【コロナ禍で急増中】キッチンカーで店舗経営の固定費を削減!一等地に出店するチャンスをもつモビリティの可能性

グルメ・レシピ

キッチン機能を小型トラックに搭載した「キッチンカー」が急速に増えてきている。そしてコロナ禍となり、固定店舗と比べると3密を避けたテイクアウトによって感染リスクが低く、従業員の雇用確保という観点からもキッチンカーを取り入れる飲食事業者が増えてきた。また、固定店舗では大きなネックとなっていた「高い家賃」もなくなり、マンションの下や広場に集まることによってミニ・フードフェスの楽しさを提供することが出来る。この事業の先駆けとなる株式会社Mellow代表、森口拓也氏への取材から、キッチンカーの動向をまとめた。

世界中で活況の「キッチンカー」

今、「キッチンカー」の世界が活況を呈している。ちなみにキッチンカーという名称は日本の造語で、本場のアメリカでは「フードトラック」という。しかしながら、キッチンカーの方が車の用途や構造が分かりやすく、名称として定着してきている。

モビリティ事業の先駆け 株式会社Mellow

日本でこの管理・運営会社の先駆けであり最大手となっているのが株式会社Mellow(本社/東京都千代田区、代表/石澤正芳・森口拓也)である。

同社が提供するサービスはホームページにこう記されている。「モビリティの機動力を生かして『必要なサービスを』『必要な時に』『必要な場所へ』お届けするプラットホーム事業を展開しています。」

「モビリティ(mobility)」とは、「動きやすさ」「可動性」「移動性」という概念だ。消費空間が、百貨店とか商業施設という大きな箱が担っていたものとは対極にある考え方だ。

同社はキッチンカー業界や空地活用に精通する石澤正芳氏が進めてきた事業を基盤に2016年2月に設立し、ITの専門家である森口拓也氏、ファイナンスやバックオフィスに詳しい山本英人氏が参画し、現在に至る。

キッチンカー事業者支援のスタンス

ユーザー目線でのキッチンカー体験が素晴らしかった

創業に至る状況を代表の森口氏がこう語る。「会社が立ち上がったのはお客様目線でのキッチンカー体験が素晴らしいものだったから。冷めた弁当を持ってコンビニのレジに並んでいるのとは全く違って、ニコニコして並んでいる人たちの顔色が全く違っていたからです」

Mellow2人代表の一人、森口拓也氏。学生時代にIT企業を立ち上げたIT分野の専門家である。

そこでキッチンカーの状況を調べたところ、市場は大きく伸びる感覚があった。また、当時はITが使われていなかったことから、「キッチンカー×ITで生み出される価値は限りなく存在し、これをうまく引き出すと事業領域も増えていく」と確信し、現在の事業をスタートした。

当初はキッチンカー事業者にITシステムを提供することを事業としていたが、それぞれのオペレーションがまちまちであったことから限界を感じるようになった。そこで「キッチンカー事業者はどんなことに困っているのか」という観点に立ち、ヒヤリングを重ねていった。

出店する場所を増やしキッチンカーも開発

結果分かったことは「出店する場所がなかなか出てこない」ということ。そこで不動産ベロッパーに営業をして、だんだんと場所が増えるようになった。

こうして「キッチンカー事業者支援」というスタンスが出来上がり、「しっかりとした車を届ける」という発想が生まれた。当初は中古車の軽トラックを入手して自分でキッチン機能をつくるということが一般的で、車検の際に不合格になることが多々あった。そこで、トヨタグループとディスカションを重ね、業務提携をしてMellow仕様のキッチンカーを開発し、車のリースも行うようになった。車は「タウンエース」がベースで基本的なキッチン機能が付いて価格は650万円程度。残価設定型ローンで5年リース、初期費用が96万円で、車検や保険料、営業場所確保等のサポートを含め月額8万5000円となっている

従来のビルの空きスペースとキッチンカーとのマッチングが、さまざまなスペースや分野へと拡大している。

さらに「キッチンカーの開業支援、開業後のサポートを行うキッチンカーのパートナー」を標榜し、継続的に売上を上げていくコツをセミナーや個別コンサルティングで伝えている。

