牛乳の1リットルパックを冷蔵庫に常備している人は多いと思いますが、「なかなか飲みきれない」ということはありませんか?実を言うと私自身、牛乳はカルシウム豊富な食材だと分かっているものの、特有の匂いがあまり得意ではなく、コーヒーやシチュー、お菓子づくりにちょっとずつ利用する程度。今回は、牛乳が苦手な人や、「牛乳が余った」「大量消費したい」というときに、ぜひ試してほしい自家製カッテージチーズの作り方とアレンジレシピをお伝えします。出来立てのフレッシュな風味を楽しんだり、料理に取り入れたりしてご活用ください。

カルシウムは骨の健康に不可欠な栄養素

まず、牛乳に含まれるカルシウムの働きに注目しましょう。ご存知のように、カルシウムは丈夫な骨や歯をつくるために不可欠なミネラルです。私たちの体の骨を形成する骨細胞は絶えず新陳代謝をくりかえしていて、大人になってからも全身の骨が一定期間かけて新しく入れ替わっています。

画像: 骨が生まれ変わるメカニズム (イラストAC)

骨が生まれ変わるメカニズム

(イラストAC)

ところが、カルシウム不足や加齢の影響で骨の新陳代謝がスムーズに行われなくなると、骨の中のカルシウムが血液中に溶け出し、その結果、骨がもろくなる「骨粗しょう症」を招きやすいと考えられています。特に女性は、閉経を迎えると骨量(骨密度)の維持にかかわってきた女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少し、それに伴って骨量も急激に減り始めます。また、近年では過度なダイエットや偏った食生活によるカルシウム不足が原因で若年層でも骨粗しょう症を発症するケースが珍しくありません。

骨粗しょう症リスクを防ぐポイントは、一生のうちで最も骨量を増やすことができる10代の成長期にカルシウムをしっかり摂って“骨の貯金”をしておくこと。骨量の維持が難しくなる40代以降は、毎日の食事でこまめにカルシウムを摂り、骨の貯金をできるだけ減らさない努力が必要です。

◆加齢による骨量の変化

画像: 10代に最大骨量(ピークボーンマス)を迎え、40代以降減っていきます (イラストAC)

10代に最大骨量(ピークボーンマス)を迎え、40代以降減っていきます

(イラストAC)

また、カルシウムには骨をつくる以外にも、野菜などに多く含まれるカリウムと協力しあって筋肉や内臓の動きを調整したり、神経細胞の情報伝達や免疫反応を助けるなど、生命の維持に重要な役割を果たしています。

日本人の多くがカルシウム不足

では、どれくらいのカルシウムを毎日の食事で摂れば十分な “骨貯金”ができているといえるのでしょう。また、私たちは普段どれくらいのカルシウムを食事から摂っているのでしょう。「日本人の食事摂取基準」による年代別のカルシウムの必要量(推奨量)と、「国民健康・栄養調査」による摂取量の平均値をグラフにしてみました。折れ線グラフが必要量、棒グラフが実際の摂取量です。

日本人の全ての年代においてカルシウム不足であることが一目瞭然です。実はこのカルシウム不足状態は50年以上も続いています。

◆年代別カルシムの必要量と摂取量の差異

画像: 必要量(折れ線グラフ)に対し、実際の摂取量(棒グラフ)が、特に10代後半から50代まで足りていません!

必要量(折れ線グラフ)に対し、実際の摂取量(棒グラフ)が、特に10代後半から50代まで足りていません!

牛乳はカルシウム摂取の救世主

カルシウムを多く含む食品は、牛乳やチーズなどの乳製品のほかに、小魚類、厚揚げ、小松菜などが挙げられます。その中でも、牛乳はカルシウムの吸収率が高く(※1)、効率的にカルシウムを摂ることができる優等生です。学校給食で牛乳が毎食出される理由がちゃんとあるのですね。

※1)野菜の吸収率が約20%、小魚の吸収率が約30%であるのに対し、牛乳は50〜70%と高いのが特徴。牛乳に含まれるたんぱく質(カゼイン)や乳糖(ラクトース)などの働きにより、腸管でカルシウムをイオン化して吸収率が高まると考えられています。

◆食品に含まれるカルシウムの目安

画像: *「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を元に筆者が作成

*「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を元に筆者が作成

とはいえ、カルシウムの必要量が最大となる12〜14歳の男児で、その量は1日1000mg。牛乳に置き換えればコップ4杯以上に相当します。牛乳ばかり、毎日そんなに飲めませんよね・・・。

そこで、牛乳から簡単に作れて食事に取り入れやすい、自家製カッテージチーズの作り方をお伝えしたいと思います。牛乳を飲むとおなかがゴロゴロしやすい乳糖不耐の人も、チーズにすると乳糖の大部分がホエイ(乳清)に移って取り除かれるため、乳糖不耐が起こりにくいといわれています。

牛乳から3ステップでカッテージチーズが完成!

