【Hyperpop(ハイパーポップ)とは】多様性を受け入れた次世代音楽トレンド 押さえておきたい注目曲ベスト3

知識

新興の音楽トレンド、「Hyperpop(ハイパーポップ)」について紹介します。「Hyperpop」とは2019年前後からSpotifyの公式プレイリスト等を経由して定義付けられた新たな音楽ジャンルであり、一塊に「Hyperpop」と総称しても広い意味を持ちます。そこで、筆者が捉える「Hyperpop」の意味や由来、また筆者おすすめの「Hyperpop」の楽曲についても紹介していきます。

次世代の音楽ジャンル・Hyperpop(ハイパーポップ)とは?

Hyperpopとは、2019年前後からSpotifyの公式プレイリスト等を経由して定義付けられた新たな音楽ジャンルです。名前の通りポップ・ミュージックを「超越」したかのような独特のサウンドが特徴で、主に電子音楽やHiphopなどを主軸としつつも、それを誇張するかのようなスピード感・過剰な音圧・キラキラとしたメロディなどを取り入れているイメージの音楽となります。

ほかにも、2000年代頃のロック・サウンドなどを大胆に取り入れたり、ボーカロイドやアニメといったサブカルチャーを前面に押し出したりと、「ポップ」であることを共通項としつつも、ひとつのカテゴリに収まり切らないジャンルレスで自由な音楽であるとも考えられます。

(例…100 gecs『money machine』)

100 gecs – money machine (Official Music Video)

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Hyperpopはどのように誕生した?

前述の通り、ジャンルとしての「Hyperpop」が生まれたのはSpotifyによる同名の公式プレイリストが発端でした。2019年8月の公開以降、世界中の斬新な音楽がメジャー・インディー問わず追加され、プレイリスト全体が次々と更新され続けています。日本からもTohji(トージ)や4s4ki(アサキ)といった新鋭のアーティストの楽曲がクローズアップされ、世界中の注目を浴び始めているようです。

hyperpop

open.spotify.com

では、そのようなジャンルが誕生した背景には、どのようなシーンや作品が存在するのでしょうか?

宇多田ヒカル『One Last Kiss』のプロデューサー・A.G.Cookと「PC Music」の存在

Hyperpopの前進となった音楽ジャンルには多種多様なものが存在し、言ってしまえば「あらゆる音楽の集合体」がひとつのジャンルを形作ったのがHyperpop、といった解釈をしてもよいでしょう。ただ、そういった流れを形作った「起爆剤」のような存在も、確かに存在します。

その一人として世界を股にかける注目のアーティストが、イギリス在住のトラックメーカーA.G.Cook(エージークック)です。2021年を象徴するヒット作となった「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の主題歌である、宇多田ヒカル『One Last Kiss』の共同プロデュースを務めたことでも話題を集めたほか、2010年代からネット上の活動を中心とした音楽レーベル「PC Music」を主催して世界中の注目を集めるなど、ジャンルの火付け役として現在のポップ・ミュージックシーンを牽引し続けています。

宇多田ヒカル『One Last Kiss』

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PC Music自体は、2013年頃よりBandCampやSoundCloudといったDIYな音楽配信プラットフォームを主軸として独自の活躍を見せ、後のHyperpopに連なる要素を持つバブルガム・ベースという独特な電子音楽を創り上げていきました。

同レーベルは、Charlie XCXやSOPHIEといった新鋭のアーティストや、Carly Rae JepsenやOneohtrix Point Neverといった世界的ミュージシャンまで幅広い層のクリエイターと関係しており、今後もますます目が離せない重要な存在と言えるでしょう。

(なお、大変残念なことにHyperpopにおけるアイコニックな存在の一人であったトランスジェンダーの歌姫・SOPHIEは、2021年1月に事故でこの世を去ってしまいました。心から哀悼の意を表します。)

脱・身体性とインターネット、日本の”kawaii”カルチャーとの関係

また、Hyperpopを語る上で無視できないのが、日本発のポップカルチャーからの影響や、インターネットとの密接な関係性です。正直なところ、Hyperpopというジャンルについて音楽的な視点から分類を試みることは大きな意味を持たず、どちらかと言えば精神性やスタンス、ビジュアルイメージなどに共通項が浮かび上がるような枠組みです。

