【専門医が指南】自分でできる腰痛対策ストレッチ「太もも伸ばし」のやり方

美容・ヘルスケア

「前かがみになるときは、腰を曲げるのが当然でしょう?」という人がいるかもしれません。しかし本来、腰椎は大きく動かすようにはできていないのです。ところが、股関節の動きが悪くなると、その代償として腰椎を動かすようになり、腰に負担がかかって腰痛が生じたり、ひざを痛めたりするのです。【解説】西良浩一(徳島大学運動機能外科学整形外科教授)

解説者のプロフィール

西良浩一(さいりょう・こういち)
徳島大学運動機能外科学整形外科教授。脊椎内視鏡による椎間板ヘルニア摘出術、腰椎分離症の内視鏡手術など、患者負担の小さい手術法の確立に貢献。現在は、究極の脊椎内視鏡「PED」による新しい治療法の開発・確立に取り組む。多くのオリンピック選手やプロ野球選手の診断と治療を行う。

「腰痛の85%は有効な治療法なし」は大間違い

腰痛は、15%が原因を特定できる「特異的腰痛」、残り85%が原因を特定しきれない「非特異的腰痛」といわれています。

日本では、腰痛の患者さん自身はもちろん、医師の多くも、非特異的腰痛を「謎の腰痛」と認識しています。つまり、「腰痛の85%は原因不明だから有効な治療法はない」と考えているのです。

しかし、これは大きな間違いです。

この分類の真意は、「特異的腰痛=直ちに原因を特定すべき重大な問題を抱えた腰痛」、「非特異的腰痛=原因の特定を急がない腰痛」です。

非特異的腰痛は、まず保存療法を行い、改善が見られなければ、画像検査などで原因を追究します。

要するに、非特異的腰痛は原因がわからない腰痛ではなく、「原因を追究する以前の腰痛」を意味しているのです。

実際には、きちんと検査を行えば、ほとんどの腰痛は原因が特定できます。最近の日本国内の論文では、腰痛の78%は原因が確定されているというデータも出ています。

原因を特定し、適切な治療を行えば、腰痛は治ります。
そのためには、しっかりとした診断・治療を行える腰痛専門医にかかるのが一番です。

前かがみになるとき腰を曲げていませんか?

しかし、前述したように、多くの医師が「85%の腰痛は原因不明」と認識している現状では、適切な診断・治療が受けられない「腰痛難民」が少なくありません。また、できることなら自分でなんとかしたいと思っている人も多いことでしょう。

そこで今回、私が紹介するのが、自分でできる腰痛対策のストレッチ「太もも伸ばし」(後述)です。

椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折、感染症やガンの転移、内臓疾患など、緊急性を要する腰痛(特異的腰痛)は、ストレッチよりもまず、医療機関での治療が先決です。

それ以外の腰痛で、「原因不明」とか「痛みが治まったら適度な運動を」といわれた人には、この太もも伸ばしを勧めます。

これは、太ももの前と裏の筋肉を伸ばすことが目的です。

腰痛の人は、お辞儀をしたり、物を拾ったりするとき、たいてい腰を曲げています。「前かがみになるときは、腰を曲げるのが当然でしょう?」という人がいるかもしれません。

しかし本来、腰椎(背骨の腰の部分)は、大きく動かすようにはできていないのです。

アメリカの理学療法士、グレイ・クック氏が唱えた『ジョイント・バイ・ジョイント・セオリー』という関節についての理論があります。

これは、全身の関節は「安定性」か「可動性」のいずれかを主な役割とし、それが交互に積み重なっているという理論です(下図を参照)。

《関節の主な機能》

図を見るとわかるように、腰椎とひざ関節(膝関節)は、「安定性」の関節なので、大きい動きには適していません。

体を曲げる、ひねる、回す、という動作には、股関節や胸椎・胸郭(胸を取り巻く骨格)、足首といった「可動性」の関節を使うように、人間の体はできています。

ところが、股関節の動きが悪くなると、その代償として腰椎を動かすようになり、腰に負担がかかって腰痛が生じたり、ひざを痛めたりするのです。

「太もも伸ばし」のやり方

股関節の動きが悪くなる原因の一つは、加齢や生活習慣などの影響で、太ももの筋肉がかたくなることです。

太ももの筋肉は股関節の周辺につながっているので、この筋肉が柔軟性を失い、しっかり伸縮しないと、股関節の動きが制限されます。

ですから、ストレッチで太ももの筋肉をやわらかくすると、股関節の動きがよくなります。曲げる、ひねる、回すといった動作を股関節が担えば、腰椎は自然なS字カーブを維持し、無理な動きをしなくて済みます。

