【ビッグイシューに訊いてみた】実売率80%!支えるのはホームレスの販売者 メンタリストDaiGo発言をどう捉えたか

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街角で、「ビッグイシュー」という、A4判の薄い雑誌を売っている人を見かけたことはありませんか?「ビッグイシュー」は、ホームレスの人たちが路上で売っている雑誌です。安定した家を持たない人たちが、1冊450円の雑誌を1冊売るごとに230円の収入を得て、自立への足がかりにするしくみになっています。コロナ禍での販売者さんの状況や、雑誌を作るうえで大切にしていることなどを、ビッグイシュー東京事務所所長の佐野未来さんに伺いました。

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取材はビッグイシュー東京事務所で行いました。お話を伺った佐野未来(さの・みく)さんは、雑誌『ビッグイシュー日本版(以下、「ビッグイシュー」)』立ち上げの中心人物。2002年、「質の高い雑誌を発行し、ホームレスの人の独占販売とすることで、すぐにできる仕事をつくる」というビッグイシューUKのしくみに出会い、2003年にビッグイシュー日本を3人で創業。2007年まで編集部で国際部門を担当していました。2008年からは東京事務所で、個人が孤立せずに生きられる社会のため、さまざまなセクターの人たちとの協働を進めています。

東京事務所所長の佐野未来さん。

売上の半分以上は販売者へ

――初っ端から率直にお聞きしてしまいますが、現在「ビッグイシュー」はどれくらい売れているのですか?

佐野 25,000部前後刷って、実売が20,000部弱くらいでしょうか。多めに刷るんですよ。

――えっと、それは実売率80%ということですね?ものすごく優秀でうらやましい数字です!

佐野 雑誌の定価450円のうち230円が販売者に入るしくみなので、売り切れると販売者さんの収入がなくなってしまうんです。「売り切れごめん」にできない。余るくらいを見越して刷っています。

――1996年をピークに、出版物の売り上げが右肩下がりになっています。特に雑誌が大きく落ち込んでいて、出版各社は頭を抱えている状況のなか、本当にうらやましい……。特集によっては、もっと売れたりするんですか?

佐野 2019年1月15日発売の351号はすごく売れて、少し多めに27,000刷ったけど完売。5,000刷り増ししたけど、それも売り切れて、完売や増刷が新聞で報道されたりしました。フレディ・マーキュリーが表紙を飾り、映画『ボヘミアン・ラプソディ』でマーキュリー役を演じたラミ・マレックのインタビュー記事を掲載したんです。その号は特別でしたが、たしかに、「雑誌としてはすごくよく売れている」と言われます(351号のバックナンバーはPDF版で購入できます)。

――雑誌は広告が大きな収入源ともいわれますが、ビッグイシューには……

佐野 広告は少ないですね。ビッグイシューの理念に共感してくださる方からしか、相手にされないからかな。ただ、裏表紙の裏(表3)で、企業や団体、個人を対象に「広告サポーター」を募ってお名前を掲載していて、こちらは年々増えています。「ビッグイシュー」を各号3冊、1年分送付などの特典で、10万円からのサポートをお願いしています。

――32ページ・オールカラーの雑誌を月に2冊出すのって大変ですよね。INSP(ストリートペーパーの国際ネットワーク)で共有できる記事があるとはいえ、インタビューや特集は独自記事も多いですし、ものすごく深く取材しているのがわかります。どのくらいの人数で作っているんですか?

佐野 雑誌編集は大阪の本社でやっていますが、編集者4人+デザイナー1人。あとは外部スタッフのライターさんやデザイナーさんにもお願いしています。

――ものすごく下世話で恐縮なんですが、雑誌の定価450円のうち230円を販売者さんに渡すと、残りは220円ですよね。そこから人件費って、出るんですか?

佐野 いやあ、もう正直大変です。薄利多売でなんとかやっている感じです。2020年4月に350円から450円に値上げしたんですが、それまでは若干の赤字でしたね。25,000部くらいあった実売が、徐々に落ちてきて。2014年に消費税が8%になったとき、将来10%になることを見込んで300円から350円にしました。「これでもう、値上げしなくて済むね」と言ってたんですが、そうもいかなくなってきまして。これは販売者数が減っているのが一番の要因なのですが、会社の経営は大変で、「ビッグイシューのジレンマ」と呼んでいます。