特に顕著なのがQueerであること、つまりはジェンダーレスであることを認め、マイノリティへの理解や多様性を受け入れることを前提とした音楽ジャンルであることでしょう。

故・SOPHIEをはじめ、Hyperpopにおける象徴的存在であるアーティストには、トランスジェンダーを含む性的マイノリティや、心身さまざまな事情を抱える方々が数多く存在しています。

そうした身体性による呪縛からの解放を試みるために多用されるのが「ボイス・エフェクトの多用」や「アーティスト・ビジュアルのアバター化(イラスト・CGイメージ等)」で、それらの源流としてインターネット的文化や技術、そして日本由来の漫画/アニメやボーカロイドといったカルチャーが関係していることも考えられます。

VaporwaveやFuturefunk、SoundCloud RapやLo-fi HipHopなど、2010年代にはさまざまな「インターネット・ミュージック」と呼べるジャンル群が世界中で誕生しましたが、それらの根幹にも日本の2次元的カルチャーやNerd(オタク)的イメージ、ゲーム的感覚などが根付いています。

また、原宿や渋谷などの日本的なポップカルチャーやアニメ的意匠を”kawaii”と総称する向きもあり、それらのさまざまな動きが集約された姿のひとつに「Hyperpop的なモノ」が存在する、とも捉えられるでしょう。

筆者厳選のHyperpop楽曲を紹介していきます!

筆者厳選!Hyperpopを感じる国内外の注目曲

まだまだ新興ジャンルのひとつであり、その正体を正確に掴みきることは難しいHyperpopですが、その雰囲気を感じ取れる楽曲はいくつも存在します。最後に、筆者おすすめの”Hyper”なサウンドが魅力の注目作をピックアップしてご紹介します。

100 gecs『ringtone (remix) [feat. Charli XCX, Rico Nasty, Kero Kero Bonito]』

シカゴのデュオ・ユニット、100 gecsはHyperpopを代表するアーティストとして知られており、2019年に発表したアルバム『1000 gecs』が大きな話題を集めました。本曲はそのリミックス盤に収録されたポップ・ナンバーで、フィーチャリングには現行シーンを代表する若きスターがズラリ。昨今のノリやトレンドを掴む上でも、一度は聴いておきたいキラーチューンです。

100 gecs – ringtone (remix) [feat. Charli XCX, Rico Nasty, Kero Kero Bonito] {VISUALIZER}

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Kabanagu『冥界』

Kabanagu – 冥界

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日本のアーティストでも若手を中心に盛り上がるHyperpop的音楽ですが、特に筆者が今年の上半期に繰り返しリピートし続けたのが、Kabanagu(カバナグ)の7曲入りEP『泳ぐ真似』でした。

日本を代表するネット・レーベル「Maltine Records」からリリースされた本作は、わずか11分22秒の中で陰鬱さと陽気さがとめどなく変容していく展開で、ときには切なさも感じさせます。オススメ曲はタイトルに挙げた『冥界』です。アップテンポで疾走感にあふれるサウンドで、先行きの見えない不安を払ってくれるような印象を受けます。

Oneohtrix Point Never『Sticky Drama (A. G. Cook Remix)』

最後に紹介するのは、Hyperpopがジャンル化する以前、2017年にSoundCloud上で発表されたOPNのリミックス曲。先述したプロデューサー・A.G.Cookが、原曲を大胆かつ壮大にアレンジし、ボーカロイド的な合成音声が持つ無機質さをどこか有機的な響きに仕上げています。

Sticky Drama (A. G. Cook Remix)

soundcloud.com

深夜に独りで聴きたいような切なさを帯びており、アップ・ナンバーだけに留まらないポップミュージックの可能性を拡張するような名曲です。

まとめ

やや専門的でマニアックな話題にはなりましたが、今回は近頃話題を集める音楽ジャンル「Hyperpop」について取り上げました。ラップミュージックやバンドサウンドも入り交じるカオスな音楽ですが、どことなく元気をもらえるキラキラとした雰囲気が魅力の注目ジャンルです。

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松島広人(フリーライター)

Webディレクターとしてコンテンツの企画・編集・校正・執筆・SEOを担当する傍ら、フリーランスのWebライターとしても精力的に活動。業種・業界を問わず多数のジャンルを手がける。ポップカルチャー・サブカルチャーにも精通しており、幅広い知識を活かしたライティングを得意とする。

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