自宅のWi-Fiを使っていると急に遅くなったり、まったく繋がらなくなったりなど、予期せぬトラブルに遭遇する場合がある。原因はWi-Fiルーター、それともパソコンやスマホ?──気になる点は色々あっても、そこから原因を突き止めるだけでも、ビギナーには非常にハードルが高い。そんなときに慌てふためくことがないように、Wi-Fiトラブルの対処法をしっかりマスターしておこう。

【環境トラブル編】Wi-Fiの周波数帯や家電などが影響している場合も

機器や設定には問題がないのに、どうしてもWi-Fiがつながらない──そんなときはWi-Fiを使っている環境に原因がないかどうかチェックしてみよう。

Wi-Fiは電波の一種のため、周波数帯の混雑や障害物の影響など、電波の性質に起因するトラブルとも無縁ではない。さらに、通信状態や接続台数など、データ通信の利用状況、プロバイダー側の不具合が原因となっている可能性もある。

機器や設定関連のトラブルと違って、環境問題は根本的な解決が難しいが、それでも適切な対応をすることで、いくらか問題を緩和できるはずだ。

Wi-Fi周波数帯の干渉

Wi-Fiのワイヤレス通信では、基本的に「2.4Gヘルツ帯」と「5Gヘルツ帯」の電波を利用している。このうち2.4Gヘルツ帯の周波数帯は、コードレス電話の無線通話のほか、電子レンジで用いる電磁波など、Wi-Fi機器以外の機器でも多く利用されているため、Wi-Fiと干渉が起きやすい

もし、自宅で2.4Gヘルツ帯と干渉しそうな家電を使っている場合は、いったん使用を控えて、その間にWi-Fiが問題なく使えるかチェックしよう。使用を取り止めたタイミングはWi-Fiが正常に使えるなら、その家電が電波干渉を引き起こしている可能性が高い。

こうしたときは、家電との電波干渉のない5Gヘルツ帯のWi-Fiに切り替えて使用するのが最善。周波数帯の切り替えは、通常、Wi-Fiルーターの設定から行うことが可能だ。

もし、Wi-Fiルーターが2.4Gヘルツ帯しか使えないのなら、Wi-Fi利用時にはなるべく問題のある家電の利用は控えるようにするほかない。

一方、Wi-Fiルーター自体も電波干渉とは無縁ではない点にも留意したい。Wi-Fiルーターでは周波数帯を複数のチャンネルに小刻みに分割して利用することで、電波干渉が起きにくいように設計されているが、それでもマンションやアパートなど、狭い範囲に複数のWi-Fiルーターが乱立しやすい状況では、さすがに複数のチャンネルをもってしても干渉が起きやすくなる。

チャンネル干渉が疑われる場合にも、Wi-Fiルーターで利用する周波数帯を5Gヘルツ帯に変更するのがベスト。2.4Gヘルツ帯と比べて、5Gヘルツ帯のWi-Fiはチャンネル干渉が生じにくい仕組みを採用しているため、ルーター同士の電波干渉を緩和する効果を期待できるはずだ。

画像: 電子レンジやコードレス電話など、便利な家電がWi-Fiがつながりにくい原因になっている場合も。Wi-Fiルーターの周波数帯を5Gヘルツ帯に切り替えるなど、うまく共存できるように工夫しよう。 panasonic.jp

電子レンジやコードレス電話など、便利な家電がWi-Fiがつながりにくい原因になっている場合も。Wi-Fiルーターの周波数帯を5Gヘルツ帯に切り替えるなど、うまく共存できるように工夫しよう。

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距離が遠い・障害物が多い

電波は伝送距離が遠いほど強さが減退していく。当然、Wi-Fiも電波の一種のため、Wi-Fiルーターとまでの距離が遠いほど、つながりにくくなるうえ、接続できたとしても通信速度は遅くなってしまう。さらに、壁や家具などの障害物も、電波が届きにくくなる原因となりやすい。

