「心臓ヨガ」のゆったりとした呼吸や動作、瞑想は、副交感神経を優位にします。副交感神経が優位になれば、血管が拡張したり血圧が下がったりして心臓や血管への負荷が減ります。まずはぜひ一度、心臓に意識を向けてみてください。【解説】秋山綾子(日本ポジティブヘルス協会代表理事)

解説者のプロフィール

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秋山綾子(あきやま・あやこ)
一般社団法人日本ポジティブヘルス協会代表理事。金沢大学卒。北里大学大学院循環器内科学博士課程。医科学修士。理学療法士、心臓リハビリテーション指導士。心臓病のためのヨガCARDIAC YOGAをアメリカで学び、日本人初の公認指導者となる。またインドで最も歴史あるヨガ研究所KAIVALDHAMA YOGA INSTITUTEで研修を受ける。伝統的なヨガと医療職・研究者としての知識「ポジティブヘルス」の考え方を融合させた「心臓ヨガ」®の普及活動に努める。

心臓を感じることで自分と向き合うヨガ

「心臓は、全身へ血液を送り出す臓器」。そんな知識はあっても、普段から「心臓」という臓器を意識しているかたは少ないのではないでしょうか。

心臓ヨガ」は、自分の心臓に意識を向けて、心臓を感じることで、自分自身と向き合うヨガです。

ヨガというと、日本では健康を目的とした呼吸法をともなう運動という印象が強いかもしれません。しかし伝統的なヨガでは、自分や他人に対する態度や、日常生活でもできるポーズ、呼吸法、瞑想法があり、幸せに生きることを目的としています。

4000年の歴史のあるヨガに、心臓に関する科学的根拠とポジティブヘルスという考え方を取り入れたものが、「心臓ヨガ」です。

ポジティブヘルスとは、「今よりも心身のよりよい状態を目指す」という考え方です。

「病気の予防」を考える場合、いったん病気の状態を連想しなければなりません。ポジティブヘルスでは、そんな無意識の負の連想を避けて、今の健康に感謝し、よりよい状態を目指します。

心臓ヨガを行ううちに、心身にさまざまなよい影響が現れます。不整脈が起こる頻度が減ったり、高い血圧が下がったりしたかたもいます。

近年の研究では、心臓は血液のポンプ役だけではなく、思考や感情・記憶などの精神活動とも密接なかかわりがあることがわかってきました。

緊張や不安、怒りなどで心臓の鼓動が早くなるのを感じた経験があるかたもいるでしょう。反対に、リラックスした状態では、鼓動はゆるやかになっていきます。

心臓に感謝すると心拍リズムが整う

心臓の研究を行っているアメリカの非営利団体・ハートマス研究所では、心臓の存在を意識し、感謝の感情を感じたときに、その人の心拍リズムが整ったという報告もあります。

心臓ヨガのゆったりとした呼吸や動作、瞑想は、副交感神経(心身をリラックスさせる神経)を優位にします。副交感神経が優位になれば、血管が拡張したり血圧が下がったりして心臓や血管への負荷が減ります。

ヨガで不整脈が減少したという報告もあります。ストレスが多く交感神経(全身の活動力を高める神経)が優位になりがちなかたも、ヨガで自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)を整える習慣を持てば、心臓の健康度は高まります。

心臓の病気は自覚症状がないものも少なくありません。ある日突然、取り返しのつかない事態が起こることもあるのです。私の兄もそうでした。兄は23歳で突然死しています。

当時の死亡診断書には「心不全」と記されていました。このとき、当たり前かもしれませんが、「心臓が止まれば人は死ぬのだ」と私は思い知りました。

当時私は大学で理学療法士を目指していましたが、この経験から心臓リハビリテーションを専攻。その後、北里大学病院の心臓リハビリテーション室に勤務しました。兄と似た状況から生還した人の手助けをしたいと思ったのです。

しかし、心臓病のために仕事や趣味を諦めなければならなくなったという患者さんたちと接するうちに「病気になる前に、できることはないだろうか」と考えるようになりました。

また、私はヨガのインストラクターの資格も持っていたので、リハビリテーションの一環としてヨガを取り入れたところ、よい反応が多いことにも気づいたのです。

そこで、予防健康分野の学習と指導経験を積みました。さらに渡米して心臓病のためのヨガを学び、インドで最も歴史のあるヨガ研究所でも研修を受け、2017年から「心臓ヨガ」というプログラムを作りました。

