【話題】ネオワイズ彗星、肉眼でも見える? 天文素人のプロカメラマンが手探りで観察・撮影に行ってきた!

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2020年3月に発見されたネオワイズ彗星。7月末から8月頭あたりまで、東京でも肉眼でも楽しめるようになると、ニュースでも何かと取り上げられていると思います。このネオワイズ彗星を、彗星初心者である筆者が北海道で観察・撮影を行いました。実際に観察・撮影してみると、撮影前のイメージとは異なることがたくさんあったので、この点も含め、観察のポイントをお伝えしたいと思います。

執筆者のプロフィール

齋藤千歳(さいとう・ちとせ)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータ元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラバッグなどのカメラアクセサリー、車中泊グッズなどの記事も執筆している。目下の悩みは月1以上のペースで増えるカメラバッグの収納場所。

肉眼でも観察可能?

「5,000年に一度」のネオワイズ彗星

2020年3月に新しく発見されたというネオワイズ彗星(NEOWISE彗星 C/2020 F3)をご存じでしょうか。
連日、ニュースでも取り上げられているので、知っているという方も多いでしょう。ネオワイズ彗星自体の情報については、専門家の方々がさまざまなメディアで解説されているので、天文の素人である筆者が解説する必要もないかと思います。

筆者が気になったのは、なにも持っていかなくても、肉眼でも観察できるという手軽さ、そして次に観察できるのは5,000年以上先といわれる希少さです。せっかく、そんなチャンスにいるなら、見てみたいじゃないですか。そして、フォトグラファーという職業上、撮影もしたいと考え、実際に観察・撮影に向かいました。その際に感じた観察のポイントをみなさまにお伝えしたいと思います。

CanonEOS 6D Mark II/Canon EF100mm F2.8 マクロ USM/100mm/マニュアル露出(F2.8、15秒)/ISO 6400/WB:色温度指定・3,800K 中望遠レンズでネオワイズ彗星自体をアップ気味で撮影しました。写真ではかなりはっきり見えますが、肉眼での視認は困難でした。

スマホアプリ「コメットブック」で位置を特定しよう

筆者は、7月18日の夕方から夜にかけて、北海道道北部・初山別村の海岸でネオワイズ彗星を観察しました。
彗星の観察や撮影は、ほぼはじめてという初心者であったのですが、天文好きの方々から、まずはこのスマホアプリをインストールしておくようにいわれたのが、天体望遠鏡、双眼鏡を取り扱う総合光学機器メーカーVixen(ビクセン)が無料で提供している「Comet Book(コメットブック)」です。

Comet Bookは、iPhone、iPad、Android、kindle fireに対応しており、それぞれApp Store、Google Playなどからアプリケーションを入手できます。アプリをインストールすると、チュートリアル解説をしてくれるので操作は理解できると思いますが、画面左上で彗星名をタップし、画面下部の「Time」と「Day」のスライダーで観察したい日時を設定すると、そのときに彗星が見える方角や高度などを表示してくれる仕組みです。

これでネオワイズ彗星の位置を確認することができます。筆者が観察したときは北西の空に見える予定でした。

望遠鏡などで有名なVixenのWEBページ。Comet Bookの解説などが確認できます。

www.vixen.co.jp

まずはデジカメで1枚撮ってみるといい

場所や時間帯などによっても見える場所は異なるので、Comet Bookなどのアプリや、各種情報を確認してネオワイズ彗星の位置を確認しておいてほしいのですが、筆者の場合、日没後20時過ぎぐらいに、北西の空を肉眼でいくらにらんでも、彗星らしきものは視認できませんでした。

撮影ポイントに選んだのは、北海道で北西側が観察できる海岸線のなかでも人気の初山別豊岬金比羅神社の前なので、ほかにもフォトグラファーがいっぱいです。ただし、少なくとも筆者の肉眼では、ネオワイズ彗星はまったく見えませんでした。。。
しかし、「やっぱり写りますね、鳥居の右上のほうです」という会話が聞こえ、とりあえずシャッターを切ってみました。

