今や社会現象となっているアニメ「鬼滅の刃(きめつのやいば)」。原作漫画の発行部数は累計1億部を超え、10月16日に公開された映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、公開10日間で約108億円を超える興行収入となっています。

執筆者のプロフィール

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河嶌太郎(かわしま・たろう)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。Yahoo!ニュース個人では「河嶌太郎のエンタメ時報」を執筆、オーサーコメンテーターとしても活躍中。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、家電、ガジェット、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。
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「鬼滅の刃」とは?

「鬼滅の刃(きめつのやいば)」は、週刊少年ジャンプで連載されていた漫画が原作で、大正時代を舞台にした作品です。ただ、現実の大正時代とは異なり、「人食い鬼」が夜な夜な跋扈する世界設定で、ジャンルで言うと和風ファンタジーと言えます。内容としては、主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)の家族が鬼に殺され、そして鬼にされてしまった妹・禰豆子(ねずこ)を人間に戻すため一緒に旅に出るという物語です。

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テレビアニメが2019年4月から9月にかけて放送され、さらに20年10月16日から劇場版の公開が予定されています。原作は2020年5月18日に発売された週刊少年ジャンプ24号をもって完結しました。

一時は同誌の代表作「ONE PIECE(ワンピース)」を超える単行本の売り上げとなり、作品の主題歌「紅蓮華(ぐれんげ)」はCDの販売数とダウンロード数を合わせて100万を超え、ミリオンヒットとなりました。歌い手の女性ボーカル・LiSA(リサ)は、2019年のNHK紅白歌合戦にも出場しています。

リアルへの経済効果も

“リアル”への経済効果がすさまじいのも「鬼滅の刃」の特徴です。劇場アニメの「無限列車」にあやかり、JR九州では臨時列車「SL鬼滅の刃」を熊本~博多で運行しています。「鬼滅の刃」原作者・吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏の出身地とされる福岡県を走り抜けます。

JR東日本も「鬼滅の刃×SLぐんま~無限列車大作戦~」と題するコラボイベントを10月9日から12月31日にかけて実施しています。駅弁「峠の釜めし」で知られる群馬県安中市にある企業「おぎのや」と、同じく安中市にある体験型鉄道テーマパーク「碓氷峠鉄道文化むら」、そしてJTBと協働し、一大観光プロモーションが展開中です。JR九州では切符が“1秒”で完売するなど、「鬼滅」の社会現象ぶりがうかがえます。

さらにこうしたコラボ展開は、お菓子にも及んでいます。大手菓子メーカーのロッテは、「鬼滅の刃」のキャラクターがパッケージに描かれたボトルガム「鬼滅の刃デザインボトル」を9月15日から発売しています。そして同社の40年以上の看板商品となっているチョコレート菓子「ビックリマンチョコ」もコラボが決定しており、「鬼滅の刃」とのコラボ商品「鬼滅の刃マンチョコ」を11月3日から販売する予定です。

「聖地巡礼」にも波及

実は「鬼滅の刃」は、アニメの舞台を旅する「聖地巡礼」においても影響を及ぼしています。作中では、東京・埼玉・山梨の3都県にまたがる「雲取山」や、東京・浅草などの実在する地名も一部登場しますが、基本的には作中の舞台は架空のものが描かれています。

実在する場所がないにもかかわらず、「聖地」として盛り上がる場所があるのが特徴です。一つが、福岡県太宰府市にある「宝満宮竈門神社(ほうまんぐうかまどじんじゃ)」です。主人公の「竈門炭治郎」の「竈門」つながりであるという点や、原作者の吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さんが福岡県出身とされることなどから、大勢のファンが神社を訪れています。

他にも九州には他にも「竈門神社」という名前の神社があります。大分県別府市にある八幡竈門神社(はちまんかまどじんじゃ)です。社格や神社の大きさなどは「宝満宮竈門神社」よりも下がりますが、神社に伝わる伝承などが「鬼滅の刃」の世界に近いのが特徴です。

画像: 「生生流転」の竜に似ているとされる、八幡竈門神社本殿の天井にある竜の絵(筆者撮影)

「生生流転」の竜に似ているとされる、八幡竈門神社本殿の天井にある竜の絵(筆者撮影)

作中とゆかりが深い八幡竈門神社

例えば、「八幡竈門神社」のすぐ近くには血のような真っ赤な温泉で知られる「血の池地獄」があります。他にも「かまど地獄」など、「別府地獄めぐり」と呼ばれる名勝地があります。「地獄」と名前がついているだけあって、「鬼」との結びつきも非常に強い場所です。

神社の社殿にも本編と似たものがあります。本殿の天井に竜の絵が描かれているのですが、その竜のデザインが、主人公の炭治郎や「水柱」の冨岡義勇が使う技である、「生生流転」で登場する竜とそっくりというものがあります。他にも、「竈門神楽」という、ヒノカミ神楽に似た火の神を祭る神楽が毎年大みそかから元旦にかけて舞われます。

さらに神社に残されている似た伝承が、「鬼が造った九十九段の石段」です。昔、毎晩人食い鬼が出没していたところ、八幡竈門神社にまつられている八幡の神様が「一晩で百段の石段を作れなければ今後里にでてきてはならぬ」と人食い鬼に約束をさせました。それで人食い鬼が九十九段まで石段を作ったところ、夜が明け日の光が差したことで鬼が驚いて逃げ、以降、人食い鬼が出なくなったという伝承です。「鬼滅の刃」でも、日の光を浴びるとどんな強い鬼でも死んでしまう設定になっています。このように、八幡竈門神社には作中の設定と似た伝承が数多く残されているのです。

まとめ

こうした「鬼滅の刃」に近い伝承が残されていることから、八幡竈門神社を好むファンもいるようです。ただ、九州の外から訪れるようなファンの場合、福岡空港などに降り立ち、その日の昼間はそのまま太宰府市に行き、太宰府天満宮と宝満宮竈門神社を参拝。その後鉄道やバスやレンタカーなどで、別府市に向かい別府の温泉宿などに宿泊し、翌日に八幡竈門神社を参拝するファンも増えてきているようです。

新たな観光ルートにも

このように「鬼滅の刃」によって、福岡県の太宰府と大分県別府市という、今まであまり直接結びつかなかった二大観光地を結びつける現象が起こっています。特に今では「Go Toトラベルキャンペーン」によって、観光への需要が高まっています。旅行会社の中には、この2ヶ所をめぐる観光ツアーも現在検討がされているようです。意外なところから点と点を結ぶ役割を果たしているのも、「鬼滅の刃」の面白さだと思います。

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