【にぼし酢の作り方】カルシウム吸収率がアップする!簡単おいしい活用レシピ

美容・ヘルスケア

キッチンにある煮干しを瓶に入れ、お酢を注ぐ。これだけで煮干しはすぐにやわらかくなり、おやつや常備菜、酒の肴、煮込み料理に使えるりっぱな魚食材になります。しかも、豊富なカルシウムが溶け出し、骨粗鬆症の予防にもうってつけ。ぜひお試しください。【解説】井澤由美子(料理家・調理師・国際中医薬膳師・国際中医師)

解説者のプロフィール

井澤由美子(いざわ・ゆみこ)
料理家。調理師、国際中医薬膳師・国際中医師。NHKカルチャー薬膳講師。NHK「きょうの料理」「あさイチ」「趣味どきっ!」などのテレビ番組ほか、企業CM、商品開発、雑誌、カタログ、イベント、書籍、発酵レストランなどのプロデュースを手掛ける。旬の食材の効能と素材の味を活かした料理が人気。著書は『レーズン昆布酢 健康レシピ』(NHK出版)『身近な野菜や薬味で健康を整える、薬膳の知恵。』(マガジンハウス)ほか多数。
■井澤由美子先生のホームページ http://yumikoizawa138.jp/

カルシウムの吸収がアップする

煮干しと言えば、料理のだしを取るものと思っているかたが多いのではないでしょうか。

しかし、煮干しをよく使う瀬戸内から西の地域では、煮干しは、だしを取るだけのものではなく、だしを取った煮干しも、おみそ汁や煮物に入れて食べたり、だしとは別に、煮干しをお酢に漬けて料理に活用したりする食文化があります。

煮干しは、袋に入った状態ではカチカチに硬いのですが、米酢やリンゴ酢に漬けると1分ですぐ料理に使え、30分もしないうちにとてもやわらかくなります。

また、魚臭さや頭、はらわたの苦味もなくなるので、小さな子どもや年配のかたまで、おやつとしてそのまま食べることもできます。

お酢のほうは、煮干しが加わることでまろやかになってうまみが増し、お料理の調味料として使えます。

さらに栄養面では、煮干しのカルシウムはお酢に溶け出し、酢酸カルシウムとなります。そのため、煮干しだけで食べるよりも、体内にカルシウムを吸収しやすいというメリットがあります。

煮干しは、料理をおいしくするだけでなく、体の健康にとってもすばらしい食材ですから、ぜひお酢に漬けた煮干しそのものも食べてほしい――そうした願いを込めて、今回ご紹介する煮干しの酢漬けを、「にぼ酢」(煮干し酢)と名付けました。

煮干しをお料理の主役としても活用できる

私は、発酵食と薬膳の考え方を組み合わせて、体を元気にするレシピを提案しています。

お酢をそのまま使うのではなく、昆布を入れた「昆布酢」としてうまみと栄養価をアップさせるなど、“薬膳酢”としての上手な活用法をいつも考えてきました。

この昆布酢に、クコの実やナツメなどのドライフルーツを入れて、ナチュラルな甘みをプラスした薬膳酢もおいしくて、キッチンに常備しています。

毎朝、納豆にこれらのドライフルーツの昆布酢をかけていただいていますが、納豆がさらりと食べやすくなって、体はシャキッと元気になるのです。

煮干しにお酢を加えた「にぼ酢」は、うまみ調味料として使えるだけでなく、煮干し自体がお料理の主役になるのが、昆布酢とは違うところです。

ふだん煮干しでだしを取っているかたなら、いつも使っている煮干しの3分の1を、だしとしてではなく、お酢を加えて「にぼ酢」にして保存しておけば、「何かあと一品おかずが欲しいな」というときにも、ササッと料理に使えます。

酢の物はもちろん、炒め物や煮物にも使って、お料理をさらにおいしくすることができるでしょう。

塩を入れなくても、「にぼ酢」のうまみで満足できるので、糖尿病や高血圧で塩分を控えないといけないかたにもお勧めです。

煮干しとお酢――キッチンにある食材を合わせるだけで、栄養価が高く、毎日の献立づくりに使い勝手のいい自家製調味料ができるのは、うれしいことですよね。

次項から、「にぼ酢」の作り方と、「にぼ酢」を使った、簡単にできておいしい、健康にもいい料理をいくつか紹介します。ぜひ、煮干しとお酢のすばらしさを見直していただければと思います。

市販の煮干しに好みの酢でOK!