カッテージチーズは、牛乳を酸と熱で分離・凝固させて作るフレッシュチーズです。プロセスチーズ(スライスチーズなど)に比べて低脂質・低エネルギーで、料理やお菓子作りに取り入れやすいチーズといえるでしょう。今回ご紹介する自家製カッテージチーズは、栄養士養成校の恩師・青山佐喜子先生の直伝レシピを簡略化したものです。材料は牛乳と酸(レモン汁または食酢)だけ。今回、レモン汁のみ、食酢のみ、レモン+食酢を試してみて、お菓子作りやサラダなど香りを良くしたい場合はレモンを多めに、加熱調理系の料理に活用する場合は食酢のみでも十分だと感じました。

【カッテージチーズの材料】(出来上がり:約150g)

・牛乳(成分無調整)…500ml(1/2リットル)

・レモン汁+食酢(米酢)…合計50ml(牛乳の10%が目安)

画像: 牛乳は成分無調整の普通牛乳を使用します。

牛乳は成分無調整の普通牛乳を使用します。

画像: 牛乳に加える酸は、レモン(左)大さじ1+米酢(35ml)を混ぜて使いました。穀物酢やリンゴ酢でも作れます。

牛乳に加える酸は、レモン(左)大さじ1+米酢(35ml)を混ぜて使いました。穀物酢やリンゴ酢でも作れます。

【カッテージチーズの作り方】(調理時間:約20分)水切り時間除く

牛乳を鍋に入れて弱火にかけ、40〜50℃程度に温める(モワッと牛乳特有の香りが立ち上ってくる)。ヘラなどで混ぜながら均一に温まるようにする。

画像: 鍋肌がフツフツし始める手前、ホットミルクくらいの温かさが約50℃の目安。

鍋肌がフツフツし始める手前、ホットミルクくらいの温かさが約50℃の目安。

火を止めて酸(レモンor酢)を一度に加え、再び火をつけ、とろ火で約50℃をキープしながら、ヘラでゆっくり混ぜる。すぐに分離が始まるので、そのまま15分程度、温めながらゆっくり混ぜる

画像: 酸を加えて混ぜると、すぐに分離し始めます。

酸を加えて混ぜると、すぐに分離し始めます。

火を止め、破れにくい厚手のクッキングペーパーを敷いたザルに移し、水分が自然に切れるのを待つ。チーズを味見してみて酸味が強く感じる場合は、ザルに移したチーズに水をコップ1杯程度かける→ヘラで静かに混ぜる→水気が切るのを待つを数回繰り返すと和らぐ。

画像: おおー!カッテージチーズになってるー!!

おおー!カッテージチーズになってるー!!

このレシピで今回、牛乳半リットル(500ml)から約150gのカッテージチーズ、350mlのホエイ(乳清)を作ることができました。できあがるカッテージチーズの量は、牛乳の乳脂肪分の量や作ったときの水分の切り方で変わります。

画像: 左側のホエイ(乳清)も捨てずに活用しましょう(後述あり)。

左側のホエイ(乳清)も捨てずに活用しましょう(後述あり)。

何度か試してみたところ、うっかり牛乳を60℃くらいまで温めてしまったり、かき混ぜる前に火を止めて余熱だけで15分混ぜたり、最初に数分混ぜただけでほぼ15分放置たりしても、カッテージチーズを作ることができました。つまり、多少スボラでも意外と失敗しません!ただ、レシピ通りの40〜50℃をキープしながら15分間ゆっくり混ぜると、チーズの舌触りがなめらかになります。温度が高かったり、放置時間が長かったりしたチーズは、粒立ってボソボソした食感になるように感じました。

まず、できたてのカッテージチーズにハチミツをかけて食べてみました。チーズのフレッシュな酸味さが感じられ、口当たりが軽く、ペロリと食べられます。

画像: ベリー系のジャムやメイプルシロップも合いそうです!

ベリー系のジャムやメイプルシロップも合いそうです!



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