Wi-Fiルーターと端末が離れているなら、距離や障害物がWi-Fiのつながりにくさを招いている可能性が濃厚。従って対策としては、Wi-Fiルーターをなるべく端末の近くに設置するのが最も効果的だ。

部屋や家具の間取り上、設置場所を変更するのが難しい場合は、利用する周波数帯を「2.4Gヘルツ帯」に切り替えるのも手だ。というのも、5Gヘルツ帯と比べて2.4Gヘルツ帯には「障害物に強く、電波が回り込みやすい(遠くまで届きやすい)」という特徴があるためだ。

これでも改善しなければ、やはり設置場所の変更や、Wi-Fiルーターの買い替えなど、抜本的な対策が必要となる。この際、ある程度の費用は掛かるが、一番のオススメは「メッシュWi-Fiルーター」の導入。メッシュWi-Fiルーターなら、複数台のアクセスポイントを設置することで広範囲のWi-Fiネットワークを構築できるので、距離や障害物に起因する問題を解決しやすいはずだ。

画像: 広範囲まで電波を届けられるメッシュWi-Fiルーターなら、距離や障害物の問題を回避しやすい。 www.jp.netgear.com

広範囲まで電波を届けられるメッシュWi-Fiルーターなら、距離や障害物の問題を回避しやすい。

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接続台数が多い

スマホやパソコンはもちろん、最近ではテレビや家電、セットトップボックスなど、Wi-Fi接続に対応した機器が日増しに増加している。そんな背景もあって、自宅でもWi-Fiにつなげる機器がどうしても増えていきがちだが、実は、Wi-Fiルーターには接続端末の「推奨台数」がある。

この台数を超えて端末を接続すると、速度が落ちたり、つながりにくくなったりなど、Wi-Fiルーター利用時になにかしらの支障が出る可能性がある。

推奨接続台数はWi-Fiルーターのスペックによって異なるが、ミドルレンジ級のモデルなら10台程度といったところ。Wi-Fiの利用に不具合がある際に、10台以上の端末を利用しているのなら、多すぎる接続台数がトラブルを引き起こしている可能性も疑ってみるべきだろう。

画像: Wi-Fiルーターの接続台数がわからないときは、メーカーのWEBサイトやカタログなどをチェックしてみよう。端末数や人数など、大体の目安が掲載されているはずだ。 www.buffalo.jp

Wi-Fiルーターの接続台数がわからないときは、メーカーのWEBサイトやカタログなどをチェックしてみよう。端末数や人数など、大体の目安が掲載されているはずだ。

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大量のデータ通信を利用

Wi-Fiのつながりにくさとは直接関係はないが、固定回線本来の速度に比べて、Wi-Fiのスピードがあまりに遅いと感じるときもあるかもしれない。Wi-Fiルーターが古くて通信速度が遅い場合もあるだろうが、最大通信速度が高速な、最新のルーターを使っていて速度に支障が出るのなら、いずれかの端末が大量のデータ通信をしていて通信が逼迫している可能性もある。

通信が逼迫するおもな原因は、家族の誰かが頻繁に巨大なファイルをダウンロードしていたり、高解像度の動画配信を絶えず鑑賞していたりなど、人為的な原因がほとんど。まずは使用している端末や家族のネット利用などを確認して、おおよそのデータ通信量を把握してみるといいだろう。

プロバイダー側の障害

ADSLにしても光回線にしても、固定回線は品質を保つために事業者側で定期的にメンテナンスを実施している。大抵は、契約者に配慮してユーザーの少ない深夜に行われているが、場合によっては半日程度の長時間を要する場合も。

メンテナンス中に回線がまったくつながらなくなるケースは稀ではあるが、通信速度が落ちるなど、多少の不便は強いられる。こうしたメンテナンス作業を把握していないと、通信速度の低下を自宅のWi-Fiトラブルと勘違いしても仕方がない。

また、メンテンナンス以外にも、プロバイダーや固定回線側でなにかしらの障害が発生している可能性もある。通信速度の低下のほか、最悪の場合、通信ができなくなるなど、障害の内容はさまざま。簡単に復旧する場合もあれば、長時間を要するケースもある。