それと、販売者さん1人の売り部数は、大阪だと1号につき150~170冊くらい。東京はもう少し多い(ビッグイシューの販売場所は大阪・東京のほかにもあります)。1号200冊売れたとして、1ヵ月で400冊。350円のときは180円が販売者さんに行くので、単純計算すると72,000円。東京都の生活保護の生活補助費が70,000円なので、それと同じくらいになる計算です。「1号200冊」というのは東京ですごく売れたときの数で、大阪はもっと少ない。

雑誌の定価は、販売者さんが「がんばって売れば生活できる」ようにするのが目標なんです。ただ、「販売者さんの生活の持続」と同時に、「会社の持続可能性」も考えなきゃいけない。1冊450円に値上げをすれば、販売者さんに230円。月に400冊売れば92,000円。販売者さんの生活と会社を持続させるために値上げをしよう、ということになりました。

販売者が胸を張って売れるものを作る

――値上げはすんなり決まったのですか?

佐野 いえいえ、スタッフと販売者が集まって、長時間議論しました。現在はコロナ禍で停止していますが、月に1回、「定例サロン」をやっていて、スタッフと販売者、ボランティアが顔を合わせます。1月なら新年会、12月ならクリスマス会などをやったりして、交流を兼ねた感じの集まりですが、スタッフと販売者のみで話し合う販売者会議を開催することもあります。「なぜ売上が落ちているのか?」「どうしたら売上を伸ばせるか?」「雑誌の内容は?」といった販売に関する議題を話し合います。350円から450円に値上げする際にも、まずは読者にアンケートを取ることから始めて、そのあと販売者会議で数回、時間をかけて半年ほど議論しました。準備も含めると半年以上かけたと思います。

――半年も!白熱したんですね。値上げについて、販売者さんからの意見も出ましたか?

佐野 反対意見もけっこうありました。「ページ数も増えない、内容も変わらないのに100円上がったら売れなくなる!あり得ない!」って。販売者さんは、実際にお客さんと顔を合わせてますからね。値上げの理由を聞かれるでしょうし、説明できないと困るわけです。会社としては「デザインも変えるし、内容も変わる。さらによくするようにがんばる!」という雑誌本体の話と、「会社がつぶれるかもしれない」という台所状態も正直に説明しました。

そうしたら、販売者さんたちから「僕らがあと何冊余計に売れば、値上げしなくて済むんですか?」という声があったりして。本当にありがたいんですけど、そうはいっても、今8時間立っているところを10時間12時間にしても数が売れるとは限らないし、それをずっとは続けられないでしょう。

そう言ったら今度は、「じゃあ、50円の値上げにして、それは会社分にして、ぼくらはゼロでいい」って言う人もいて。でもそれは、ビッグイシューの理念(定価の半分以上は販売者に渡す)に反するからできないんです。

――なんだか胸が熱くなります。販売者さんたちのそこまでの思いとは、いったいどこから生まれるのでしょうか。

佐野 買ってくださる方々のなかには、ギリギリの状況の人もいます。「100円の値上がりで買ってくれなくなるかも」と、販売者さんたちは肌で感じているんです。販売時のお客さんとの雑談で、「派遣切りに遭った」とか「職場を変えざるを得なくなった」とか、いろいろと聞いているみたい。販売者さんは、自分にとっても大きい50円100円だけど、買ってくれる人にとっても大きい金額だと実感しているんです。

――それにしても、経営判断をする人と、現場で売っている人が集まって、忌憚のない意見を直接言い合える関係っていいですね。

佐野 ビッグイシューは、販売者さんあってこそのものなんです。販売者さんが街角に立って売ってくれているからこそ、目立つし、話題にもなる。そして、そのことがホームレスという課題に対する社会の認識を変えていく。

買う側にとっても、販売者さんから直接買うことで応援の形が目に見えるし、買ってみたら雑誌自体もおもしろい、という一つひとつが、20,000部という数字につながっている。多くの方は「ビッグイシュー自体を読みたい」というのと「販売者さんを応援したい」という両方の気持ちがあって、買ってくれるんだと思います。だからこそ編集部も、「販売者さんが胸を張って売れるものを」という意識を持って作っています。

ビッグイシューは売上の半分が販売者さんに行き、消費税は会社持ち、そのほか送料とかいろんなものを含めると、7割くらいが販売にかかわる費用で、会社に入るのは3割程度です。書店で売られている雑誌と、構造が真逆。普通の雑誌の2倍売らないと、収支が合いません。