個店の飲食店が一等地で輝く

昨年コロナ禍となりキッチンカーの需要が増加するようになり、同社のモビリティビジネス・プラットフォームである「SHOP STOP」のフードトラックの登録店舗数が1100店舗を超えて、出店場所は390台を超えた(2021年3月末現在)。

『PRtimes』でMellowを検索すると、「住友生命と業務提携」「福岡市中央区と親不孝通りエリアまちづくり協議会と連携」「東京都世田谷区と連携」「山口県の移動型アンテナショップが稼働」「東京建物グループ管理のマンションに本格導入」「駐車場予約のakippaと提携」等々、ほぼ1週間ごとに新しい取り組みがリリースされている。まさにキッチンカー業界のリーディングカンパニーである。

個店それぞれのクリエイティビティを街の中に残す

森口氏はこう語る。「飲食の業界はクリエイティビティが価値の源泉にあると思っています。つまり、大手数社で70%くらいのシェアを持つということは起こり得ないということ。個店それぞれの輝いているクリエイティビティを街の中に残すことは大事な論点です。これが都市への一極集中現象によって賃料はものすごく上がり、チェーン化比率が高くなり、個店がなかなか入り込めなくなる。そういった文脈に対してモビリティを通じて、個店が一等地で輝く環境をつくっていくことは非常に重要だと考えています」

2020年10月1日より、三菱地所コミュニティが展開するマンションの敷地内に出店している。

「われわれのビジネスモデルは、『1等地だと家賃が高いですよ、郊外に行くと安くなりますよ』といった不動産のプライシングはやっていない。固定費や賃料を設定せず、あくまでも、その場所で売上が上がったらたくさんロイヤリティをいただくし、低いとそれに準じます。この仕組みで一等地に個人が出店できるようになる。この結果、個人のクリエイティビティはますます輝くことになり、街は豊かになる」

森口氏の談話は実にロジカルである。森口氏は「キッチンカーの業界は去年拡大フェーズに入ったという認識をしている」ということだが、それはビジネスのパターンが見えてきたからであろう。

さまざまな移動店舗の可能性を探る

さて、固定店舗とキッチンカーは生産性の観点からどのように捉えるとよいのだろうか。

森口氏はこれまでの経験則から、この比較としてふさわしいものは「固定店舗1つ」と「セントラルキッチン(CK)1つキッチンカー3台」と考えるようになった。それは同じ人員数で生産性を図っているからだ。現状、キッチンカー3、4台を運営している事業者はマジョリティではないが少なからず存在していることに着眼している。

キッチンカー1台が目標とする月間売上は100万円。ここにオペレーションを仕組み化すると、アルバイトが1人で運営できるようになる。営業時間はランチタイム限定、最近では夜にマンションの前で営業してトップラインをより上げていく事例も見られている。

「固定店舗1つ」と「CK1つにキッチンカー3台」と比較すると、カバーできる商圏は後者の方が広域であることが明らかである。またCKではキッチンカーが稼働している時間帯にゴーストレトランを営業することが出来る。

2020年6月21日、改正卸売市場法の施行に伴い新たな業態にチャレンジする豊洲市場仲卸事業者をサポート。

同社では飲食以外の移動店舗も計画している。お客様目線で考えた時に何が一番素敵な姿かと考えて、「うちのマンションに毎日いろいろな店ができて楽しいじゃないか、といった状態をつくりたい」と森口氏は語る。

飲食に限らずさまざまな店舗がモビリティによって顧客ところに行く。ここでは作り手が目の前にいて、実際に接客をして提供してくれる。これはECとは全く違う体験である。

住友生命保険相互会社と提携し、2021年3月下旬からウエルネス体験を通じて保険との出合いを創出する「インシュアランスモビリティ」の実証実験を開始した。

このように「何でもない場所が嬉しい場所に変わる」ということは、商売をする人もそれを受け止める消費者にとっても過去のさまざまな呪縛から解放してくれることにつながることであろう。

執筆者のプロフィール

取材・文・撮影◆千葉哲幸(フードサービスジャーナリスト)
柴田書店『月刊食堂』、商業界(当時)『飲食店経営』とライバル誌それぞれの編集長を歴任。外食記者歴三十数年。フードサービス業の取材・執筆・講演、書籍編集などを行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年)などがある。
▼千葉哲幸 フードサービスの動向(Yahoo!ニュース個人)

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