おからに多く含まれる、不溶性食物繊維は、水溶性食物繊維が大腸の入り口近くですぐ発酵するのに対し、大腸内を移動しながらゆっくりと発酵するのです。この「ゆっくり発酵」するという性質が、大腸の健康維持に大いに役立ちます。【解説】森田達也(静岡大学農学部応用生命科学科教授)

解説者のプロフィール

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森田達也(もりた・たつや)
静岡大学農学部応用生命科学科教授。食物繊維の栄養生理作用に関する研究をしながら、多くの論文を執筆。イベントや講演など、多方面で活躍中。『おからパウダー・ヨーグルト生活で不調を改善』(辰巳出版)で監修を務める。

不溶性食物繊維が大腸の健康維持に役立つ

別記事:「おからヨーグルト」の作り方→

おからヨーグルト」は、おからを乾燥させた「おからパウダー」とプレーンヨーグルトを混ぜた食品です。

一般社団法人「日本乾燥おから協会」と一般社団法人「大人のダイエット研究所」が実施したモニター試験では、おからパウダー15gとプレーンヨーグルト100gを混ぜた、おからヨーグルトを毎日、3週間食べてもらったところ、18人中17人の女性に排便日数の増加が確認されました。腹囲も18名中15名が減少しています。

では、なぜ、おからとヨーグルトが便通改善に役立つのかをご説明しましょう。

まず注目したいのが、おからパウダーです。おからパウダーには、多くの不溶性食物繊維(10g当たり約42.1g)と、少量の水溶性食物繊維(100g当たり約1.5g)が含まれています。

食物繊維は一般にこの二つの名称で分けられていますが、両者の違いを正確に言い表すためには、水溶性を「発酵性食物繊維」、不溶性を「非発酵性食物繊維」と呼んだほうがいいと私は思っています。

水溶性食物繊維(発酵性食物繊維)は、大腸の入り口付近にいる善玉菌の働きで「発酵」し、「短鎖脂肪酸」や「乳酸」などを生み出します。

これらは、腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑える作用があります。また、短鎖脂肪酸は大腸の腸壁を覆う「ムチン」という糖たんぱくの分泌を促し、便の排泄を促します。

一方、おからに多く含まれる、不溶性食物繊維(非発酵性食物繊維)は、私の提唱する名称のとおり、発酵しづらいといわれています。ただ、まったく発酵しないわけではありません。

水溶性食物繊維が大腸の入り口近くですぐ発酵するのに対し、こちらは大腸内を移動しながらゆっくりと発酵するのです。

この「ゆっくり発酵」するという性質が、大腸の健康維持に大いに役立ちます。

食品に含まれるたんぱく質は、腸内でアミノ酸に分解されます。そのさい、腸内のバクテリアも、たんぱく質をアミノ酸に分解して、自身のエネルギー源とします。

このとき副産物として作られるフェノールインドールスカトールなどの物質は、大腸がんやポリープの原因と考えられているのです。 

大腸がんの多くは肛門に近い遠位結腸(S字結腸や直腸など)で生じますが、この辺りでバクテリアのエサとなる食物繊維が不足して、アミノ酸を分解し、上記の物質が作られることとも関連性があるかもしれません。

そこで重要な働きをするのが不溶性食物繊維です。前述したとおり、この繊維は、ゆっくり発酵して、遠位結腸の辺りで発酵のピークを迎ます。

そして、アミノ酸の代わりに、バクテリアのエサになり、短鎖脂肪酸などを産出して、腸内を悪玉菌が活動しづらい弱酸性に保ってくれるのです。

また、不溶性食物繊維の特性として「便のカサが増す」ことがあります。このことで、直腸の内部に圧が生まれ、便意を促進させます。また、腸内のぜん動運動を起こして便意を促すのにも、便のカサによる内圧刺激が必要です。

以上のように、おからの不溶性食物繊維は、ゆっくり発酵する、便のカサを増すという、二つの性質で、大腸の健康を保ち、便通の改善を促します。

《2つの食物繊維の特性》

水溶性食物繊維(発酵性食物繊維)
大腸の入り口付近にいる善玉菌の働きで発酵。短鎖脂肪酸や乳酸などを生み出し、悪玉菌の増殖を抑える。
不溶性食物繊維(非発酵性食物繊維)
大腸内を移動しながら、ゆっくり発酵。食物繊維が不足する、遠位結腸(大腸の奥)の辺りで発酵のピークを迎え、バクテリアのエサとなり、悪玉菌の増殖を防ぐ。

食物繊維の多い食事は血糖値が上がりにくい

もう一つの食材であるヨーグルトのお話もしましょう。

「ヨーグルトは乳酸菌が豊富」とよくいわれます。この場合の乳酸菌は、正確には「乳酸産生菌」といいます。

乳酸産生菌には、「ラクトバチルス」などのいわゆる乳酸菌のほかに、「ビフィズス菌」などがあり、いずれの菌も食物繊維(糖)を食べて、乳酸を生みだし、腸内環境を良好に保つ性質があります。

乳酸菌は約72時間で体内から排泄されてしまうのですが、乳酸菌を食べると、体内にすむビフィズス菌が増えます。そして、ビフィズス菌は、食物繊維をガンガン発酵させ、腸内環境を改善させる性質をもっています。

おからとヨーグルトを一緒に食べれば、食物繊維と乳酸菌の効果で、体内のビフィズス菌が増え、短鎖脂肪酸などを生み出し、体に有益な物質が多く作られます。さらに、便のカサが増すことで、便通の改善も期待できるのです。

また、食物繊維の多い食事をとると、食事の後の血糖値が上がりにくくなるという実験報告もあります(セカンドミール・エフェクト)。

この実験は、おからよりも水溶性食物繊維の多い全粒粉を使った食事で行われています。おからヨーグルトとあわせて、海藻などの水溶性食物繊維の豊富な食材を食べれば、同様の効果が期待できると思われます。

腸の健康維持のためにぜひ、おからヨーグルトを取り入れてみてはいかがでしょう。

画像: この記事は『安心』2019年2月号に掲載されています。

この記事は『安心』2019年2月号に掲載されています。

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