「にぼ酢」(煮干し酢)を作るときの材料は、煮干しとお酢だけで、シンプルです。

《煮干しはどれがいい?》
煮干しは、小魚を煮て、乾燥させたもので、カタクチイワシで作ったものが一般的。西日本では「いりこ」とも呼ばれる。大きさが4〜13cmのものを「にぼし」、2.4〜4cmのものを「かえり」と言う(2.4cm以下のものは「ちりめん」)。大小は好みで選んでかまわない。

煮干しは、大きい煮干しでも小さい煮干しでもOKです。産地や添加物の有無にこだわるかたは吟味されてもいいですが、スーパーで売っているものでじゅうぶんです。頭とはらわたは、酢に漬けると苦味は消えるので取らなくていいですが、気になる人は取ってください。

《酢のお勧めは?》
(井澤先生が撮影に用意してくれたのは4種。)右から、まろやかな味と香りの米酢「千鳥酢」、有機米を使った米酢「有機純米酢」、爽やかな風味のリンゴ酢「純りんご酢」、健康効果の高い黒酢「玄米黒酢」。基本的に、どれを使ってもいい。種類が違うものをミックスしてもかまわない。

お酢は、好みで選んでいただいてだいじょうぶですが、まろやかな米酢や、軽やかなリンゴ酢がお勧めです。コクのある黒酢や、やさしい味の京都の千鳥酢もいいでしょう。私は内堀醸造の米酢「有機純米酢」を使うことが多いですね。

《煮干し酢はすぐ食べられる? どのくらい持つ?》
料理にすぐに使えるが、30分置くとじゅうぶんやわらかくなる。保存は、常温でもOK。煮干しがだんだん溶けてくるので、1週間程度で使い切りたい。

「にぼ酢」を作る容器も、特に指定はありません。お酢と干物の組み合わせなので腐敗することはなく、常温で保存しておけます。暑い夏場は、念のため、冷蔵庫で保存すると安心です。

子どもといっしょに作るのもお勧め「煮干し酢」の作り方

【材料】
煮干し…1袋(約120g)
酢…500ml
*あくまで目安の分量。容器の形状に合せた煮干しの量と、お酢はその煮干しが浸かる程度でよい

【作り方】
フタができる容器に煮干しを入れ、ひたひたになる程度にお酢を注ぐ。これだけなので、材料さえあれば、1分でできる。

「にぼ酢」の分量は、煮干し120gに対し、お酢500mlが目安ですが、煮干しがひたひたに浸かる程度の量を入れるといいでしょう。

容器にふたをして置いておくと、30分ほどで煮干しがやわらかくなり、そのままでも食べられます。

酢漬けですから長期間保存しても腐ることはないのですが、煮干しのうまみが出切ってしまうのとやわらかくなりすぎるので、1週間を目安に使い切るといいでしょう。

お好みで、ショウガやニンニクを一片加えてもおいしくなります。

煮干しやお酢が苦手な子どもも多いですが、煮干しにお酢を入れるところからいっしょに作ってみると、「自分が作った調味料だ!」と興味を持ち、食べられるようになるかもしれません。子どもが好きなかわいい容器に入れて、形から入るという手もあるでしょう。

それでは、次は「にぼ酢」を使ったおいしいレシピを紹介しましょう。

ダイエットにもお勧め!「煮干し酢のメイプルナッツ」

◎やさしい甘さの「田作り」のようなおやつ

「にぼ酢」(煮干し酢)を使って、お正月に食べる「田作り」のようなおやつを作ることができます。松の実やクルミと合わせて、メイプルシロップでからめるだけの簡単レシピです。

食材を切る必要がないので、包丁は使わず、フライパンがあればOKで手間もかかりません。この料理は、大きい煮干しよりも小さい煮干しを使った「にぼ酢」で作るほうが食べやすいでしょう。