でもね、ビッグイシューを書店に置いても、そこまで売るのは難しいと思うんですよ。今の数字を維持できているのは、販売者さんが路上で売ってくれているからだと思っています。

――ビッグイシューは慈善事業ではなくビジネスである、ということがよくわかるお話ですね。販売者さんたちも、より多く売るための工夫をしているんでしょうね。

佐野 ポスターはこちらで用意しますが、ディスプレーの仕方とかバックナンバーの見せ方だとかは、個人でいろいろと考えてやってらっしゃいますね。なかには、オリジナルポスターを自分で作っている方もいらっしゃいますよ。東京は声を出さずに売っている方が多い印象ですが、場所によっては「今回の号の内容は〇〇です」と言いながら売る人もいます。そういえば昔、バナナのたたき売りをやっていたことがあるという方がいて、名物販売者さんでしたね。

また、定例サロンのときや、仕入れで事務所に来たときに、「こういうポスターを作ってほしい」というオーダーをされる方もいます。コロナの前は、ポップの作り方講座を開きました。手書きだと、親しみやすい感じが出るので。

ホームレスである販売者が問題解決の牽引役

――私は以前の職場が御茶ノ水だったので、ビッグイシューの販売者さんの存在は知っていました。

佐野 目立ちますよね。それがいいんです。販売者さんが街に立って売ってくれることで、「あのおっちゃん、なんだろう。何をしてるんだろう」と視界に入る。暑い日も寒い日も街角に立って雑誌を売っている。それも何の雑誌かよくわからない。「宗教の雑誌かと思った」とよく言われます。でも、何かのタイミングで、テレビやネットなどでビッグイシューを知って、「あ、あのおっちゃん!」と、その光景とつながってくれればいい。本当はもっと広報や広告ができて、イギリスのビッグイシューのように「誰もが知っている雑誌」になれると、さらに良いんですけど。

ビッグイシューの販売者は目立つことが大事。

www.bigissue.jp

――ビッグイシューの販売者さんの姿は、一般の人がホームレスに抱いているイメージと、ちょっと違う感じがしますよね。

佐野 新聞やニュースで見る「ホームレス」は自分とは無関係で、ときには恐怖すら覚える存在、という人が多いかもしれません。でも、実際に顔が見えると、「ホームレス」ではなく、「街角で雑誌を売っているおっちゃん」になりますよね。「私と同じ街で働くあの人が、ホームレス」という状況に、「え、なんで?」と疑問が湧き、なかには「なぜ、この人がホームレスにならざるを得なかったのか?」という考えにまで及ぶ人もいるでしょう。

私も、「この豊かな日本で、路上に寝ざるを得ない人がいるのはなぜ?しかもこんなにたくさん」という素朴な疑問からスタートしました。失業からホームレスになる方が多いことを知り、「ビッグイシュー日本」の立ち上げに参画したんですが、私が100の言葉で語るより、販売者さんが街角で立って売ってくれる方が強力なんです。そういう意味ではすごいスポークスパーソンだし、彼らがこの問題解決の牽引役になっているんです。

――ビッグイシューでは、読者の相談に販売者さんが回答する「ホームレス人生相談」のコーナーがありますね。

佐野 料理家の枝元なほみさんの「悩みに効く料理」のレシピもついていて、すごく人気のあるページです。編集部に寄せられた相談を、販売者さんに見せて答えてもらうんですけど、厳しい状況も乗り越えてきた、人生の厚みを感じる回答が出てくるんですよね。「俺なんかが相談に答えるのはおこがましいけど、反面教師にしてもらえたら…」みたいな人や珍回答もあって、「これまでになかった下から目線の人生相談」がとてもいいと言ってくれる方もいます。このページを読んでもらうだけでも、「ホームレス」が一括りではなく、一人ひとり違う、さまざまな人生を歩んできたことがわかると思います。

メンタリストDaigoの発言が意味するもの

家がなければ頑張りたくても頑張れない

――昨年来のコロナ禍で、変わったことはありますか。

佐野 変化の序章としては、今から13年前、2008年のリーマンショックがありました。ビッグイシューを立ち上げた2003年当時の販売協力者は、高齢(50代60代)で、建築現場での日雇い仕事などの肉体労働経験者が多かったんです。2008年秋のリーマンショックの後あたり、特に東京では2009年くらいから、ビッグイシューの販売登録者に、若い方が増えてきた。20代の人が来たときはビックリしました。日雇い労働の中心層が、おじさんたちから若い人たちに広がっていった感じです。

