【便が細い・すっきり出ない】3つの原因と対策 大腸がんや潰瘍性大腸炎の可能性も

美容・ヘルスケア

最近、便がすっきり出ないーー。便が細くなるのには、大別すると次の三つの原因があることが多いと考えられます。(1)腸の一部が狭い。(2)便がゆるい。(3)肛門が狭い。それぞれ原因が異なるので、患者さん自身が見極めるのは難しいです。
【回答者】北山大祐(きたやま胃腸肛門クリニック院長)

回答者のプロフィール

北山大祐(きたやま・だいすけ)

きたやま胃腸肛門クリニック院長。2008年千葉大学医学薬学府博士課程卒業。医学博士、日本大腸肛門病学会指導医・専門医(IIb:肛門科)。千葉大学医学部第一外科、千葉大学医学部附属病院、国立千葉医療センター、千葉県救急医療センター、東葛辻仲病院などに勤務し、2017年から「胃腸と肛門」の治療が専門のきたやま胃腸肛門クリニックの院長に就任。
▼北山先生の研究実績・学会発表

今回の悩み「便は出るけど細い」
とくに便秘や下痢をしているわけでもないのに、最近、便が細くなっています。便の量自体は以前とほぼ変わりません。若い頃のように、太くてしっかりとしたバナナ便が出なくなったのは、どうしてでしょうか。(60代男性)

40歳以降だと大腸がんの可能性も

「以前はバナナ状の便が出せていたのに、最近は細くて頼りない便ばかり」。
こんな悩みは珍しくありません。
なかには「最近、便がすっきり出ない」というかたもいます。

便が細くなるのには、大別すると次の三つの原因があることが多いと考えられます。
(1) 腸の一部が狭い
(2) 便がゆるい
(3) 肛門が狭い
それぞれ、原因が異なるので、順番に説明していきます。

まず、いちばん心配なものが、(1)腸の一部が狭いことで、原因として大腸がんが疑われます

腸の一部が狭くなると、狭いところを便が通過するために、自然と体が反応して便がゆるくなることがあります。そのため、(2)でもご説明しますが、便がゆるくなって、細くなることになるのです。

大腸がんは40代を過ぎると罹患率が増えてくる病気です。

従ってこの世代で便の細さが気になるかたや、血便がみられるかたは、大腸内視鏡検査が必須となります。質問者さんも、60歳を超えているので、大腸がんの検査をお勧めします。

続いて、(2)の便がゆるいですが、下痢というほどひどくはなくても、水分を多く含んだ便は、軟らかいのであまりいきまなくても出ます。いきまないと肛門が大きく開かないので、自然と便が細くなるのです。

便がゆるくなるのにも、前述の大腸がんをはじめ、さまざまな原因が考えられます。

たとえば、腸内細菌叢の乱れです。私たちの腸内には、善玉菌や悪玉菌といった細菌が種類ごとに塊となって存在していて、これら細菌の生態系を腸内細菌叢と呼びます。腸内細菌叢は、偏った食習慣や過労、ストレス、運動不足などによってバランスが乱れます。

また、過敏性腸症候群によって便がゆるくなる場合もあります。過敏性腸症候群は、腸に炎症や潰瘍などの疾患がないのに、下痢や便秘、腹痛などを慢性的にくり返す病気です。

過敏性腸症候群がなぜ起こるかという原因に関しては、よくわかっていません。ただ、原因の一つとして、ストレスが関係しているといわれています。

過敏性腸症候群は30代以前の若い世代に比較的多い病気なので、質問者さんのように60歳を超えていると、この病気の可能性は低いでしょう。

腸内細菌叢の乱れや過敏性腸症候群が原因の便のゆるさは、バランスのいい食事と適度な睡眠や運動を心がけ、整腸剤も服用して改善をはかるのが一般的です。

3年に1回は大腸の内視鏡検査を

ほかにも、近年、患者さんが増えている潰瘍性大腸炎という腸の粘膜に炎症を起こす疾患でも便がゆるくなることもあります。

これは、大腸の内側の粘膜に慢性的な炎症が起こり、びらん(粘膜のただれ)や潰瘍が生じる病気で、粘液便(腸の粘液が混じった便)や粘血便(粘液便に血液が混じったもの)が出ることもあります。

潰瘍性大腸炎の診断は、大腸内視鏡検査などによって行われ、炎症を抑えたりコントロールしたりするための薬物療法で治療します。

過敏性腸症候群が疑われる場合でも、腸に炎症や腫瘍などの異常がないことを確認するために、大腸内視鏡検査が行われる場合もあります。

最後の(3)の肛門が狭くなるのは、慢性的な切れ痔が原因です。

私たちの体は傷ができて治るという過程で皮膚が若干、縮みます。排便のたびに肛門付近が切れる切れ痔の場合、何度も傷ができ・治ることをくり返すこともあるので、肛門が狭くなる人もいます。

しっかりと硬くホイップした生クリームでも、しぼり袋の口金の穴が小さければ細くしか絞り出せません。
便の状態と肛門の関係もこれと同じです。

健康的な便でも、肛門が狭くなっていれば、細い便になってしまいます。なかには、鉛筆の太さ程度の便しか出なくなってしまうかたもいます。

切れ痔で狭くなった肛門は、手術で治療が可能です。ただし、切れ痔で肛門が狭くなるのは、かなり重症なかたなので、数回、切れ痔を経験しただけだと、この可能性は低いです。

このように、便が細くなる原因は多岐にわたるため、(1)~(3)のどれが原因かを患者さん自身が見極めるのは難しいです。

たとえば、出血や便が細い原因は切れ痔だと思い込み、なかなか病院に行かずに、いざ検査をしたら便が細い原因は大腸がんだった、というケースも考えられます。

いずれにしても、便が細くなってきたかたや便通異常のあるかたは、医療機関を受診してください。その際には、大腸内視鏡検査を受けることができ、同時に肛門の状態も診てもらえるクリニックを選ぶと、原因の可能性を幅広く検討して診断を下してもらえるはずです。

病気の早期発見のためにも、3年に1回は大腸の内視鏡検査を受けましょう。

まとめ

《便が細くなる原因と対策》

(1)腸の一部が狭い
考えられる原因→大腸がん
対策→大腸の内視鏡検査

(2)便がゆるい
考えられる原因→腸内細菌叢の乱れ、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、大腸がん
対策→規則的な生活、整腸剤の服用、大腸の内視鏡検査(潰瘍性大腸炎、大腸がん)

(3)肛門が狭い
考えられる原因→切れ痔
対策→手術
※多くの切れ痔は外用薬と服用薬で治るが、便が細くなるほどの切れ痔の場合は手術

この記事は『安心』2019年5月号に掲載されています。

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