慢性腎臓病の患者さんの大半はじりじりと悪化し、よほど悪化するまで、自覚症状が生じません。気づいたときには、もう透析寸前ということも起こりうる疾患です。ですから、慢性腎臓病の予防・改善のためには腎機能を示す数値などを定期的にチェックしておくことが大事です。【解説】山縣邦弘(筑波大学附属病院腎臓内科学教授)

慢性腎臓病と便秘には強い相関関係がある!

近年、腎臓病と便秘の関連について注目が集まっています。そのきっかけとなったのが、私の勤務する筑波大学大学院に在籍していた住田圭一氏の研究です。これは、彼がアメリカ留学中に行ったもので、アメリカの退役軍人を対象とする集団追跡研究です。

この調査は、腎機能が正常だった350万人(2004~2006年時点)を対象に、便秘の有無と、その後の慢性腎臓病の発症の関係について調べたのです。

対象者の平均年齢は60歳。93.2%が男性でした。7年間追跡したところ、350万人のうち、36万541人が慢性腎臓病を発症。このうち、便秘を合併していたのが、4万6022人でした。

この研究によって、腎臓病と便秘の密接な関連性が明らかになってきたのです。以前から、腎臓病と便秘の関係についての研究は行われてきました。腎臓病の人は便秘になりやすく、便秘が腎不全の予後を悪化させる点が指摘されていました。

今回の研究では、興味深い新しい結果が示されています。それは、
①便秘の人は、便秘でない人よりも早く腎機能が低下する、
②便秘が重症であるほど、長期的に末期腎不全になるリスクが高まる
というものです。

こうした結果を踏まえると、「便秘そのものが末期腎不全の発症にかかわっているのではないか」とお考えになるかもしれません。

しかし、この研究結果は、疫学研究の成果であり、実証されてはいません。ただ、慢性腎臓病と便秘の間には、強い相関関係があることは確かでしょう。

ところで、なぜ、便秘になると腎臓病によくないのでしょうか。考えられる原因は、いくつか指摘されています。

便秘になる→腸内環境が悪化する→悪玉菌が増えて尿毒素などの有害物質がより多く産生される。これがまず一因として考えられます。

もう一つは、便秘→便が腸内に滞留する時間が長くなる→食事で摂取したカリウムや尿毒素などが、腸管からより多く吸収される→腎臓に負担となる、というものです。

いずれも推定ですが、慢性腎臓病の疑いがあるかた、検査数値で腎機能の低下が認められるかたは、腸内環境を整え便秘をしないように心がけましょう。

画像: この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。



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