今回、撮影に使ったうちの1台であるSIGMA fp。レンズ交換式の大型デジカメでなくても、デジタルカメラを1台持っていくことをおすすめします。

天体撮影なので、三脚に固定したカメラで撮影するのですが、彗星の位置は目視できていないので、ネオワイズ彗星があるはずの北西方向にざっくりとカメラを向けました。
広角を選び、マニュアル露出(Mモード)で、ピントは見えやすい星を基準に無限遠に。選択可能なもっとも明るいF値、シャッター速度は3秒〜15秒程度、ISO感度は1600〜6400あたりを選択。シャッターを切ります。ここでは、ネオワイズ彗星の位置を特定するのが目的なので、カメラの設定はアバウトでオッケーです。

彗星だけでなく、星景、天文の撮影には必須の三脚。筆者は32mm径という大型で安定感抜群のSLIK カーボンマスター 924PRO Nを愛用しています。

肉眼で探しているときには見えなかったネオワイズ彗星ですが、デジタルカメラで撮影すると、掲載した写真をみてもらうとわかるように、明らかにほかの星々と異なる長い尾を引いた姿で写りました。

写真を撮影すると、ネオワイズ彗星がどこにあるのかもわかるようになるので、そこを凝視すると、うっすらと、それまで見えなかったネオワイズ彗星が視認できるようになるのも面白いところです。それまで、どこにあるのか、まったくわからなかったものが、デジタルカメラで撮影して位置を特定すると、肉眼でも見えてくるのです。

ですので、しっかりとネオワイズ彗星を撮影する気がある場合も、ない場合も、三脚とデジカメを所有するなら持っていき、まずはComet Bookなどのスマホアプリが示す方向を撮影してみることをおすすめします。

肉眼でもうっすら確認(双眼鏡でも観察)

ネオワイズ彗星を撮影する前の筆者のイメージとしては、スマホアプリで現在のネオワイズ彗星の方向を確認、肉眼で視認、双眼鏡で拡大して観察、三脚にデジカメを設置して撮影という手順でした。しかし現実は、スマホアプリで方向確認、デジカメでアバウトに撮影、ネオワイズ彗星の位置を確認、肉眼でうっすらみえるようになったという感じです。

なので、ネオワイズ彗星の位置の特定には、スマホ→デジカメというモニター越しの観察が簡単ということになるのですが、とはいえ、肉眼や双眼鏡などの光学機器のみを介した観察は感動もひとしおです。筆者はそのために、野鳥の観察などに使っている、手ぶれ補正機構付きの「Kenko VCスマートコンパクト」(8倍×21)を持っていきました。肉眼ではぼやっとしているネオワイズ彗星が、かなりはっきりとモニターなどを使うことなく観察できるのは感動的でした。本格的なものでなくても、コンサートやスポーツ観戦など際に使っていたという双眼鏡があれば、もっていくことをおすすめします。

筆者がネオワイズ彗星観察の際に持っていったKenko VCスマートコンパクト 8倍×21です。デジカメなどに比べて直接見ているイメージが強く感動しました。

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2020-07-21 12:08

美しく撮影するためのコツ

CanonEOS 6D Mark II/Irix 15mm F2.4 Blackstone/15mm/マニュアル露出(F2.4、15秒)/ISO 8000/WB:色温度指定・3,800K 15mmの超広角で撮影した1枚です。ネオワイズ彗星は海中に立つ鳥居とほぼ変わらない低い位置に出ているのがわかります。

ネオワイズ彗星を観察しての、もっとも印象的なポイントは、肉眼などで観察するよりも、デジカメで撮影するほうが見つけやすかった、という点でした。筆者は天文写真の専門家ではなく、ときおり星景写真の撮影する程度ですが、5,000年に一度というシャッターチャンスを撮影しておきたい、という初心者に、簡単なアドバイスをさせてください。

