【咳喘息とは】症状と基本の治療薬 そしてBスポット治療の効果について

美容・ヘルスケア

咳喘息とは、さまざまな検査を受けても原因が見つからず、その症状が3週間以上続く病気のこと。欧米では、咳喘息は、「気管支喘息の最も軽症なもの」と言われており、その患者数は少なくない。今回は、咳喘息の基本的な治療法と治療薬、今注目の「Bスポット療法」について、呼吸器内科医の杉原徳彦医師に解説していただいた。

解説者のプロフィール

杉原徳彦(すぎはら・なるひこ)
医療法人社団仁友会仁友クリニック院長。医学博士。専門は呼吸器内科。日本内科学会認定医、日本アレルギー学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全日本スキー連盟アンチドーピング委員。著書に『つらいせきが続いたら鼻の炎症を治しなさい』(あさ出版)などがある。
▼研究論文と専門分野(NII学術情報ナビゲータ)

「咳喘息」治療の基本となる2つの薬

現在、咳喘息の治療法として広く一般的に行われているのは、「薬」による治療です。
具体的には、「気管支拡張薬」や「吸入ステロイド」が主に用いられます。

気管支拡張薬とは、その名のとおり、気管支を拡張させて、空気の通りをよくする薬です。
吸入ステロイドは、気管支の炎症を抑える効果のある薬です。

咳喘息では、気管支に慢性的な炎症が生じることで、ちょっとした刺激にも敏感に反応するようになり、その結果、気管支にある筋肉の「平滑筋」が過剰に収縮します。
それが長引く咳の症状になるのです。

治療では、気管支拡張薬で気管支の平滑筋をゆるめて気管支を拡張し、吸入ステロイドで気管支に起きている炎症を鎮めていきます。
最近は、両者を1つにした吸入薬もあり、医療機関によってはそちらを処方するのが一般的です。

これらの治療薬の効果は非常に高く、咳喘息の患者さんの多くは、処方後1〜2週間で長引く咳の症状がだいぶ改善されます。

ただ、中には、鼻の疾患が原因ではなく、明らかに気管支の炎症により咳が長引いているにもかかわらず、これらの薬が効かない患者さんも、少数でありますが、存在します。

この場合、迷走神経が何らかの刺激に対して反射を起こし、その結果、気管支が収縮して咳が起こっていることが考えられます。
そこで、その反射を抑える薬として「抗コリン薬」を用いると、ピタッと咳がおさまることが少なくありません。
抗コリン薬は、気管支拡張薬の一種です。迷走神経にくっつきその反射を促進する、アセルチルコリンという神経伝達物質をブロックすることで、迷走神経の反射を抑え、咳を起こしにくくする効果があります。

なお、薬を続けることで長引く咳がおさまったからといって、そこで勝手に治療を止めてしまってはいけません。
咳ぜんそくは完治したわけではないからです。

そして、完治してない状態で治療をやめると、再発する可能性があるので、医師の判断に従って、3カ月〜1年くらいは薬物療法を続ける必要があります。

吸入ステロイド薬は使い続けて大丈夫?

ちなみに、患者さんによっては、「ステロイド」の副作用を心配される人がいます。
注射や飲み薬は「全身投与」になるため、全身に吸収され、しかも一度の投与でも長く体に残りやすく、さまざまな副作用を起こす危険性があります。

ですが、咳喘息で用いるステロイド薬は吸入薬で、「局所投与」です。
この場合、その影響は局所に限定されるので、基本的には副作用の心配をする必要はありません。
妊娠している方の喘息治療でも、問題なく使用されています。

ただ、COPDの患者さんの場合、吸入ステロイドを使った治療は肺炎のリスクを高めます。
また、非結核性抗酸菌症の治療では、症状がますます悪化させる危険性もあります。
というのも、ステロイド薬には体の免疫力を抑制する作用があるからです。
その意味でも、きちんと見極めることが重要になるのです。

高い効果がある「Bスポット療法」

咳喘息(気管支喘息も含む)は、前項でご紹介した一般的な薬物治療のほか、いくつかの特殊な治療法があります。
それぞれかなりの効果が期待できるとして、さまざまな医療機関で積極的に取り入れられています。
ここからは、いくつか紹介していきましょう。

まず、私がすすめている治療法の1つに「Bスポット療法」(保険適応)があります。

これは、鼻の最奥部にある上咽頭を、塩化亜鉛を染み込ませた綿棒をのどと鼻から入れてこすり、上咽頭にある炎症性の物質を取り除く治療法です。
これは本来、上咽頭炎を治療するものなのですが、咳喘息や気管支喘息、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎の症状をやわらげる効果もあります。

上咽頭は、鼻から吸い込んだ空気が、喉や気管支などの下気道に流れる入口になる場所です。
そのため、外部からのウイルスや細菌を撃退する役割を担うリンパ球などが数多く存在し、つねに外部からの侵入者と闘っています。
上咽頭はつねにウイルスや細菌の侵入にさらされているため、炎症が起こりやすい場所でもあるのです。

鼻の炎症が全身の免疫力を下げることも

そして、上咽頭の炎症は、その周辺の鼻や耳、喉の痛みなどのほか、咳喘息やIgA腎症などの疾患、痰、咳、鼻づまり、後鼻漏、さらには頭痛、首・肩のコリ、めまい、耳鳴り、慢性疲労、しびれ、関節痛など、さまざまな体の不調の原因となるといわれています。

