【便秘薬の種類】新薬が続々登場!体の負担や副作用の少ない便秘治療が可能に

美容・ヘルスケア

センナは紀元前から下剤として使われてきた薬剤です。酸化マグネシウムは江戸時代にシーボルトが持ち込んだものです。つまり、日本の便秘治療は江戸時代から進歩してこなかったのです。この原因には、「便秘は病気ではない」という考えがありました。【解説】中島淳(横浜市立大学附属病院消化器内科肝胆膵消化器病学診療部長/主任教授)

解説者のプロフィール

中島淳(なかじま・あつし)
横浜市立大学附属病院消化器内科肝胆膵消化器病学診療部長/主任教授。1989年、大阪大学医学部卒業。ハーバード大学医学部客員准教授などを経て、2014年より現職。また、2009年から2011年に厚生労働省の慢性特発性偽性腸閉塞の研究班の研究代表、2014年には結腸通過遅延型便秘症の研究班の研究代表を務める。著書に『寿命の9割は「便」で決まる』(SBクリエイティブ)がある。

たかが便秘では済まされない

「たかが便秘で病院に行くなんて……」30年にわたって診察してきた中で、こうした認識の患者さんが非常に多いと感じています。

サプリメントを使って自己流で便秘を治そうとする、市販の下剤が効かなくなってきて1日に50錠も飲んでいる……。

このような自己流の手当てを続けていると、便秘を悪化させて次の3つの問題を引き起こします。

腸が変形したり、肛門が傷ついたりして、機能が低下する
大腸に便が大量にたまった状態が続くと、ゴムや風船のように伸び切ってしまい、収縮しなくなり、便を押し出すことができなります。

また、指で便をかき出す「摘便」が習慣化している患者さんが女性に多く見られます。

こうして肛門が傷つくと、便かおならかの区別ができなくなったり、便意がなくなったりします。さらに悪化すると、お尻の穴の筋肉が緩まなくなり、大変なことになります。

重篤な病気を見過ごす
便秘の人はそうでない人と比べて、寿命が短いことが調査でわかっています。

理由として、便秘が先行して現れる大腸ガン、認知症やパーキンソン病などの重い病気が見過ごされていることも考えられます。

血管が破裂し死に至ることもある
便秘の人の多くは、便が出にくく強く力まなければならないなどの「排便困難症状」に悩まされています。

動脈硬化(血管が狭く硬くなり、血液の流れが悪くなった状態)が進んでいる場合、排便で力んで血圧が上がると、血管がプツンと切れ、心臓発作や脳出血などで命を落とす危険性が高くなります。

他国から後れを取っていた日本の便秘薬

以上のように、便秘はあなどっていけないのですが、医療の側もその認識が欠けていました。

患者さんは排便の回数が少ないことよりも、排便が困難な症状で悩んでいます。しかし、病院では「便が出ればそれでいい」とセンナを使った刺激性下剤や、便を軟らかくする酸化マグネシウムを使った浸透圧性下剤が処方されてきました。

センナは紀元前から下剤として使われてきた薬剤です。

酸化マグネシウムは江戸時代の1823年にドイツ人医師のシーボルトが持ち込んだものです。

つまり、日本の便秘治療は江戸時代から進歩してこなかったのです。

習慣性のあるセンナを欧米諸国の医師が長く処方することはありません。また、酸化マグネシウムは、腎機能が低い人や高齢者が長期にわたって使うと命にかかわるケースもあります。

このように日本で処方されてきた下剤は問題が多かったのです。この原因には、「便秘は病気ではない」という考えがありました

その結果、日本では旧態依然とした治療が続けられてきたのです。

新薬の登場で治療はきめ細やかに

こうした状況が、2012年に変化します。臨床試験に基づいた科学的な根拠のある新薬が登場したのです。
ルビプロストン」は、小腸に作用して水分の分泌を増やして便を軟らかくし、腸管内を移動させやすくする新薬です。

最大の特徴は、センナや酸化マグネシウムのような副作用のリスクが低いことです。

2017年には同様の作用を持つ「リナクロチド」や「ナルデメジン」が治療薬に加わりました。

さらに翌年の2018年では、消化管運動を促す「エロビキシバット」、アメリカで長く使われてきた「ポリエチレングリコール」も加わりました。

ここに来て、便秘治療の明治維新が起こったのです。

一般名(成分名) 種類 厚生労働省の承認 効きかた
ルビプロストン 上皮機能変容薬 2012年6月 腸内の水分を増加させ、便を軟らかくして自然な排便を促す
リナクロチド 2018年8月 腸内の水分を増加させ、便を軟らかくして自然な排便を促す。便秘に伴う腹痛にも効果がある
エロビキシバット 2018年1月 胆汁酸が腸で吸収されるのを妨げて、便の水分を増やすとともに腸のぜんどう運動を促す
ポリエチレングリコール(マクロゴール) 浸透圧性下剤 2018年9月 便に直接浸透することによって便の軟化や潤滑性を向上させ、かさ増しによる腸刺激などで排便を促す。欧米では第一選択の成分
ラクツロース 2018年9月 腸内の水分を増加させ便を軟らかくし、腸のぜんどう運動を促す。腸内細菌によるアンモニアの発生を抑制する効果もある
ナルデメジン オピオイド誘発性
便秘症治療薬
2017年3月 便秘の副作用を持つ鎮痛剤オピオイド(モルヒネ等)を服用中にも使える。ガンなど痛みを伴う病気でも、痛みをとりつつ便秘にならない治療が可能に
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新薬には科学的な根拠があるので、服用して何時間後に効果が出てくるのかがわかっています。

同時に、飲む量も調節できるような形状になっています。患者さんの生活スタイルに合わせて、飲むタイミングや量を変えられるという利点があるのです。

続々と登場した新薬だけでなく、おなかの膨満感などに効果を発揮する漢方薬も取り入れることで、きめ細やかな治療ができるようになりました。

便秘治療で大事なのは、薬を使って早期に治すこと

便の回数だけにこだわらず、強く力まなければ便が出ない、残便感があって気持ちよくない、おなかが張って苦しいなどの症状があれば、まずは内科で受診するようにしましょう。

この記事は『ゆほびか』2019年5月号に掲載されています。

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