【基本のやり方】スロースクワットのポイント 呼吸・股関節・ひざ|筋肉博士・石井直方さんが解説

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スロースクワットには、さまざまな種類や方法がありますが、すべてにおいて「ゆっくりなめらかに動き続ける」「筋肉に効いている感覚を大事にする」「呼吸を止めず、動作に合わせて呼吸する」という3つの重要なポイントがあります。各ポイントの詳しい説明と、回数の目安とその理由について、書籍『いのちのスクワット』著者で東京大学名誉教授の石井直方さんに解説していただきました。

解説者のプロフィール

石井直方(いしい・なおかた)

1955年、東京都出身。東京大学理学部生物学科卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。東京大学教授、同スポーツ先端科学研究拠点長を歴任し現在、東京大学名誉教授。専門は身体運動科学、筋生理学、トレーニング科学。筋肉研究の第一人者。学生時代からボディビルダー、パワーリフティングの選手としても活躍し、日本ボディビル選手権大会優勝・世界選手権大会第3位など輝かしい実績を誇る。少ない運動量で大きな効果を得る「スロトレ」の開発者。エクササイズと筋肉の関係から老化や健康についての明確な解説には定評があり、現在の筋トレブームの火付け役的な存在。
▼石井直方(Wikipedia)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

本稿は『いのちのスクワット』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

「スロースクワット」のやり方の重要ポイント

スロースクワットには、さまざまな種類や変法がありますが、すべてにおいて共通するポイントがあります。

やり方の3つのポイント

(1)ゆっくりなめらかに動き続ける
(2)筋肉に「効いている」感覚を大事にする
(3)呼吸を止めず、動作に合わせて呼吸する

(1)ゆっくりなめらかに動き続ける

スロトレの最も重要なポイントは、「ゆっくりなめらかに(同じ速度で)動き続ける」ことです。ゆっくりなめらかに動き続けるというのは、「筋肉に常に同じ負荷をかけ続ける」ことです。このようにすることで、筋肉が脱力することなく、高強度の筋トレ並みの効果が期待できます。

「ゆっくりなめらかに動く」というのは、太極拳のような緩やかな動きをイメージしてもらえればいいでしょう。能や日本舞踊に見られる動きとも共通したところがあります。

スクワットの回数を稼ぐために、スピードを速くしたくなるかもしれませんが、やみくもに回数を増やすよりも、スローで的確に行うことがはるかに重要です。
動きはゆっくりですが、「立ち上がったところで動きを止めない」ことも重要です。

通常のスクワットの場合は、腰を上げたとき、ひざを伸ばしきって動きを止めてしまうことがあります。こうしてしまうと、ひざ関節の力で立つことになるので筋肉の力が一瞬抜けてしまいます。スロースクワットでは、筋肉に負荷をかけ続けることで大きな効果が得られます。ひざを伸ばした姿勢で動きを止めないないように注意しましょう。
ゆっくり動く、動きを止めない─ここが通常のスクワットとの大きな違いです。

(2)筋肉に「効いている」感覚を大事にする

スロースクワットをしているときは、太ももの筋肉に「効いている」という感覚をつかむこと、そしてそのような感覚が生じるまで繰り返すことが大事です。

具体的には、筋肉が「熱くなってきた」「「だるくなってきた」「疲れた」「張ってきた」といったような感覚です。
何回できたかと回数にこだわるより、そういう感覚が得られたかどうかがもっと重要で、頼りにすべきところです。
この感覚が、筋肉の中でたんぱく質合成へと向かう化学反応が起きている証といえます。

(3)呼吸を止めず、動作に合わせて呼吸する

呼吸を止めないことも重要です。呼吸を止めて力を入れると(怒責=息むこと)、血圧が急上昇してしまうおそれがあります。スロトレでも血圧は多少上がりますが、呼吸を止めなければ軽い負荷なので安全です。基本的な呼吸は、「しゃがみながら息を吸い、立ち上がりながら息を吐く」です。動作に合わせて呼吸をしてください。

回数の目安

1日に行う回数の目安
8秒(下げ4秒、上げ4秒)×5~8回(これが1セット)
これを1日3セット
1セットごとに1~2分の休憩を入れる
1セットは5回から始め、とりあえず8回を目標にする

1セットは5回を基準にします。慣れたらだんだん増やしていき、8回を目標にしましょう。5回が無理なら、できるところから始めてみてください。8回できた場合には、さらに12回くらいまでに増やしても結構です。

セット数についても同様で、3セットがきついようでしたら、2セットから(あるいは1セットから)始めましょう。

トレーニングのセット数は、1回でまとめて行うことをお勧めします。朝昼晩1セットずつ分けて行うより、2〜3セットまとめてトレーニングしたほうが効果的です。慣れてきたら、3セット行うのに10分もかかりません。