適度な酸味とメイプルシロップのやさしい甘み、歯ごたえのよさで、「食べるのが止まらなくなる」という人も多いのがこのメニュー。カルシウムがたっぷりで、子どものおやつにもいいですし、お酒のおつまみとしてもお勧めです。

ダイエット中なのに甘いものが食べたくなったら、スイーツの代わりにこれを少し食べると、甘みに満足でき、カルシウムの効果でイライラすることも少なくなるでしょう。

【材料】(2人分)
煮干し酢の煮干し…1カップ弱
クルミ…大さじ3(手で砕く)
松の実…大さじ3
メイプルシロップ…大さじ2
しょうゆ…大さじ1

【作り方】
フライパンにクルミと松の実を入れ、香ばしい香りがするまで乾煎りする。
(1)にメイプルシロップとしょうゆを入れ、フライパンをゆすりなじませる。
煮干し酢を一気に加えて、フライパンを揺すりながら煮汁がなくなるまで2〜3分全体をからめ、器に盛る。

《小さい煮干し酢がお勧め!》
煮干しだけを瓶から直接トングなどでつかんで入れる。強めの火加減でさっとかき混ぜて、全体にからめる

上品な味わい!「煮干し酢と春菊の白和え」

◎白和えをさっぱりいただく栄養バランスも抜群

「煮干し酢と春菊の白和え」は、とても上品な味わいの和食に仕上がり、常備菜としてお勧めです。「にぼ酢」(煮干し酢)の酢がまろやかなので、酸味は淡く、豆腐を使った白和えに酢を加えることで、さっぱりといただけます。

きび砂糖で甘みを補っているので、春菊や煮干しの苦味もやわらいだ味になっていて、お子さんでも食べやすいでしょう。

さらにこのレシピでは、「にぼ酢」に入っている煮干し自体もいっしょに和えました。じゃこが入っている白和えはありますが、煮干しが入った白和えは初めてというかたがほとんどではないでしょうか。

煮干しがやわらかくなっているので食べやすく、春菊と豆腐と煮干しで、栄養バランスもとれた一品になっています。青菜は、ホウレンソウやコマツナなどもよく、鉄分やカルシウムをさらに効率よく摂取できます。

【材料】(2人分)
煮干し酢の煮干し…4〜5匹
春菊…130g
めんつゆ…大さじ1
◎白和えの素
豆腐…半丁
ゴマ油…小さじ1/2
きび砂糖…大さじ1
しょうゆ…大さじ1
煮干し酢の酢…大さじ2
塩…2つまみ

【作り方】
豆腐をキッチンペーパーに包んで600Wのレンジに3分かけ、すり鉢に入れる。ゴマ油、きび砂糖、しょうゆ、煮干し酢の酢、塩を加えて、全体が滑らかになるまでよくする。
春菊は塩ゆでし(塩は分量外)、4cm幅に切って、水気を絞る。めんつゆ洗い(めんつゆをまぶして下味をつけること)をし、水気をしっかり絞る。
(1)に、(2)と、煮干し酢の煮干しをさっくりと和えて器に盛る。

《大きい煮干し酢がお勧め!》
煮干し酢の酢は、うまみのあるまろやかな酸味なので、白和えがツンとしないやさしい味になる

白ワインに合う「煮干し酢とキャベツのエスカベシュ風サラダ」

◎魚の下処理・調理なしでエスカベシュができる

エスカベシュは地中海料理の一つで、魚をマリネ液にひたすメニューのこと。揚げた魚を使うことも多いのですが、「にぼ酢」(煮干し酢)があれば、魚を下処理することも調理することもなく、簡単にエスカベシュ風サラダができます。

また、きび砂糖と「にぼ酢」の酢で甘酢を作っていますが、これはほかの甘酢料理にも使えます。ツンとした酸味がないので食べやすく、煮干しから出たうまみがあるので、ダシも不要です。

普通のドレッシングを使うより、オリーブオイルと「にぼ酢」の組み合わせで、サラダの野菜の味や香りがしっかり楽しめるのもポイント。

合わせる野菜もたっぷりで、キャベツに含まれる食物繊維、レモンのビタミンC、さらに酢の相乗効果で、胃腸にやさしいメニューに。白ワインやビールなど、お酒のおつまみにも最適なキャベツと酢の組み合わせです。