不安定な労働状況の人が増えているのに、その人たちをカバーするセーフティネットが整備されていないため、経済危機などがあると、すごいボリュームで困窮する人がいるということ実感しました。日本には、公的なセーフティネットが一応あるのですが、じゅうぶんに機能しているとはいえません。公的福祉の代わりを果たしてきた家族や企業が、どんどん弱体化してきているのに、それに代わる細やかなセーフティネットは整備されなかった。それが、リーマンショックで一気に明らかになった感があります。仕事を失い、実家に頼れない、そういう人たちを公的福祉が守ることができず、彼らは路上に出ざるを得なくなったのです。

――女性の失業も増えていますよね。

佐野 現在私たちは、「ビッグイシュー」を制作販売する有限会社ビッグイシュー日本と、認定NPO法人ビッグイシュー基金の両輪で、ホームレスの自立支援を行っています。従来は、ビッグイシューの販売をしたいという相談を受けて基金の方へつなげるケースが多いので、女性からの相談はあまりなかったんです。販売希望者は男性が多いので。でも最近は、女性からの相談も来始めています。他の支援団体でも、これまで相談会を開くと女性の参加者は1割程度だったのに、最近は3割くらいに増えているそうです。電話やメールの相談は、半分くらいが女性からだと言います。

今回のコロナ禍では、製造業だけではなく、飲食や観光・旅行業界などサービス業の広い領域がダメージを受けました。この業界は特に、非正規雇用の女性が多い。そこから排除されたとき、戻れる実家があればいいけれど、ない場合も少なくありません。実際、若者と女性の自殺者が増えています。本当に痛ましいことです。

――ビッグイシューの販売者さんたちは「自助」で自立を目指しているわけですが、「街に立って雑誌を売る」ところにまで手が届かない人もいるのでは。

佐野 そうですね。路上生活は本当に過酷で、心身を削ります。路上生活で体調をくずし、心も病んでしまって、ビッグイシューの販売を希望していたのに果たせなかった人もいました。体調が悪くて寝る場所もなかったら、頑張りたくても頑張れないですよね。

2020年11月に、渋谷区のバス停で寝起きしていた女性が撲殺される事件がありました。彼女がなぜバス停で寝起きしなければならなかったのか。生活保護は本来、家がなくても受け取れます。そんな情報を彼女が知っていたら、バス停に寝なくて済んだかもしれない。でも、そういう知識や情報があっても、生活保護を受けることに二の足を踏む人が少なくないのが現状です。いまだに、「努力不足」「税金の無駄遣い」といったバッシングが絶えないからです。

「DaiGo的」な空気を払拭し役所に相談できる土壌を

――先日、メンタリストDaiGo氏がライブ配信で「ホームレスの命はどうでもいい」「邪魔」「治安が悪くなる」といった発言をして、物議を醸しました。

佐野 彼が、どんなつもりであの発言をしたのか、しかもなぜライブ配信という形で公開したのかは知りません。でも、同様のことを言ったり、言わないまでも思っていたりする人はいますよね。そのたびに、「それは違うでしょ」と声を上げることが大事だと思っています。

実を言うと私自身も、ビッグイシューを始める前は、「日本は豊かな国だし、みんな税金を払って福祉もしっかり整っているのに、なぜ路上に人がいるのかしら。好きでやっている人もいるのでは?」と思うところもありました。でも、仕事を失って家賃が払えなくなったとき、頼る家族や友人もいなければ、あっという間に路上に放り出されます。生活保護を受けたくても、「家族に連絡がいくのは困る」「根掘り葉掘り聞かれるのが苦痛」「人の目が気になる」などの事情で、役所の窓口までたどり着かない人が少なくありません。また、過去に生活保護を利用した際に劣悪な施設で搾取されたり、暴力にさらされて逃げてきた経験を持つ人にも、たくさん出会ってきました。好きで路上にいるわけではないんです。

それと、ビッグイシューの仕事を続けてきて思うのは、「みんな頑張りすぎ」ということです。ビッグイシューの事業で掲げていることと相反するのでは?と思われるかもしれませんが、東日本大震災の時にも、「頑張ろう、という言葉がつらい」という被災者の方の声がありました。「頑張っているように見えるかどうか」で支援の有無が決まるような風潮もあります。それはおかしいと思うんです。困難に直面した時、まずは安心して体や心を休めることができて、相談できる誰かがいる。そんな環境が保障されてこそ、生きることを「頑張れる」のではないかと、今では思います。これはビッグイシューの事業だけで実現するのは難しい。だから、NPO法人ビッグイシュー基金やその他の団体、応援してくださる人たちとともに、発信を続けなければと思っています。