心臓を大切なパートナーとして意識

心臓ヨガを実践したかたには、「血圧が下がった」「発作が起こっても焦らなくなった」「不安感が減った」「よく眠れるようになった」などとおっしゃるかたがいます。

また、心臓の手術後、心臓のために何をしたらよいかわからないので心臓ヨガを始めたという人もいます。

まずはぜひ一度、心臓に意識を向けてみてください。心臓は左胸にあると思われがちですが、実際にはみぞおちの少し上の、胸のほぼ中央にあります。

心臓ヨガの基本である「ハートみがき」は、心臓の上に両手をおき、1分間、目を閉じて心臓へ感謝の感情を向けます(やり方は下項参照)。

1分間という時間は、心臓から送り出された血液が全身を巡って、心臓へ戻る時間とほぼ同じです。心臓を介して手足や内臓など、全身にも感謝の感情を向けてみましょう。

ハートみがきは、苦手な人と話す前などにもお勧めです。どんなときでも自分に寄り添ってくれる存在「心臓」を感じれば、緊張も和ぎます。

心臓は、私たちが生きるために文句も言わず、常に動き続けてくれる存在です。心臓ヨガで、この大切なパートナーとともに、より健康な生活を目指してみませんか。

「心臓ヨガ」のやり方

ハートみがき」は、歯みがきと同様、朝晩、行うといいでしょう。また、トイレのたびに行うのもお勧めです。「橋のポーズ」「ガス抜きのポーズ」は各1回×2セットを寝る前に行うことをお勧めします。

その①「ハートみがき」

画像1: 自律神経を整える「心臓ヨガ」とは ポジティブヘルスを取り入れ自分自身と向き合うヨガ

目を閉じて、心臓に両手を当てる。心臓の鼓動を感じても、感じなくてもどちらでもよい。
ゆったりとした気持ちで、心臓に感謝の気持ちを伝える。「いつも動いてくれてありがとう」など、好きな言葉を思い浮かべながら1分ほど心臓に感謝を贈る。
手を下ろして、今の自分の感覚を味わってみる。
ゆっくり目を開き、今の体の状況を意識する。あくびが出そう、手足が温かく感じる、呼吸がゆったりする……など。

その②「橋のポーズ」

画像1: 「心臓ヨガ」のやり方

あおむけに寝て、目をつぶり、足を腰幅に開き、ひざを立て、かかとはできるだけお尻の近くに持ってくる。手は体の横に自然に沿わせる。

画像2: 「心臓ヨガ」のやり方

ゆっくりと背骨を1つ1つ、お尻から胸にかけて床からはがすように持ち上げる。背骨が床から離れていく感じをゆっくり味わう。

画像3: 「心臓ヨガ」のやり方

お尻が上がり切ったところで、1~2分静止する。呼吸はゆったり行う。
今度は胸からお尻にかけて、背骨を1つ1つ床に置いていくように、ていねいに①の姿勢に戻る。

画像4: 「心臓ヨガ」のやり方

ふわっと力が抜けたのを感じて、両手と両足を伸ばし、ゆっくり呼吸をしてから目を開ける。

その③「ガス抜きのポーズ」

画像5: 「心臓ヨガ」のやり方

あおむけに寝て、目をつぶり、ひざを立て、両ひざをくっつける。ゆっくりと両ひざを持ち上げ、両手で抱える。

画像6: 「心臓ヨガ」のやり方

1~2分静止する。呼吸は大きめにゆったり行う。おなかと太ももが当たることで、内臓のマッサージになる。
ゆっくり両手を離して、両足も伸ばす。血流がよくなるのを感じる。ゆっくり目を開ける。

立ってできる「三日月のポーズ」

画像2: 自律神経を整える「心臓ヨガ」とは ポジティブヘルスを取り入れ自分自身と向き合うヨガ

【初心者】
片足を大きく前に出し、もう片方の足は床にひざをつき、太ももの前面が伸びているのを感じる。
そのままゆったりとした呼吸を行いながら1分静止する。足を替えて同様に行う。

画像3: 自律神経を整える「心臓ヨガ」とは ポジティブヘルスを取り入れ自分自身と向き合うヨガ

【中級者】
初心者のポーズ①から両手を大きく上げ、②を行う。
そのままゆったりとした呼吸を行いながら1分静止する。足を替えて同様に行う。

画像4: 自律神経を整える「心臓ヨガ」とは ポジティブヘルスを取り入れ自分自身と向き合うヨガ

【上級者】
片足を大きく前に出し、もう片方の足は後ろに大きく開き、太ももの前面が伸びているのを感じる。両手を大きく上に上げ、上半身を反らす。②を行う。
そのままゆったりとした呼吸を行いながら1分静止する。足を替えて同様に行う。

画像: この記事は『安心』2019年4月号に掲載されています。

この記事は『安心』2019年4月号に掲載されています。

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