暑くなってくると恋しくなる、冷たくてぷるんと喉ごしが良いゼリー。今回、ゼリー作りに欠かせない「ゼラチン」「寒天」「アガー」「ペクチン」について、“比べたがる栄養士”の私・野村ゆきが徹底的に違いを調べてみました。これからの季節にぴったりの「夏野菜のコンソメゼリー」と「フルーツ入り牛乳ゼリー」を実際に作って食べ比べ、固まり方や食感の違い、使い方の注意点などをレポート。それぞれの個性を知って使い分け、ひんやりゼリーをより美味しくいただきましょう!

レシピで検証③
フルーツ入り牛乳ゼリーで比較

最後に、デザートゼリーで比較検証します。栄養士の私は、手軽にカルシウムが摂れる牛乳ゼリーを選びました。さらにビタミン補給も兼ね、生のフルーツを加えたいと思います。選んだフルーツは「キウイフルーツ」です。特に、ゴールドキウイには1個(約80g)あたりビタミンCが112mg含まれ、成人の必要量を1個でクリアできる優秀な食材です。(*5)

(*5)日本人の食事摂取基準(2020年版)、日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとに計算した推定値

フルーツ入り牛乳ゼリーの材料(1人分)

・牛乳:50ml
・砂糖:小さじ2
・キウイフルーツ(ゴールドキウイ): 1/4個
・「ゼラチン」「アガー」「ペクチン(LMタイプ)」:各1g(濃度2%)
・「寒天」:0.4g(濃度0.8%)
・水:5ml(ゼラチンのみ必要)

※前項の砂糖水ゼリーの検証結果から、寒天の濃度のみ2%→0.8%濃度に変更、ペクチンはカルシウムを含む牛乳を使うともゼリー化しやすいためゼラチン・アガーと同じ濃度にしました

フルーツ入り牛乳ゼリーの作り方

キウイは皮をむいて好みの大きさに切り、あらかじめシリコンカップなどの型に並べておく。

下記を参考に牛乳ゼリー液を作り、型に流し込む。牛乳は煮立たせすぎると泡立ったり膜ができたりするので注意しながら温める。

【ゼラチン】あらかじめ水5mlでふやかしておく。牛乳に砂糖を加えて弱火にかけ、沸騰させず鍋肌がフツフツとしたら火を止め、ふやかしたゼラチンを加えてよく溶かし、型に流し入れる。

【寒天】鍋に寒天と牛乳を入れてよくかき混ぜて溶かし、弱火にかけて沸騰状態30秒程度(強すぎないフツフツ状態で煮立たせる)で火を止め、砂糖を加えてよくかき混ぜ、すぐに型に流し入れる。
※一般的には、水と粉寒天を煮溶かした寒天液に人肌に温めた牛乳と砂糖を合わせる方法が失敗が少ないとされています。今回、濃厚な牛乳寒天ゼリーを作りたかったので上記の方法でやってみました。

【アガー】鍋の中で最初にアガーと砂糖とよく混ぜてから牛乳を加え、弱火で温めながらよく溶かし、沸騰直前で火を止め、型に流し入れる。

【ペクチン】鍋の中で最初にペクチンと砂糖をよく混ぜてから牛乳を加え、温めながらよく溶かし、沸騰したら火を止め、型に流し入れる。

キウイ入り牛乳ゼリーの完成です。ここまで「いいとこナシ」だったペクチンも、ゼリーになっています!

画像: ペクチンもしっかり固まった!

ペクチンもしっかり固まった!

「ゼラチン」が固まらない…原因はフルーツ

完成したキウイフルーツ入り牛乳ゼリーで注目してほしいのは、ゼラチンです。ゼラチンは一部が崩れています。これは、キウイフルーツにタンパク質分解酵素(アクチニジン)が含まれているためです。ゼラチンは、動物性タンパク質が原料なので酵素の働きで固まりにくくなってしまうのです。キウイフルーツ以外にも、パイナップル、マンゴー、イチジク、メロンにも、タンパク質分解酵素が含まれ、同じ現象が起こります。また、柑橘類など酸が強いフルーツは、ゼラチンだけでなく、寒天も固まりにくくなることがあります。なお、缶詰のフルーツは加熱済みなので、問題なく使えます。

また、タンパク質分解酵素はゼリーを固まりにくくするだけでなく、苦味のもとになります。キウイフルーツと乳製品(牛乳やヨーグルト)を混ぜて長時間放置すると、牛乳の乳タンパク質(カゼイン)をキウイフルーツのタンパク質分解酵素が分解し、苦味が生まれると考えられています。その苦さは、「なにこれ?苦っ!」と思わず声が出るほど。私も今回、実際に作って食べてみて、想像以上の苦味のパンチ力に仰天しました。

参考までに、生のイチゴ入りの牛乳ゼリーも作ったところ、4種類とも美しく仕上がりました。

画像: ゼラチンの牛乳ゼリーも苦味はなく(むしろ美味しい!)ホッとしました。

ゼラチンの牛乳ゼリーも苦味はなく(むしろ美味しい!)ホッとしました。

萌え断は「寒天」、ぷるぷる感は「アガー」がピカイチ

フルーツ入りゼリーを切った時の断面の美しさ、いわゆる「萌え断」も検証してみましょう。寒天とアガーの断面の美しさが際立ち、ペクチンも健闘しています。ゼラチンはキウイフルーツの酵素が原因で、型崩れを起こしています。

画像: 寒天とアガーの断面の美しさよ!

