脳は大量にエネルギーを消費する、非常に繊細な器官です。脳を働かせていれば老廃物、つまりゴミが発生します。ゴミがたまってくると、脳の働きが悪くなるだけでなく認知症の原因にもなります。こうした脳のゴミは、実は睡眠中に大掃除されているのです。【解説】宮崎総一郎(中部大学特任教授・日本睡眠教育機構理事長)

「カーテンを10cm開けて寝る」「朝の納豆」「外出」が快眠体質に変わるコツ

『眠くないなら寝床に入らない』

睡眠薬には、「恐ろしい薬」というイメージがあるようです。「依存性が強い」「量が増えていく」などと思われることもありますが、誤解です。

ただ、いまだに睡眠薬について誤解しているかたがいるようで、「前のお医者さんは睡眠薬を出してくれなくて、不眠が治らない」と訴える60代女性のAさんが来院しました。

睡眠薬を処方したところ、Aさんの不眠はすぐに解消しました。さらに、今では薬を使わなくてもぐっすりと眠れるようになっています。

私が用いたのは、「睡眠制限療法」という治療法です。

Aさんのように慢性不眠の患者さんの中には、「睡眠薬が全然効かない」と訴える人がいます。この場合、必要以上に寝床に入っていることで、不眠が悪化していることがあります。

そんな患者さんに私が聞くのは、「眠くもないのに寝床に入っていないか」「8時間睡眠にこだわっていないか」ということです。

先述のAさんも以前は、眠くもないのに寝床に入って、なんとか寝ようとしていました。そこに「こんなに眠れないのに睡眠薬を出してもらえない」というストレスが加わって、不眠が悪化していたのです。

そこで、「眠気が出てから就床する」「寝床の中で悩まない」というように行動を変えてもらったところ、睡眠薬を飲まなくても眠れるようになりました。

これが、睡眠制限療法で、「認知行動療法」の一つです。睡眠薬を飲んでいても効果が感じられない人に、薬以上に効くことがあります。

『睡眠で高血圧や肥満が改善した人が多くいる』

睡眠は次の2つのメカニズムでコントロールされています。

体内時計機構 夜になったから眠る
ホメオスタシス(恒常性維持機構)疲れたから眠る

体内時計機構については、朝の太陽光を浴びて刺激を受けることで、約15時間後に眠気を引き起こす「メラトニン」というホルモンが脳内で作られ、夜に眠りに就けます。

もう一つのホメオスタシスは、疲れることで睡眠を促す物質が、脳内にたまるというメカニズムです。

こうしたメカニズムを患者さんに理解してもらったうえで、私は睡眠のリズムを整える生活術を指導しています。

ポイントは朝です。平日でも休日でも、毎朝、ほぼ決まった時刻に起床しましょう。

そのためには、太陽光が重要です。光によって交感神経(心拍数や血圧を上げるなど全身の活動力を高める神経)が刺激され、筋肉や内臓が活動モードに入るからです。

眠るときにはカーテンを10cmほど開けて、朝になったら太陽光が寝室に差し込む状態にしましょう。

次に重要なのが、食事です。食事も交感神経を刺激するので、リズムの調整につながります。

お勧めは、「トリプトファン」が含まれている納豆や卵、牛乳といった食品です。トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、体内で「セロトニン」という物質に変換された後、メラトニンになります。

3番目は社会活動です。家の中に閉じこもらずに、朝は外出して太陽光をじゅうぶんに浴びましょう。

睡眠の質がよくなり血圧が10mmHg以上も下がって高血圧が改善した人、体重が減って元気になった人、仕事の能率が上がった人など、たくさんのよい変化を私は見てきました。ぜひ皆さんも、よい眠りで毎日を気持ちよく過ごしてください。

《快眠体質に変わる3カ条》
❶カーテンを10cm開けて眠る
毎朝、ほぼ同じ時間に起きることが重要。朝の光が寝室に差し込むようにして、交感神経を刺激することで、筋肉や内臓が活動モードに入る。

画像1: 認知症や糖尿病は睡眠不足が影響!睡眠の質を上げる方法と正しい知識を権威が解説

❷朝食を取る
特に、眠気を引き起こす「メラトニン」に変換される「トリプトファン」が含まれている納豆や卵、牛乳がお勧め。

画像2: 認知症や糖尿病は睡眠不足が影響!睡眠の質を上げる方法と正しい知識を権威が解説

❸朝の外出
社会活動も、睡眠のリズムを整えるうえで重要。起きてから2時間以内に、外出して朝の光を浴びるのがよい。

画像3: 認知症や糖尿病は睡眠不足が影響!睡眠の質を上げる方法と正しい知識を権威が解説
画像: この記事は『ゆほびか』2019年3月号に掲載されています。

この記事は『ゆほびか』2019年3月号に掲載されています。

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