こうしたメンテンナンス・障害情報は、プロバイダーや回線事業者の公式Webサイトに掲載されている場合がほとんど。Wi-Fiトラブルの原因に心当たりがないときは、念のため、こうしたメンテナンス情報も当たってみたほうがいい。

画像: 固定回線のメンテナンス・障害情報は、事業者の公式サイトで閲覧できる場合がほとんどだ。 www.so-net.ne.jp

固定回線のメンテナンス・障害情報は、事業者の公式サイトで閲覧できる場合がほとんどだ。

www.so-net.ne.jp

それでも改善しないときは?

ここまでWi-Fiトラブルの基本的な対策について説明してきたが、残念ながら、それでも問題が解決しないという場合もあるだろう。

そんなときの最終手段として「2つの方法」を紹介する。いずれも少なからずリスクがあるので、自己責任で行ってほしい。

ファームウェアやドライバーの更新

デジタル機器では、潜在的な不具合を解消するため、定期的に「改善プログラム」を配布していることが多い。こうした改善プログラムは、Wi-Fiルーターなら「ファームウェア」、スマホやパソコンなら「アップデートファイル」という名称で呼ばれ、機器にインストールすることで不具合やセキュリティーの脆弱性などを解消してくれる。

Wi-Fiトラブルも機器側の不具合によるものであれば、こうしたファームウェアなどをインストールすることで改善する可能性がある。

さらにパソコンでは、ディスプレイやネットワーク機能、グラフィック描画などの制御に必要な「ドライバー」と呼ばれるソフトがインストールされているが、このドライバーになにかしらの不具合が発生していて動作に支障を出ている可能性もあり得る。

通常、ファームウェアやドライバーは、メーカーの公式Webサイトで最新バージョンを配布している。ただし、いずれも機器側のシステムを変更するもののため、場合によってはインストール後にかえってトラブルが深刻化するケースもある。最悪の場合、機器が起動不可になる場合もありうるので、インストールする前には必ずデータのバックアップをしっかり取っておくこと。

画像: アップデートだけで済むスマホと違って、パソコンの場合、ドライバーの更新もあるのでお忘れなく。 jpn.nec.com

アップデートだけで済むスマホと違って、パソコンの場合、ドライバーの更新もあるのでお忘れなく。

jpn.nec.com

初期化を試してみる

機器の再起動でも動作が改善しないときは、Wi-Fiトラブルが解消する保証はないが「初期化」するという方法もある。ただし、機器を初期化をすれば、当然、アプリやデータ類も完全に消去されてしまうので、あくまで最終手段として考えておきたい。

やむなくスマホやパソコンを初期化する場合は、データ類のバックアップをしっかりと取っておくほか、アプリの再インストール環境もしっかり準備しておくこと。例えば、スマホの場合は必須アプリの入手先をメモしておく、パソコンならインストールメディアやセットアップファイル、シリアルなどを前もって用意するなどしておけば、スムーズに端末をリストアできるはずだ。

まとめ

Wi-Fiトラブルには実にさまざまな要因があるため、問題に見合う適切な処置を講じるのは決して容易ではない。やや面倒かもしれないが、本記事で説明したように、まずは冒頭で紹介した「基本チェック」を行ったうえで、「機器・設定・環境」の3要素から怪しい部分をしらみつぶしに当たっていくのが、一番の早道といえる。

また、意外に見落としがちだが、「料金の支払いを忘れて固定回線が止められた」というケースもある。どうしても不具合の心当たりがないときは、固定回線の支払い状況もしっかりチェックしたほうがいいだろう。

◆篠原義夫(フリーライター)
パソコン雑誌や家電情報誌の編集スタッフを経て、フリーライターとして独立。専門分野はパソコンやスマホ、タブレットなどのデジタル家電が中心で、初心者にも分かりやすい記事をモットーに執筆活動を展開中。



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