特に柔軟性を高めたい部位は、太ももの裏の筋肉群(ハムストリングス)と、太ももの前側(クアド)です。

(1) ジャックナイフストレッチ(もも裏伸ばし)

◎前屈すると腰が痛い人向け
太ももの裏をやわらかくするジャックナイフストレッチ(もも裏伸ばし)は、前にかがむ(前屈)と痛むタイプの腰痛の改善・再発防止に効果的です。

胸と太ももをつけ、体を折った姿勢が、折り畳みナイフのようなので、私が「ジャックナイフストレッチ」と名づけました。テレビでも何度か紹介され、反響を呼んでいます。

アキレス腱を包み込むようにして、両足首を両手でつかむ。

両足首をつかんだまま、ひざをゆっくりと伸ばしていく。

胸と太ももをつけたまま、できるところまでひざを伸ばす。その状態を5秒保つ。

胸と太ももが離れると、ハムストリングスが十分に伸びない。

(2) 足上げストレッチ(寝て行うもも裏伸ばし)

◎前屈すると腰が痛い人向け
腰に不安のある人や高齢者は、ジャックナイフストレッチではなく、足上げストレッチ(寝て行うもも裏伸ばし)がお勧めです。

股関節とひざ関節が直角になるように片足を上げ、太ももの裏側を両手でつかむ。

太ももの位置を固定し、ひざを伸ばして、ひざ下を上げていく。

ひざを伸ばし、ひざ下をできるだけ上げ、その状態を5秒保ってから、ゆっくり足を下ろす。

(3) お尻キックストレッチ(太ももの前伸ばし)

◎体を反らすと腰が痛い人向け
一方、お尻キックストレッチ(太ももの前伸ばし)は、体を反らすと痛むタイプの腰痛の人に向いています。

うつぶせになり、かかとをお尻につけるつもりで、ひざを曲げると、太ももの前の筋肉が伸びます。

*ひざ関節の変形などで正座ができない人は行わない。
*長時間続けて行うと腰に負担をかけるので注意する。

うつぶせになり、両手をあごの下で組む。

片足をゆっくり曲げ、かかとでお尻をける。勢いをつけると腰を痛めるので注意する。

太ももの前の筋肉と裏の筋肉は、拮抗筋といって、どちらかを縮めると、どちらかが伸びるようになっています。ご紹介した三つのストレッチは、この反射を利用しているので、無理なく筋肉の柔軟性を高めることができます。

痛みのタイプに合わせて、太ももの前か裏、どちらかのストレッチを重点的にやってもかまいませんが、理想は、太ももの前も裏も柔軟にしておくことです。できれば、両方行ってください。

便秘や逆流性食道炎が改善する例も多い

太ももの筋肉が柔軟になり、股関節が自由に動くようになると、ほかの骨や関節への負担が減って、痛みが軽減します。

太もも伸ばしを続ければ、腰痛やひざ痛の発症・再発を防ぐことができます。

つまりは、「腰痛、ひざ痛に強い体」をつくることができるのです。

股関節が自由に動くと、骨盤の動きもスムーズになるため、姿勢が改善します。円背(背中が曲がった状態)に悩んでいた70代の男性は、太ももの前を伸ばすストレッチをしただけで、骨盤の傾きが正され、背中がスッと伸びました。

姿勢がよくなると、腹部への圧迫が緩むので、便秘や逆流性食道炎などの胃腸障害が改善する例も少なくありません。

私は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症で手術をした患者さんにも、術後の再発予防に太もも伸ばしを勧めています。実践しているかたは「腰の状態がとてもいい」と満足度が高く、もちろん再発もしていません。

慢性的な腰痛やひざ痛対策に、または治ったあとの再発予防に、ぜひこの太もも伸ばしを活用してください。

この記事は『壮快』2019年1月号に掲載されています。

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