【認知症】みかんの皮の成分・レビノチンが認知機能の維持や改善に関係 「塩みかん」が食べやすくておすすめ

美容・ヘルスケア

ミカンの皮は、古くから治療に使われてきた薬効高い部分で、フラボノイドの一種「ノビレチン」という成分が含まれており、高い抗酸化作用で体の老化を防ぎます。「塩ミカン」は、そのままでは摂取しづらいミカンの皮を、無理なくおいしく食べる方法としてお勧めです。【解説】関隆志(東北大学CYRICサイクトロン核医学研究部研究教授・医師)

解説者のプロフィール

関隆志(せき・たかし)
東北大学CYRICサイクトロン核医学研究部研究教授・医師。1988年、東北大学医学部医学科卒業。同大学医学部大学院博士課程修了後、同大学医学部附属病院老年・呼吸器内科勤務。同大学大学院医学系研究科の先進漢方治療医学(ツムラ)寄付講座講師、高齢者高次脳医学講座講師などを経て、現在、宮城県遠田郡涌谷町の国民健康保険病院にて東洋医学と内科を担当。日本東洋医学会認定医。日本中医学会理事。

乾燥させたミカンの皮は漢方薬の薬効高い原料

ミカンの皮に含まれる成分で認知症がよくなるといったら、驚かれるでしょうか。

私は医師として、東北大学を拠点に、長年にわたり、漢方と鍼灸の研究およびそれらを用いた治療に取り組んできました。

ミカンの皮は、東洋医学では生薬(漢方薬の原料)として、広く認知されています。干した皮は「橘皮(きっぴ)」と呼ばれ、なかでも数年かけて乾燥させた「陳皮」は珍重されます。未熟な青ミカンを使った物は「青皮」といい、いずれも、日本薬局方に収載されています。

主な効能として、胃腸を丈夫にして消化を助ける健胃、セキを鎮める鎮咳、タンを取り除く去痰などが認められています。ミカンの皮は、古くから治療に使われてきた、薬効高い部分なのです。

この皮には、フラボノイドの一種である「ノビレチン」という成分が含まれています。

フラボノイドとは、植物の色や苦みのもととなるポリフェノールのうちの、一群の色素成分です。高い抗酸化作用で、体の老化を防ぎます。

私がノビレチンに着目するようになったのは、2008年ごろに発表された、東北大学薬学研究科の山國徹先生の研究がきっかけです。

ノビレチンの含有量が多い陳皮を、人工的に認知症にしたマウスに与えて実験したところ、認知機能の改善に有効であることが判明しました。この効果をヒトで確認するため、私の患者さんの協力を得て、臨床試験を行うことになったのです。

被検者は、中等度のアルツハイマー病で、すでに1年以上、認知症の進行抑制剤を内服している患者さんです。

まず被検者を無作為に二つのグループに分け、そのうえで、片方の群は、薬に加え陳皮の煎じ薬も内服してもらいました。ちなみに、各自が処方されている薬は、試験に影響の出ない範囲で、服用を続けます。

陳皮を飲む群は、毎日、ノビレチンの多い陳皮30gを、500mlの水で煮出した煎じ薬を、3回に分けて内服。これを、1年間にわたり、継続してもらいます。陳皮の量は、マウス実験での投与量を、ヒトの体重に換算し、算出しました。

むろん、認知症患者のかたが自分で薬を煎じて飲み続けるのは難しいため、ご家族の協力が必須です。数十人に依頼して始めた試験でしたが、1年後に残った患者さんは11名でした。

電話の受け答えができるまでに改善した人も!

被検者が少数になったとはいえ、得られた成果は非常に有意義なものでした。

試験開始時と終了時に、国際的な指標として認められている2種類の方法により、認知機能の変化を検査しました。その結果を比較したところ、薬だけの群(男性2名・女性3名の計5名)は有意に(統計上、明らかに)悪化。

一方で、陳皮も並行して内服した群(男性2名・女性4名の計6名)は、有意な変化が見られなかったのです。

「変化がない」というと、それで有効といえるのかと、疑問に思われるかもしれません。しかしアルツハイマー病というのは、日ごとに進行する病気です。

実際、陳皮を飲まなかった群は、進行抑制剤を飲み続けていたにもかかわらず症状が悪化しています。1年経っても認知機能に変わりがないというのは、画期的なこと。それだけで、十分に効果が現れたといえます。

さらに、陳皮を内服した群のなかには、認知機能の維持にとどまらず、症状が改善したケースもありました。それまで、電話の受話器を取っても応答できなかった患者さんが、受け答えできるようになったのです。

この研究結果は、論文にして2012年に発表しました。

【ミカンの皮の成分の臨床試験】
❶被検者をA・Bの群に分け、A群にはミカンの皮の漢方薬「陳皮」(ノビレチン高含有種)を毎日、1年間飲んでもらう。
❷2種類の検査で被検者の認知機能を調べ、1年前と結果を比較。

A群:明らかな変化なし(一部は改善)
B群:明らかに悪化

【結果】
ミカンの皮の有効成分「ノビレチン」が認知症患者の機能低下を予防・改善したと考えられる。

今回、別記事で紹介している「塩ミカン」は、そのままでは摂取しづらいミカンの皮を、無理なくおいしく食べる方法としてお勧めです。

スプーン1杯を食べるだけで、フレッシュな香りが口の中に広がります。漢方では、陳皮の健胃作用は「芳香性」に属し、その香りもまた、有効成分の一つなのです。

試験ではノビレチン高含有の陳皮を用いましたが、普通のミカンの皮にも含まれています。興味深いことに、マウス実験では、化学的に抽出したノビレチンより、陳皮を与えたほうがいい効果が出ています。

これは後の研究で、皮に微量に含まれるほかの成分が作用に関与しているためと判明しました。皮で摂取するほうが、より効果的というわけです。

陳皮は体を温める性質があるので、体がほてりやすい人には向きませんが、ミカン果肉には体を冷やす性質があるので、塩ミカンなら、過剰な心配はありません。ぜひ、ミカンを皮ごと食べて、その薬効を享受するようお勧めします。

この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。

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