寒天とアガーの断面の美しさよ!

この「萌え断」検証をイチゴ入り牛乳ゼリーでも試したところ、寒天はフルーツの大小に関係なく美しい「萌え断」が成立します。アガーは、小さなフルーツだとやや離水して型崩れしやすい印象。ゼラチンも、イチゴの場合は型崩れを起こさないので、断面もそれなりに美しく切れました。とはいえ、寒天ほどスパッと切れません。アガーに近い感じです。

では実食です。食感や味の違いを比べてみましょう。

【ゼラチン】既に触れましたが、キウイ入り牛乳ゼリーは苦くて食べられません。イチゴ入り牛乳ゼリーはとても美味しかったです。ぷるるん感、口どけ感も◎。ただ、他の「寒天」「アガー」「ペクチン」と比べると、砂糖の量は同じなのに、甘みが淡白に感じられました。

【寒天】弾力はありませんが、歯切れの良さがとても美味しく感じました。また、4種類の中で甘みを最も強く感じました。これは食べ比べてみないと気づけなかった発見!

【アガー】寒天に近い喉ごしの良さと、ほどよい弾力があり、美味しいです。牛乳のミルキーさは4種類の中で一番感じられ、全体のバランスがとても良いです。

【ペクチン】アガーに近いなめらかさと、アガーよりも強い弾力が楽しめて、美味しいです。砂糖水ゼリー、コンソメゼリーは残念すぎる結果でしたが、牛乳ゼリーはペクチン(LMタイプ)もありです!(ちなみに、LMペクチンと牛乳の相性の良さを応用した商品が「フルーチェ」です)

以上の結果から、フルーツ入り牛乳ゼリーに適しているのは、寒天とアガーだと私は感じました。ペクチン(LMタイプ)も美味しいのですが、ゼリーのためだけにわざわざ調達する必要性は低い気がしました。

ペクチンの活用方法

今回あまり利点が感じられなかったペクチンですが、「フルーツジャム」や「ナパージュ」と呼ばれるフルーツなどの艶出しで、その実力を発揮してくれます。果物にはもともとペクチンが含まれていますが、イチゴやブルーベリーなどペクチン含有量が少ない果物は、LMペクチン(またはHMペクチン)で補ってあげると、ジャムらしいトロミが強くなり美しい仕上がりになります。

画像: LMペクチンで作ったイチゴジャム。ペクチンを10倍量の水で煮溶かしたペクチン液を、果物+砂糖(果物の60〜70%量)で15分程度煮詰めた後に加え、仕上げにレモン汁(大さじ1〜2)を加えたら完成です。

LMペクチンで作ったイチゴジャム。ペクチンを10倍量の水で煮溶かしたペクチン液を、果物+砂糖(果物の60〜70%量)で15分程度煮詰めた後に加え、仕上げにレモン汁(大さじ1〜2)を加えたら完成です。

果物などをみずみずしく演出するナパージュ。最初に作った砂糖水のペクチンゼリーの作り方でOK(砂糖を入れなくても作れます)。

ゼリー本体は「ゼラチン」「寒天」「アガー」いずれかで作り、トッピングのフルーツの艶出しやジャムにペクチンを活用すると、相乗効果が期待できそうです。

ペクチンで作ったイチゴジャムを牛乳に溶かし、アガーで固めてイチゴミルクゼリーを作りました。仕上げにイチゴジャムをトッピング。アガー×ペクチンのコンビネーションゼリーです。

画像: いろんなフルーツで応用できそうです!

いろんなフルーツで応用できそうです!

まとめ

今回の実験結果をおさらいしましょう。

◎透明感のあるゼリーを作りたいときは、アガーかゼラチン
◎夏の持ち寄りデザートなど、持ち歩く場合はアガーか寒天
◎フルーツ入りゼリーで「萌え断」を狙うなら、寒天
◎ペクチンはトッピングやジャムで活用すると、ゼリーの彩り効果が上がる

私のおすすめは、コンソメゼリーなどの料理系ゼリーは「ゼラチン」「アガー」、フルーツを使った甘いゼリーは「寒天」「アガー」です。

似て非なる「ゼラチン」「寒天」「アガー」「ペクチン」。固まる温度や注意点、得意・不得意な食材などの違いを上手に使い分けて、ひんやりデザート作りに役立てていただけたら嬉しいです。

※参考文献:松本美鈴・平尾和子編著『新調理学プラス』光生館,2020、下村道子・和田淑子編著『新調理学』光生館,2018

文◆ 野村ゆき(栄養士・編集ライター)
編集ライター歴25年以上。食と栄養への興味が高じて、栄養士免許と専門フードスペシャリスト(食品流通・サービス)資格を取得。食品・栄養・食文化・食問題にかんする情報を中心に分かりやすくお届けします。今回の記事のために3日連続でゼリーを作って食べ比べをしたところ、寒天やアガーの食物繊維効果でお通じ絶好調でした (苦笑)。

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