【スーパーカブ】独りぼっちの女の子とバイクの物語 緻密な映像美と「余白を描く空気感」が魅力の今期注目アニメ

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今回は、2021年春アニメの注目枠「スーパーカブ」をご紹介します。今期アニメは、お馴染みのシリーズ作からフレッシュで挑戦的な作品まで、バリエーション豊かなラインナップとなっていますが、中でも筆者がピンと来たのが本作の映像美とオフビートな空気感でした。日常系とも少し違った名作の魅力に迫ります。

今期アニメの大注目作!「スーパーカブ」とは?

本田技研が全面協力のアニメ

アニメ「スーパーカブ」は、角川スニーカー文庫のライトノベルを原作とする作品です。

テーマは、「世界一のバイク」とも評され、累計1億台を売り上げた名機スーパーカブ。純文学的なソフトで美しい世界観と、第三者視点を基調とした落ち着いたテンションが魅力のシリーズです。原作はトネ・コーケン氏、キャラクターデザインは漫画「明日ちゃんのセーラー服」でも注目を集める博(ひろ)氏が担当。

アニメ版となる本作は、本田技研全面協力のもと、カブの持つ機能美、舞台となる山梨県北杜市周辺の美しい風景を緻密に描写した、こだわりを感じさせる内容です。作画のクオリティやストーリーテリングの丁寧さは、「ここ数年の作品の中でも出色の出来!」と断言できます。

スーパーカブのあらすじ

ひとりぼっちの女の子と、世界で一番優れたバイクの、小さな日常。山梨県北杜市の高校に通う女の子、小熊。両親も友達も趣味も持たず、孤独で単調な毎日を過ごしていた彼女は、ひょんなことから中古のスーパーカブを格安で手に入れる。

カブを通して友情や冒険が暮らしの中に芽生えはじめ、退屈な日常がグラデーションのように色づいていく過程を描いた物語。

「バイク」と「景観」を重視した圧倒的な映像美

本作の魅力は、登場人物のキャラクター性だけではなく、「何気ない日常の美しさ」を徹底的に追求した映像美にあります。

圧倒的な映像美が魅力。

supercub-anime.com

たとえば、第1話『ないないの女の子』 では主人公・小熊が登場する前の2分弱の間、舞台となる北杜市のノスタルジックな美しい景観だけが、ピアノを基調とした流麗なサウンドと共に描かれています。

導入パートでキャラクターにフォーカスせず、言葉を抜きにして「どんな日常が広がっているのか?」を視聴者に伝える表現力の高さ。普通の日常系アニメとは決定的に異なる、「主役は景観とバイク」という作劇の見事さに、筆者は思わずシークバーを戻して何度もリピートしてしまいました。

コップに飲み物を注ぐ音や目覚まし時計の音、木々の揺れや線路をひた走る電車。実写かと目を疑うほど、日常の何気ない風景が丁寧に描かれています。

スーパーカブの機能美も、本田技研協力のもと完全再現。

supercub-anime.com

また、「世界一のバイク」とも言われるスーパーカブの機能美も、本田技研協力のもと完全再現。駆動音から個々のパーツまで、現実と寸分違わないクオリティに仕上がっています。

本作では通常のアニメとは異なり、キャラクター以外の作画に3Dモデリング技術を導入しています。最新の手法を大胆に取り入れることが、「圧倒的なリアリティ」を実現した理由と言えるでしょう。

日々の営みを丁寧に描いた「アンビエント作品」

ここまで、「スーパーカブ」のすばらしさを、映像美の観点からお伝えしました。

しかし、本作の魅力はそれだけではありません。「余白」や「間」を繊細に切り取り、暮らしの中で一つひとつ築き上げる「何か」を想像させるような空気感が漂っていることが、作品を特別なものに押し上げています。まるでミニシアターで上映される名画のように、視聴後に深い余韻を残す不思議な作品です。

藤井俊郎監督のインタビューによると、セリフの数をあえて絞り、時間の流れや生活のサイクルを出来る限り丁寧に描写することを意識していたそうです。

たしかに、各話でもキャラクター同士の会話は最小限で、過剰な演出はほぼ存在しません。時には劇伴音楽すら無音となり、環境音が主役のように感じるシークエンスも。そうすることが、結果的にリアリティを醸し出し、まるでキャラクターが実在するような雰囲気も感じさせます。

TVアニメ「スーパーカブ」PV第1弾。

www.youtube.com

この作品をジャンル分けするとなると、おそらく「日常系」や「ガジェットもの」辺りになるでしょう。ですが、それではカメラワークや作劇に込められたこだわりを感じ取ることはできません。あくまでも「普通の暮らし」の美しさを描写することを追求した本作は、あえてカテゴライズを行うとすると「アンビエント」になるのでは?と、強く思います。

アンビエントとは、実験音楽家ブライアン・イーノが提唱した音楽のジャンルです。環境音楽とも言われ、音の細かな変化を軸に、空間に雰囲気を添えることを指向した表現方法を指す言葉なのですが、「スーパーカブ」のアプローチは極めてこれに近いのではないでしょうか。引き算の美学とも言える、最小限の演出で構成された繊細さが何よりの魅力です。

空気と地方都市の風景、カブのパワフルなトルク音、日が暮れて夜が来て、また朝が来るサイクル。おぼろげな会話。黙々とレトルト食品を食べる昼休み。そういった「生活の営み」の一つひとつが、オフビートなテンションで丁寧に描かれている本作は、「観るアンビエント」と言っても過言ではありません。

まとめ

アニメ「スーパーカブ」の魅力について長々と解説を重ねましたが、やはり映像美と空気感については「観ること」でしか伝わらないのが正直なところ…。とにかく、まずは1話の冒頭から視聴してみてください。どんな人にも良さが伝わる、路傍の花のような美しい作品です。

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松島広人(フリーライター)

Webディレクターとしてコンテンツの企画・編集・校正・執筆・SEOを担当する傍ら、フリーランスのWebライターとしても精力的に活動。業種・業界を問わず多数のジャンルを手がける。ポップカルチャー・サブカルチャーにも精通しており、幅広い知識を活かしたライティングを得意とする。

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