(1)RAWデータが撮影できるカメラではRAW+JPEG

(2)露出モードはマニュアル露出「M」モード

(3)ピント合わせはマニュアルフォーカス(MF)で明るい星に合わせる

(4)ホワイトバランス(WB)は色温度指定(4,000Kくらい)や太陽光

(5)絞り値(F値)はもっとも数値の少ない明るい値に

(6)シャッター速度は3〜15秒程度で

(7)ISO感度は機種にもよるが1600〜12800くらいまで

(8)撮影した画像の明るさをみてシャッター速度とISO感度を調整

いまは意味がわからなくても、5,000年に一度のシャッターチャンスであるネオワイズ彗星を撮影するなら、カメラに「RAW+JPEG」の機能があるカメラなら、RAWとJPEGの両方を撮影してください。RAWデータはあとから各種設定の変更ができます。詳しくは「RAW現像」などでWEBを検索すると、さまざまな情報が得られると思います。

撮影モードは、マニュアル露出、ほとんどのカメラで「M」と書かれたモードにしてください。絞り値(F値)とシャッター速度が自由に設定できます。

ピント合わせは、マニュアルフォーカス(MF)が選べるカメラではMFを選び、ほかの明るい星を使って、無限遠にピントを合わせます。

ホワイトバランスは、色温度指定が可能なカメラでは4,000K前後が筆者の好みですが、色温度指定ができない場合は、太陽光などを選択するとよいでしょう。

以上の設定は、一度きっちりと設定すると、その後は固定でも構わないのですが、難しいのが絞り値(F値)とシャッター速度、ISO感度での画像の明るさ調整です。

こだわりはじめると切りがないのですが、F値は、選択できるもっとも明るい値(数値の小さな値)、シャッター速度は10秒程度で、ISO感度は1600あたりからはじめてみるとよいでしょう。

撮影した画像が暗ければ、ISO感度を上げて大きな数値し、明るければ下げて小さな値にし、撮影した画像を背面モニターで確認して最終的な明るさを決定します。暗い場所で撮影していると、背面モニターでの画像が明るく感じる傾向にあるので、ちょっと明るすぎるかな、と思う程度の画像まで撮影しておくことをおすすめします。

また、撮影時はカメラをしっかりと三脚で固定しておきましょう。シャッター速度を遅くすると同じISO感度でも明るい画像を得られますが、15秒以上になると彗星以外の星も地球の自転の影響などで大きく動いてしまうので15秒程度までがおすすめです。

まとめ

SIGMA fp/SIGMA 50mm F1.4 DG HSM| Art/50mm/マニュアル露出(F1.4、10秒)/ISO 4000/WB:色温度指定・3,800K 多くの方が持っているであろう50mmの標準単焦点レンズで撮影したネオワイズ彗星です。

5,000年に一度のチャンスをぜひ体験してほしい

徐々に暗くなってしまうものの、高度が上がるため、北海道などの緯度の高い場所だけでなく、東京でも7月末から8月頭あたりまで楽しめる予定だというネオワイズ彗星。次に観察できるのは5,000年以上先ということなので、ぜひこの機会の多くの方に楽しんでほしい天体ショーです。

筆者は職業柄、撮影したいという気持ちが強くなってしまうのですが、純粋に観察したいという方でも、お持ちであればデジタルカメラと三脚を持っていくことをおすすめします。実際にスマホアプリで位置を特定していても、彗星探しがほぼはじめての筆者にはネオワイズ彗星が視認できず、デジタルカメラで撮影してみてはじめて、位置がわかり、双眼鏡や肉眼でも楽しめるようになりました。また、せっかくデジタルカメラと三脚を持っていくなら、5,000年に一度のチャンスを美しく撮影するのもおすすめです。

ちなみに、記事冒頭のイメージ写真は、SIGMA fpに標準単焦点レンズのSIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Artを装着して撮影しています。筆者が撮影しただけでも15mm、50mm、100mmとさまざまな焦点距離のレンズで楽しめるネオワイズ彗星を、この夏の思い出に撮影してみてはどうでしょうか。
お子さんといっしょなら二度とない夏の思い出や夏休みの自由研究などにもなると思うわけです。

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齋藤千歳(フォトグラファーライター)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9㎡の仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。北海道の美しい風景や魅力を発信できればと活動中。

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