週に行う回数(頻度)
2~3回(中2~3日空けて行う)

みなさんの中には、「トレーニングは毎日やったほうが、効果が出るのでは?」とお考えになるかたもいらっしゃると思います。しかし、残念ながら、毎日同じ種目のトレーニングをしても、あまり効果的でないことが判明しています。

筋トレを行うと、その直後から72時間後にかけて筋線維の中のたんぱく質合成が活性化した状態が続き、筋線維が成長します。この間は、新たな筋トレ刺激が加わっても、さらなるたんぱく質合成の活性化が起きにくい状態になります。
したがって、最も効率よく筋肉を増やすためには、中72時間くらい、つまり3日おきくらいの頻度でトレーニングするのがよいと考えられます。

動物を用いた私たちグループの研究では、トレーニングの間隔を8〜72時間の間で変えた場合、72時間空けた場合に最もたんぱく質合成が活性化され、24時間間隔ではあまり活性化が起こらなくなってしまいました。8時間では逆に抑制が起こりました。この結果からも、週2〜3回という頻度が最適ではないかと考えられます。

とはいえ、毎日やったからといって、大きなマイナス効果が出るということもないでしょう。毎日しても、その効果は週2回とあまり変わらないという報告もあります。

少なくとも週2回のほうが続けやすいし、効率もよいことは確かでしょう。

1日のうちでいつ行うか
トップアスリートは、夕方から夜にかけて筋トレを行うことが多いのですが、一般のかたはそれほど時間帯にこだわらず、自分の生活リズムに合わせて、いちばんやりやすい時間帯に行うようにしましょう。
ただし、朝起きてすぐ、食後すぐ、寝る直前は避けましょう。

本稿は『いのちのスクワット』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

準備体操「その場足踏み」

スロースクワットをする前には、準備体操をしておくといいでしょう。体が温まって血液循環がよくなり、効果も高まります。お勧めできるのが「その場足踏み」です。

やり方
背筋を伸ばして立ち、大きく手を振りながら、その場で足踏みをする

※振り上げた太ももが、床と平行になるくらいまで上がるといい
※30~50回足踏みする

基本の「スロースクワット」のやり方

1日3セットを週に2~3回
※2~3を5~8回繰り返して1セット

ポイント

ゆっくりなめらかに動く
ゆっくりと4秒で下ろし、4秒で立ち上がる。
速くやらない

ひざを伸ばしきらない
立ち上がったときは、ひざが伸びきる直前で止める。
ひざを伸ばしきると、筋肉の力が抜けてしまうため

呼吸を止めない
腰を落とすとき吸って、立ち上がるとき吐く

(1)足を肩幅に開き、股関節に手を当て、やや腰を落とす

(2)ゆっくりと4秒かけて腰を落としていく(息を吸う)

(3)ゆっくりと4秒かけて腰を上げていく(息を吐く)

手を股関節に当てると、自然と正しい姿勢になる

手を股関節に当ててやる理由は、ひざがつま先より前に出ない姿勢を身につけるためです。腰を落としていくとき、手のひらをおなかと太ももで挟み、お尻を後ろに突き出すようにすると、自然と前傾姿勢になり、ひざがつま先より前に出にくくなります。

立ち上がったとき、ひざを伸ばしきらない

スロトレでは「筋肉が力を出し続ける」ことが重要です。しかし、ひざを伸ばしきると、関節が固定され(ロックされた状態)、筋肉の力が抜けてしまいます。ひざを伸ばしきらない状態(ノンロック)にすると、力が入った状態を維持できます。

悪い例

ひざがつま先より前に出ると、ひざへの負担が大きくなり、ひざを痛める原因になる

ひざを痛めやすいので注意。ひざは足先と同じ方向で、やや外側を向くように

◇◇◇◇◇

なお、本稿は書籍『いのちのスクワット』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。筋トレは、いくつになっても始めることが可能で、いくつになっても効果をもたらします。90代のかたも決して例外ではありません。著者の石井直方先生が、がんの治療中に行っていたスクワットも、スロースクワットだったと言います。「入院中のスクワットは、まさしく私のいのちを支え続けたといっても言い過ぎにはならないと思います」(石井直方さん)。本書は「スロースクワット」の効果と方法について、石井直方さんご自身の体験もふまえながら、一般の方向けにやさしく解説した良書です。詳しくは下記のリンクからご覧ください。

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※(3)「【加齢と筋力低下】サルコペニア・ロコモ・フレイル その意味と関係について|筋肉博士・石井直方さんに聞く」の記事もご覧ください。

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