近年の研究では、上咽頭炎が一部の自己免疫疾患(体を守る免疫システムが正常に機能しなくなり、自らの体を攻撃することで起こる病気の総称)の原因にもなっていることも明らかになってきています。

副鼻腔炎から発生した炎症性の物質は、上咽頭にも炎症につながるだけではなく、体の弱いところで発生している炎症を悪化させ、動脈硬化、がん、リウマチ、膠原病なども引き起こすのです。

咳に関係する疾患としては、逆流性食道炎もあります。最近は内視鏡で見つからない逆流性食道炎もあり、これらも炎症性物質が関係していることがわかりました。

このほかにも、うつ病も慢性炎症がかかわっていることが近年注目されており、副鼻腔炎や上咽頭炎の慢性炎症が、全身のさまざまな不調に影響をおよぼすことが、明らかになってきているのです。

Bスポット療法は、これらの不調や疾患の原因となっている炎症を取り除き、上咽頭周辺の粘膜をきれいにしていきます。

また、この治療の炎症を鎮める効果は、炎症性の物質を取り除くだけではなく、上咽頭の周辺に集中する迷走神経を刺激することによっても生じます。
迷走神経は副交感神経に属し、その副交感神経は炎症を抑える働きをするからです。逆に、同じく自律神経に属する交感神経には、炎症を活性化させる働きがあります。

Bスポット療法を開発した堀口申作先生は、どんな病気にも効くとおっしゃっていたといいますが、私の経験からもその効果を実感しています。

副鼻腔炎や後鼻漏の症状が改善した例も

当院でも患者さんから、咳に限らず、Bスポット療法の効果を実感する声がかなり寄せられています。

重度の副鼻腔炎をもっていた患者さんは、劇的に症状が改善しました。
その人はそれまで、副鼻腔炎の手術も耳鼻科で何回も受けていましたが、痰のからみやネバネバの後鼻漏の症状がなかなか解消せず、当院に来院しBスポット療法を受けることになりました。

すると、治療をした瞬間から、これまでのネバネバの鼻水ではなく、サラサラとした鼻水がスーッと流れ出てきたのです。
これには患者さんも、そして治療している私もビックリでした。その後、この患者さんは、「楽になりました!」と帰られました。

ただし、1回の治療では後鼻漏を完全に治しきることはできないので、その後も後鼻漏を強く感じたらBスポット療法を受ける、というのをくり返していらっしゃいました。
その結果、だんだんと後鼻漏の症状そのものが軽くなりました。

また、花粉症などのアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎をもつ患者さんの場合、多くが鼻腔内の粘膜が腫れています。
その場合はBスポット療法によってそれらが解消しやすくなります。
鼻通りがよくなるなどして、「呼吸が楽になった」という感想をしばしばいただきます。

これは、上咽頭の炎症が取り除かれることで、鼻や喉、気管支でも起こっている炎症による粘膜の腫れが退いていき、長引く咳の原因となる迷走神経の刺激が起こりにくくなるからだと考えられます。

また、治療によって自律神経のバランスが整うことも、咳がおさまる要因の1つとして考えられます。

Bスポット療法の注意点

一見、夢のような治療法ですが、デメリットもあります。

鼻の穴と喉から細い棒を入れるため、少々痛みをともなうことです。
炎症の状態によっては出血をともなうこともあります。
そして、1回の治療で、炎症のすべてを取り除けるわけではありません。

そのため、上咽頭の粘膜の炎症をきれいに取り除くには、3〜6カ月の間、週1回くらいのペースで行う必要があります。
ですが、当院の患者さんたちにうかがうと、炎症がとれていくと、最初ほど痛みを感じなくなるといいます。また、出血もなくなっていきます。
痛み以上に、症状を改善・解消する効果が高いので、少なからずの患者さんが週に1回ほど、定期的に通われています。

Bスポット療法を受診できる医療機関については、このサイトに最新情報が掲載されています。
ページ内下部にある、「慢性上咽頭炎治療医療機関一覧」からお住まいの都道府県をクリックして、ご確認ください。

なお、Bスポット療法は、手術等で鼻の中をレーザーで焼いた直後は受けられません。
また、鼻腔を左右に分ける鼻中隔が極端に曲がっている人や、咽頭反射(のどの奥に指を突っ込んだときに、オエッとなる反射)が強すぎて、ちょっとした刺激でも吐き気をもよおす人などは難しいといえます。
食直後に行うと嘔吐する場合もあるので、できれば空腹時のほうが好ましいでしょう。

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◆杉原徳彦(すぎはら・なるひこ)
1967年8月13日生まれ。杉原家は江戸時代から続く医師の家系で、17代目の医師になるものとして生を受けるが、レールの敷かれた人生に反発し、高校時代は文系を選択。部活のスキーの大会で肩関節を脱臼し手術を受けたことで、医師の仕事のすばらしさに目覚め医師を志す。94年、杏林大学医学部を卒業。2001年、同大学院修了。東京都立府中病院(現・東京都立多摩総合医療センター)呼吸器科勤務を経て現職。自らも喘息を患った経験があり、教科書通りの医療では良くならない患者がいることに疑問をもち、上気道と下気道の炎症に着目した独自の視点で喘息診療を行っている。仁友クリニックを設立し、喘息治療で功績を残した杉原仁彦は祖父にあたる。

※この記事は書籍『つらいせきが続いたら鼻の炎症を治しなさい』(あさ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。

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