4Kで撮るとなると、プロデューサーもディレクターもカメラマンも編集者も「4Kだ!」と特別な意識を向け、4Kらしい、はっきりくっきりな画調を仕込むものだが、4Kのもうひとつの側面の、グラテーション再現の細やかさに着目して絵づくりする番組は、たいへん少ない。その意味でBS-TBS4Kで、12月22日と29日の22:00~22:54に放送された「ヒロシのぼっちキャンプ」は、たいへん貴重な4K作品だ。

淡々とした自然な流れが心地良い

なぜタレントのヒロシにしたか。

「ソロキャンプを誰にしてもらおうかと考えていた時、たまたま本屋でキャンプ雑誌を手に取ったのですが、その雑誌の表紙がヒロシさんだったんですね。もうそれを見た瞬間に、ヒロシさんに決めました。ソロキャンプは自分を見つめ直す内省的な営みです。その視点を共有できるのはヒロシさんしかいないと思いったのです」(伊藤正憲氏)

実は、私はこの番組が大好きで毎週、2Kおよび4Kを観ている。とても静謐で、心が落ち着くからだ。ヒロシのキャラクターもいい。決して、おれがおれがと出しゃばらず、人を避けてテントを設営する。その謙虚さ、誠実さ。進行パターンが決まっていることも、視る側の安心感につながる。次に何が来るかが容易に読めるから、慌てなくてよい。関東各地のキャンプ場に、自ら運転して向かう。途中で地元スーパーに立ち寄り、食材を買う。実は他人が映るのはここのみ。

「演出としては、ヒロシさんと人との触れあいを期待しますが、スーパーの店員さん相手に盛りあがるか否かは、仕込みではなく、すべてその場の流れに任せています」と伊藤氏は言う。サイトで人を避けて場所を選び、テントを張り、薪を集めて火を起こし、料理をして食べて朝を迎える。その淡々とした、自然な流れが、視る側にしては安寧で、心地良いのだ。

画像3: BS-TBS「ヒロシのぼっちキャンプ」 bs.tbs.co.jp

BS-TBS「ヒロシのぼっちキャンプ」

bs.tbs.co.jp

「見たままを表現したい」

画質でも、こうした世界観が語られる。それは押しつけのない「内省的な画質」だ。画質に感心したので、初回から撮影を担当している、草柳徹也カメラマンに訊いた。

――「ヒロシのぼっちキャンプ」の映像は一貫して(2Kも4Kも)しっとりとし、階調が豊かです。コントラストを強調していません。どんな方針に基づいて、この誠実な映像を録っているのでしょうか。

「一言でお答えすると、『見たままを表現したい』と思いました。ご指摘の通り、なるべくコントラストをなくして、明るいところも暗いところも観せたい! です。コントラストが強いと、暗部がつぶれます。だからそのぶん階調を出してあげて、色の変化や奥行きを表現しています」(草柳カメラマン)

画像4: BS-TBS「ヒロシのぼっちキャンプ」 bs.tbs.co.jp

BS-TBS「ヒロシのぼっちキャンプ」

bs.tbs.co.jp

――「ぼっちキャンプ撮影時のモットーは何でしょうか」

「心掛けていることは、時間を撮ること(切る、切り取る)です。季節は勿論、早朝やマジックアワーなど、その時その時の時間を大切に写したいと思っています。また、なるべくワンカットで編集できるよう、意識しています。短いカットの積み重ねだと時間を切ることになるので、ワンカットで長く見せて、ゆっくりした時間が際立つように心掛けています」(草柳カメラマン)

草柳カメラマンのつくる画質は、みごとに「ヒロシのぼっちキャンプ」の世界観と合致し、このナチュラルトーンには、「ヒロシのぼっちキャンプ」の価値がすべて反映されている。

◆文・麻倉怜士(あさくら・れいじ)
デジタルメディア評論家、ジャーナリスト。津田塾大学講師(音楽理論)、日本画質学会副会長。岡山県岡山市出身。1973年、横浜市立大学卒業。日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。『プレジデント』副編集長、『ノートブックパソコン研究』編集長を務める。1991年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。高音質ジャズレーベル「ウルトラアートレコード」を主宰。
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