――メンタリストDaiGo氏の発言が炎上したとき、厚生労働省がTwitterで「生活保護の申請は国民の権利です」と呼びかけました。当たり前のことですが、国があらためて発信したことは良かったと思いました。

佐野 そうですね。今の日本は、制度はあるのに、それを使えない空気があります。生活保護を受けている人への偏見と差別。そういったものを、国が率先して払拭し、「ぜひ相談してください」と言ってほしい。本当は、困っている人を探し出して支援するのが、国の仕事ですが、現実はそこまでできていません。今はとりあえず、生活に困窮したときに「役所で相談すればなんとかなる」と思える土壌を作ることが大切だと思います。

厚生労働省がTwitterに投稿。

――ビッグイシュー基金では、ホームレスの人たちに、相談窓口の案内などを掲載した冊子『路上脱出・生活SOSガイド』を渡すなどの活動もしていますよね。

佐野 路上やネットカフェにいる人たちに向けて、民間の支援団体が行っている活動(炊き出しや衣類の配布、相談会など)や、体調が悪いときの相談先、仕事や住居の探し方、生活保護の申請の仕方などを詳細に掲載しています。すぐに仕事をしたい人のために、ビッグイシューの販売についても紹介しています。また、仕事や住居はあるけれど、借金や家族、病気の悩みや生きづらさを抱えている人が相談できる機関も掲載しています。ガイドは、ビッグイシュー基金のホームページからダウンロードできるので、身近に思い当たる人がいたら教えてあげてください。

――終身雇用制は過去のものとなり、非正規雇用の割合が増え、少子高齢化が進んでいます。今後ますます、大勢の高齢者を非正規雇用の人たちが支えるという、不安定な社会になるような気がします。

佐野 今は日雇いどころか、ウーバーなど時間雇用で生活を維持している人もいますよね。国は「自助」「共助」の次に「公助」と言いますが、仕事が不安定で、頼る家族がいない、もしくは家族もギリギリの生活で助けられない、というケースは増えています。病気の人や仕事や家を失った人、そうした「弱い人たち」がどう扱われているかを見ると、その社会がどれだけ豊かなのか、そして自分にとってどれだけ安心して生きられる場所なのかがわかります。家族もお金も健康もない人が「公助」によって安心して生きられる社会なら、自分も安心して年を取ることができますよね。

――「何かあったら自己責任」というのが常識になると、「誰も助けてくれない」「人に迷惑をかけられない」と思い詰めてしまいそうで、年を取るのが怖くなります。年を重ねてもいいことがないなら、生きるのがつらくなりますよね。

佐野 「今自分がいる、ここがすべて」と思っていると、逃げるには死ぬしかなくなってしまいます。助けてくれる場所があれば、そこに一時避難したりして、つらい時間を乗り越えられます。「逃げる」って悪い意味に使われがちですけど、例えば、山でクマを見かけたら正面突破しませんよね。そっと回り道をして避けたり、後ずさって徐々に離れたり。生きるためには当然の行動です。社会も同じ。逃げ道はたくさんあったほうが生きやすいんです。

人生は、いろんなことが起こりうるじゃないですか。予期しないことが起こったときに、少なくとも家や働く場所、居場所を失わなくてすむ。そんな社会を考えてみませんか?ということを、私たちは伝えたいと思っています。そしてそれを、体験をもって、いちばん効果的に伝えてくれるのが、ビッグイシューの販売者さんたちなんです。

まとめ

取材後の雑談中、「コロナで医療機関が逼迫して、病気やケガをしても治療を受けられない、というのは恐怖ですよね」という話になったとき、佐野さんに「困窮している人たちは、ずっとその状況です。お金や保険証がない人は仕方ない、という扱いだったけど、医療を受けられない不安や恐怖を、今みんなが体験している感じですよね」と言われ、ハッとしました。取材から戻って、日本国憲法第25条第1項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」の条文を、何度も読んでしまいました。

あなたの街にも、ビッグイシューの販売者さんがいるかもしれません(ビッグイシューの販売場所)。路上での購入が難しい場合は、定期購読などもできます(私は定期購読しています)。機会があったら、ぜひ1冊、読んでみてください。ビッグイシューに携わるすべての人の思いが、ギュッと詰まった32ページです。

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