誰もがいくつかは持っているホクロ。そのホクロから太い毛が生えてくることはありませんか?「ホクロから生える毛は幸運の印、縁起が良い」という人もいれば「気になるので抜いている」という人も。正しい処置のしかたはあるのでしょうか。肌と爪のクリニック院長・野田弘二郎先生に伺いました。【解説】野田弘二郎(肌と爪のクリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

野田弘二郎(のだ・こうじろう)

1967年、熊本県天草市生まれ。91年、久留米大学医学部卒業後、昭和大学形成外科へ入局。全国の中核病院での勤務の傍ら、国際医療NGOとして活動。パリ第7大学サンルイ病院で微量血管外科研究。2009年より現職。日本形成外科学会専門医。皮膚腫瘍外科指導専門医
▼肌と爪のクリニック(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

なぜ「ホクロ毛」は太いのか

ホクロから太くて長い毛が生えているのを、見たことがあるでしょう。ホクロから生える毛を縁起の良い「福毛」と呼んで大事にする人もいれば、「気になるので、伸びたらすぐ抜く」という人もいます。

そもそも、なぜ、ホクロから太い毛が生えるのでしょうか。

「ホクロから毛が生える」といいますが、正しくは、「もともと毛穴のあった場所にホクロができて、そこから毛が生えている」という状態です。

ホクロは、母斑細胞という、メラニン細胞が変化した細胞が増殖してできるものです。医学的には「色素性母斑(しきそせいぼはん)」と呼ばれています。

皮膚の表皮の最下層には、基底層があります。この周辺に母斑細胞が増えたものが、いわゆるホクロです。

特に、真皮の深いところでホクロの細胞が増えると、年齢とともにじわじわ盛り上がって表面に飛び出し、「男はつらいよ」の寅さんのようなホクロになります。

画像: なぜ「ホクロ毛」は太いのか

さて、ホクロが毛穴のところにできると、そこから生えてくる毛は他の体毛に比べて、黒々と太く、長く伸びるので、非常に目立ちます。

これはなぜでしょうか。

ホクロは元来、皮膚の細胞分裂がとても活発です。毛穴の部分は、表皮が井戸のように落ち込んでいます。その井戸の内壁に母斑細胞が増えると、単位面積当たりの細胞数が非常に多くなり、血流も増加します。その結果、毛を作る細胞に酸素と栄養がたくさん届くため、毛が太く長くなるのです。

「ホクロ毛」は抜いてもいいのか

このように、ホクロから出ている毛は太くて長く、目立つので、抜きたい気持ちはよくわかります。しかし、ホクロはあまり刺激しないほうがいいといわれています。

1本でも毛を抜くと、痛みを感じるでしょう。これは皮膚にとっては、非常に大きな刺激となります。

ホクロへの刺激が慢性的に続くと、皮膚ガンの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)に変化することが知られています。例えば、顔のホクロをヒゲ剃りのときにカミソリでくり返し傷つけていたり、爪でひっかく癖があったり、といったことです。

日本の場合、足の裏や爪など、ふだん慢性的に刺激を受けやすい部位や、けがをしたところなどに悪性黒色腫が発生する例が多く見られるため、外的刺激も危険因子の1つと考えられています。
出典:▼国立ガン研究センター ガン情報サービス

悪性黒色腫は、日本人には少ないガンなのでさほど神経質になる必要はありませんが、盛り上がったホクロは、ただでさえ刺激を受けやすくなっています。毛を抜くなど、あえてホクロを刺激することなどは、しないほうがいいでしょう。

どうしても毛が気になるのでしたら、ハサミで切ることをお勧めします。このときも、皮膚を傷つけないように十分注意してください。

ホクロが痛い

「ホクロが痛い」という症状で受診されるかたもいます。「大変な病気ではないか」と心配になるようです。

ホクロは通常、痛みを感じることはありませんが、ホクロある場所の毛穴にバイ菌が入って化膿すると、ニキビのような痛みが出ます。毛根を包んでいる部分に生じる感染症で、毛嚢炎(もうのうえん)といい、もちろんホクロ以外の皮膚にも起こります。痛みや化膿がひどい場合は、抗生物質の外用や内服などで治療します。

毛嚢炎は、毛を抜くことで起こりやすくなります。そういう意味でも、ホクロの毛を抜くのはやめたほうが賢明です。

ホクロに似たガンもあるので要注意

ホクロには、平らなもの、盛り上がっているもの、色が薄いもの、黒いものなど、いろいろなものがあります。なかには悪性の疑いのあるホクロもあります。

次のような特徴があったら、一度病院(皮膚科か形成外科)を受診することをお勧めします。

直径10㎜を超えて大きい

ホクロの縁がギザギザしたり、ぼやけたりしている

形がいびつで左右が非対称

色むらがある、色素の一部が染み出している

出血を伴う

半年で倍になるなど急速に大きくなる

画像: ホクロに似たガンもあるので要注意

ホクロを取りたい

「ホクロを取りたい」という希望で受診される患者さんも、少なくありません。

「見た目が気になる」という人もいれば、「じわじわ大きくなるホクロが不安なので取ってしまいたい」というかたもいます。

また、ホクロを取る際に、「念のために悪性かどうかを調べたい」という要望も多く寄せられます。

先ほど、日本人には悪性黒色腫は少ないと書きましたが、悪性黒色腫以外にもホクロに似た皮膚ガンがあるので、切除のついでに病理検査を受けておくと安心です。

医師が診察の結果から病気を疑ったら、病変部の細胞を取って、悪性か良性かを調べる病理検査を行います。この場合は、健康保険を使って検査・治療を受けることができますが、単に「見た目の悩み」で切除する場合は、健康保険の適用にはなりません

また、美容外科や美容皮膚科などでは、ホクロを取る治療にレーザーを使用するところがあります。レーザーは病変部を焼き飛ばしてしまうので、病理検査は受けられません。さらに、おおむねホクロと同じの大きさの瘢痕(傷跡)になるので、必ずしも切除手術よりきれいに仕上がるとは限りません。

ホクロを取る際には、病理検査を行ってくれて、ホクロの場所によっては、傷跡が目立たないように切除してくれる「形成外科」を受診するといいでしょう。

ホクロから生える太い毛の処理に悩んでいるかたは、ガンの検査を目的に切除を受ければ、毛の悩みもガンの心配も解決し、一石二鳥です。

選択肢の一つとして、考えてみてください。

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