長時間透析とは、6時間以上×週3回、もしくは5時間以上×週3.5回の透析を指します。長時間透析をすれば、食事制限もほとんど必要なくなり、ごく普通の生活が送れます。尿毒素をしっかり除去できるので、薬も減らせます。【解説】坂井瑠実(坂井瑠実クリニック理事長・本山坂井瑠実クリニック院長)

解説者のプロフィール

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坂井瑠実(さかい・るみ)

坂井瑠実クリニック理事長・本山坂井瑠実クリニック院長。岐阜県立医科大学卒業後、神戸大学医学部第2内科入局、腎臓グループに所属。住吉川病院院長などを経て、坂井瑠実クリニック開設。透析者の体調や生活の質を向上させるために、理想の透析医療を追究。在宅血液透析導入の第一人者。

4時間×週3回の透析でほんとうに足りるのか?

私は人工透析のない時代に腎臓内科医になり、透析の黎明期である1968年から51年間、透析治療に携わってきました。

透析とは、腎臓にかわり、機械などで血液をろ過し、老廃物や余分な水分を体外に排出する治療法です。腎機能が著しく低下する、血清クレアチニン値8mg/dl以上を一つの目安として、透析療法が開始されます。

現在行われている透析療法の95%は、「血液透析」です。前腕の動脈と静脈をつなぐ手術として「シャント」を造設し、そこから血液を取り出し、ダイアライザー(透析膜)で毒素をろ過するというものです。

日本では、透析療法の約9割が4時間×週3回のペースで行われています。これはガイドラインにそう記されているため、多くの医師がなんの疑いも持たず、そのとおり実践しているのだと思います。

しかし、ちょっと考えてみてください。本来、腎臓は私たちの体内で常に働いている臓器です。その腎臓の肩がわりをするのに、4時間×週3回の透析で足りるのでしょうか。

また、腎臓から排出される老廃物(尿毒素)の多くは、たんぱく質の代謝産物です。たんぱく質は体にとって重要な栄養素なので、きちんと食べる必要があります。

しかし、食べる量は人それぞれ違うはずです。にもかかわらず、透析時間が一律というのはおかしいと思いませんか。

透析患者さんの平均余命は、健常人の約半分です。生命予後を悪化させているのは、透析の合併症といわれてきました。

透析を行うと、高血圧、貧血、皮膚の色素沈着、かゆみ、むずむず脚症候群、骨・関節の痛みなど、さまざまな症状が出現します。

ところがこうした症状は、透析時間を増加すれば消失するので、今は「透析不足による合併症」だと、私は考えています。

長時間透析を経験すると短い透析には戻らない

特に、長期的な問題になるのがリンです。血中にリンが増えると、かゆみや皮膚の色素沈着など、さまざまな不快症状を引き起こします。

また、リンが多いと血管壁の石灰化が起こり、動脈硬化の原因となります。動脈硬化は高血圧から心不全、脳血管障害といった重篤な合併症へとつながっていきます。

長期間にわたって透析が不足すると、リンが十分に排出されず、合併症のリスクが高まります。

また、透析不足になると、けっきょく、残ったリンを除去するためにリン吸着剤を使ったり、降圧剤で血圧を調整せざるをえなくなったりします。こうして薬の量が増え、もちろん薬代も高額になります。

ですから、リンは6mg/dl以下にしておく注意が必要です。

加えて、透析の間隔が2日空いてしまう週明けが、死亡事故が最も起こりやすいと、昔からわかっています。過酷な水分制限や食事制限が日ごろから必要になります。このように、透析不足は患者さんに多くの負担を強いることにもなるのです。

そこで、私が推奨するのが長時間透析です。長時間透析研究会では、「長時間透析とは、6時間以上×週3回、もしくは5時間以上×週3.5回の透析」を指します。

できれば2日以上空けないほうがよいので、週3.5回、すなわち隔日透析がお勧めです。今まで週3回透析をしていたのであれば、週3.5回にしても、透析は月に2日増えるだけです。

また、短い透析時間で効率を上げようとすると、体がついていかなくて血圧が下がったり、足がつったりするなどの問題が生じます。そのため、透析が終わってからも数時間休まなければならないことが多くあります。

それが、時間を少し延ばすだけで体への負担が軽くなり、透析終了と同時に普通に動くことができるのです。

そしてなによりも、長時間透析にすると、患者さんの体調が非常によくなります。透析を開始して1年以内の人なら、約3ヵ月で体調の変化が実感できます。透析歴の長い人でも、半年もすれば体調はよくなっていきます。

いちばん多く上がるのは、「頭がシャープになる」という声です。かゆみなどの不快症状もなくなるため、長時間透析を一度経験した人は、4時間×週3回の透析には決して戻らなくなります。むしろ「少しでも長く透析したい」という人のほうが多いくらいです。

長時間透析をすれば、食事制限もほとんど必要なくなり、ごく普通の生活が送れます。尿毒素をしっかり除去できるので、薬も減らせます。 

もちろん透析の回数や時間は、体格や食事量、また各自の希望を考慮しながら決めるべきです。

ただ、今より少し透析の時間を増やすだけで、体調の改善を含め多くのメリットがあることを、私は日々目の当たりにしています。

この事実を知ったうえで、最終的には患者さん自身が納得のいく方法を選択してほしいと思っています。

《 長時間透析の主なメリット 》

透析が十分に行われる
 ・尿毒素をしっかり除去できる
体調がよくなる
 ・かゆみなどの不快症状が消える
 ・頭がさえる
薬が減らせる
 ・降圧剤やリン吸着剤など
合併症のリスクが減る
 ・寿命が延びる可能性が高まる
食事制限がほぼ不要
 ・普通の生活が送れる

この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。

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