【脳卒中のリハビリ】発症後48時間以内に開始するのが「後遺症の軽減」によい 運動機能の回復度に大きな差

美容・ヘルスケア

今日では発症から48時間以内にリハビリを開始することが、後遺症を軽減するためにもよいとされています。体が思うように動かないことなどで患者さんはショックを受けているものの、この時期のリハビリは大変重要です。【解説】豊田章宏(中国労災病院治療就労両立支援センター所長・同病院リハビリテーション科部長)

解説者のプロフィール

豊田章宏(とよた・あきひろ)

1986年、岩手医科大学医学部卒業、脳神経外科講座入局。90年、同大学大学院医学研究科終了。96年、中国労災病院リハビリテーション科部長。2018年、同病院治療就労両立支援センター所長に就任し、勤労者医療の一環として就労支援に取り組む。

発症から48時間以内にリハビリを開始するとよい

まず上半身を起こして手足を動かすことから

厚生労働省の国民基礎調査(2013年)によると、65歳以上の高齢者で、介護が必要になった原因の1位は、脳血管障害(脳卒中)です。そのため脳卒中を起こしたら、治療を受けるとともにリハビリテーションを行うことが大切になります。

1980年代までは、脳卒中発症後の3週間は安静にしてからリハビリを行う、というのが一般的でした。しかし、それでは筋力が著しく衰え、心肺機能も低下し、寝たきりの大きな要因となることが判明。90年代以降は、早期にリハビリを始めるようになったのです。

今日では、発症から48時間以内にリハビリを開始することが、後遺症を軽減するためにも、よいとされています。

脳卒中のリハビリは、大きく三つの時期に分けられます。発症後2週間~1ヵ月まで入院した病院で行う「急性期」、発症後6ヵ月までリハビリの専門病院で行う「回復期」、発症後6ヵ月以降に自宅や施設で行う「生活期」があり、それぞれの時期に適したリハビリが行われます。

急性期は、体が思うように動かないことや、言葉が出てこないことなどで患者さんはショックを受けているものの、この時期のリハビリは大変重要です

急性期のリハビリをしっかり行った場合と、行わなかった場合とで、脳卒中の後遺症の改善度を比較した、海外の研究があります。その結果は、リハビリを行ったほうが、運動機能が大きく回復していました。

発症から1年以上過ぎた生活期に、大きな回復をすることは非常にまれ。そういったケースは、本来回復すべき急性期に、十分なリハビリ治療が行われていなかったので、回復に時間がかかったということでしょう。

急性期は、ベッドの上で上半身を起こして手足を動かすなど、できることから始めます。

脳卒中の患者さんは、セキをしたり、食べ物を飲み込んだりするのに関係の深い神経伝達物質が減ることがあります。そのため、寝たままではタンや食物が気管に入り、誤嚥性肺炎を起こしやすくなるのです。

また、手足がかたくならない(拘縮しない)ように、なるべく早く動かすことが必要になります。

そして、歩行訓練や、作業療法(腕を動かす、物をつかむといった生活動作訓練)など、日々複数のプログラムを加えていきます。こうしたことを早期に始めることで、脳や体の刺激になり、障害された機能の回復につながります

失った脳の機能を別の脳細胞が補うようになる

回復期は、リハビリの専門病院に移り、急性期で行う、障害された機能の回復訓練に加え、障害されていない機能を強化する訓練も行います。そうすることで、社会復帰に向けて少しでも生活しやすい、体の状態を組み立てていくのです。

生活期は、基本的には自宅や施設で、リハビリをやってもらうのではなく、自分で行うことになります。とはいえ、障害が重い場合は、回復期の医師と相談し、治療とリハビリができる医療機関や、介護を受けられる介護老人保健施設などに移ることになります。

脳卒中になった人が1年以上経過した時点で、どのような生活状態なのか、2013年に私たちの地域(広島県呉市)でアンケートを取りました。

300名中、約210名から回答があり、約75%の人が自宅で暮らしていました。リハビリの専門病院に入院している人が約5%、介護老人保健施設に入居されている人は約12%でした。

脳卒中後の日常生活状態の変化(mRS)

[自宅に帰られた人122例]

上のグラフは、自宅に帰られた人たちについて、三つのリハビリ期での生活状態の変化を現したものです。

mRS(モディファイド ランキン スケール)という、脳卒中後の日常生活動作の評価指標を用いました。mRSの0は正常、1はほぼ正常(仕事も可能)、2は身の周りのことは自立できる、3は自分で歩ける、4は歩くのに介助が必要、5は寝たきり、6は死亡となります。

急性期から回復期にかけては、全体的に体の状態がよくなっていることがわかります。ところが、生活期を見てください。mRS0~2の軽症はさらに増えていますが、全体で見ると状態の悪くなっている人も少なくありません。

mRS3の自分で歩ける人が減っているということは、自宅でのリハビリがうまく継続できずに、体の状態が悪くなっているということです。回復期のリハビリ専門病院でせっかくよくなったのに、このような悪化は残念なことです。

脳卒中で障害された脳が、元に戻るということはありません。しかし、近年の研究では、リハビリを続けることで、失った脳の箇所の周辺や別の部分の脳細胞が、その機能を補うように働くとわかってきました。そうして、マヒした部位が回復して動くようになるのです。

後遺症の程度によって、回復にかかる時間も異なります。しかし、どんな状態でも目標を持っていろいろと工夫をしながら、リハビリに取り組むことは大事です。

身の周りのことは自分でやる、散歩に積極的に出かけるなどもいいでしょう。家族や近所の人といっしょにできることもあるはずです。希望を持って、できることを一つずつこなしていきましょう。

この記事は『壮快』2020年3月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

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