(反応群)と、そういう反応を起こさないマウス(非反応群)がいます。

そして、それぞれのマウスの腸内細菌を、無菌マウスに移植して高脂肪食を与えたところ、反応群の腸内細菌を移植したマウスは、同じように高血糖や高インスリン血症を示し、脂肪肝が進みました。

一方、非反応群の腸内細菌を移植したマウスでは、そうした反応はありませんでした。

この実験でわかったのは、二つのマウスの高脂肪食に対する反応の違いは、腸内細菌の違いによるものであったということです。さらに、特定の腸内細菌が高脂肪食に反応して、脂肪肝を起こしていることも示されました。

コレステロールの多量摂取は肝臓ガンを招く

腸内細菌の産生物には、脂肪肝を抑制するものもあります。

食物繊維やオリゴ糖などをエネルギー源にしている特定の腸内細菌は、短鎖脂肪酸(酢酸や酪酸など)という有機酸を産生します。

この短鎖脂肪酸が門脈から肝臓に入ると、脂肪合成にかかわる酵素の発現を阻害して、脂肪肝を改善させることが、ヒトや動物の実験で明らかになっています。

実際、NAFLDの患者に、腸内細菌に有用な菌(ラクトバチルス菌など)を30〜180日間とってもらったところ、肝機能値(ALT)や脂肪肝などの改善が認められました。

このように、腸内細菌と肝疾患(脂肪肝)には、密接な関係があるのです。

こうしたことから、腸内環境をよくする食べ物が、脂肪肝やNASHの予防・改善にも有効ではないかと推測されます。

では、脂肪肝やNASHを防ぎ、改善するにはどのような食事をするといいのでしょうか。

まず、過食をやめて体重を落とすことです。そのうえで、腸内環境を整える食品を意識的にとるといいでしょう。それは、腸内細菌が喜ぶエサとなる、食物繊維オリゴ糖などです。

食物繊維は、野菜や海藻、キノコ類などに豊富に含まれています。オリゴ糖は、タマネギ、ゴボウ、バナナなどに多く含まれています。これらの食品を意識的に食卓にのせるといいでしょう。

リーキーガット症候群を防ぐには、腸の炎症を起こす飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、果糖などを控えることです。

飽和脂肪酸は、主に動物性の油脂で、肉やバターなどに含まれます。トランス脂肪酸は、植物油に水素を添加して固形にした油。マーガリンやドレッシング、お菓子などによく使われています。

果糖は、清涼飲料水などに含まれるブドウ糖果糖液糖という甘み成分が、肝臓には特によくないとされています。

最近、卵や肉などのコレステロールの多い食品をとっても、動脈硬化のリスクは少ないといわれています。しかし、コレステロールを多くとると、肝硬変を進行させ、肝臓ガンの発症を招くことがわかっています。

心臓や血管の病気に影響は少なくても、肝臓に悪影響を与えるので、コレステロールを多く含む食品のとり過ぎにも気をつけたほうがいいでしょう。

腸内細菌の喜ぶ食物繊維やオリゴ糖を含む食品をとろう!

この記事は『壮快』2019年1月号に掲載されています。

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