【材料】(2人分)
煮干し酢の煮干し…8〜10匹
キャベツ…150g
オリーブオイル…小さじ1
粗塩…小さじ1/4
タマネギスライス…1/4個分
赤唐辛子…適宜
レモンスライス(皮を塩でこすり洗いし、薄切りにする)…5、6枚
◎煮干し酢の甘酢
煮干し酢の酢…大さじ4
きび砂糖…大さじ1 1/2

【作り方】
キャベツはざく切りにし、さっと茹で、ザルに上げてしっかり水気をきる。
ボウルに(1)のキャベツとオリーブオイル、塩を入れなじませ、タマネギと、煮干し酢の酢ときび砂糖を混ぜた甘酢を加え、全体をなじませる。好みで赤唐辛子やレモンスライスを加えてもいい。
器に盛り、煮干し酢の煮干しを散らす。

《大きい煮干し酢がお勧め!》
煮干し酢の酢は、甘酢作りにも重宝する。うまみがあるのでだしも不要。砂糖はきび砂糖にするのが井澤流

カルシウム補給に最適!「里芋と鶏手羽中の煮干し酢さっぱり煮」

◎うまみたっぷりで塩は不要、骨から出るカルシウムも摂取

鶏肉の煮込みと「にぼ酢」(煮干し酢)の相性は抜群です。「にぼ酢」の酢が肉をやわらかくし、味が染みて、手羽肉の場合は肉が骨からホロリと外れるので、食べやすくなります。

また、鶏の骨から出るカルシウムが「にぼ酢」の酢に溶け込むため、カルシウムをより多く摂取できるようになるのです。お好みで「にぼ酢」の煮干しを加えてもおいしくいただけます。

煮ることで酸味がほどよく飛ぶため、酸っぱさを感じることもありません。さっぱりといただけますが、「にぼ酢」のうまみとコクはたっぷり。塩を入れなくてもしっかり味がついているので、減塩したい人にもぴったりのメニューです。

鶏肉は手羽に限らず、お好きな部位を使ってだいじょうぶですが、カルシウムをたくさん摂りたいなら、骨つきのものをお勧めします。

【材料】(2〜3人分)
鶏手羽中(なければ手羽元でもいい)…250g
里芋…4、5個
ニンジン…1本
ゴマ油…大さじ1
ショウガ薄切り…1かけ分
水…1と 1/2カップ
しょうゆ…大さじ1と 1/2〜2
みりん…大さじ2
煮干し酢の酢…大さじ2〜3
三つ葉…適宜

【作り方】
鶏手羽中は塩少々(分量外)を全体になじませる。里芋は皮をむき、食べやすく切る。ニンジンは皮ごと乱切りにする。
フライパンを中火で熱し、ゴマ油をなじませる。ショウガ、ニンジンを炒め、鶏肉と里芋を加える。
水、しょうゆ、みりんを加え落しぶたをし、ふたをして中弱火で15分煮込む。
煮干し酢の酢を加え、さらに10分ほど弱火で煮込む。好みで三つ葉を散らす。

《大きい煮干し酢小さい煮干し酢どちらでも》
煮干し酢の酢は、煮込み料理にも重宝する。煮干しのうまみがあるので、だしも塩もいらない。好みで煮干し酢の煮干しを加えてもいい

体が元気になるものをこれからも提案していきたい

酢は人間が作った最古の発酵調味料と言われており、みそ、しょうゆと並ぶ日本の食文化を支えてきた伝統的な発酵調味料です。

発酵食=薬膳と言えるほど、菌の力は私たちの体を整えてくれるので、健康な食生活を考えるうえで、発酵調味料は欠かせません。

その発酵調味料の一つである酢をアレンジすることで、よりおいしく、より栄養価が高くなるように考えたのが、今回ご紹介した「にぼ酢」(煮干し酢)でした。

現代では、煮干しでだしをとる人も少なくなっていますが、カルシウムを気軽に摂れる煮干しを食生活に取り入れないのはもったいないことです。

ぜひ「にぼ酢」をキッチンに常備して、健康に役立ててください。

この記事は『ゆほびか』2019年2月号に掲載されています。

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