【ガールズ&パンツァー最終章 第3話】密林戦・雪上戦に注目 3DCG映像とリアルな音響を堪能できる

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音の良いアニメを紹介するこの連載では欠かせない『ガールズ&パンツァー』。華道・茶道と並んで女子の嗜みとされる「戦車道」で、女子高生が迫力の戦車戦を繰り広げる人気作品だ。TVシリーズ、OVA、劇場版を経て、“最終章”と銘打ったシリーズが進行中だ。昨年12月に発売された『最終章』第3話では、無限軌道杯第2回戦と準決勝の様子が描かれている。3Dを駆使した夜の密林戦や雪上戦など、バラエティーに富んだ戦場で迫力たっぷりの戦車戦が楽しめる。

緻密な3Dで作られた戦場が見どころ

日本でトップクラスの音響チームが担当

『ガールズ&パンツァー』は、人気のきっかけのひとつとなった音声がグレードアップを重ねているところが大きなポイントだ。TVシリーズが2.1ch(TV放送は2.0ch、BDにて2.1ch音声を収録)、OVAで4ch、劇場版で5.1ch音声となり、のちにすべての音声を5.1ch音声としたBD BOXも発売されている。『最終章』は、BDでは5.1ch音声を収録するが、劇場公開では、5.1chや6.1/7.1ch上映、そしてドルビーアトモス音声での上映も行われている。シリーズを通して担当している“音響さんチーム”の3人(音響監督の岩浪美和、音響効果の小山恭正、録音調整の山口貴之)は、ドルビーアトモス作品も数多く手掛けており、日本ではトップクラスといっても過言ではないだろう。

迫力の戦車戦を3DCGでリアルに映像化

その音響については後で詳しく述べるが、映像の進化も見逃せない。劇中に登場する数々の戦車は3DCGによる作画で、これ自体はTVシリーズから同じ。実写では不可能と思われる迫力の戦車戦をリアルに映像化できているのは、3DCGによるところが大きいだろう。その3DCGも進化を重ねていて、各部の汚れや、砲撃を受けた後の弾痕などがきちんと描かれる。戦車に備わった数々の備品も細かく再現されていて、ミリタリーマニアにはその再現度も注目されている。

知波単学園との戦いは密林を舞台とした夜戦となっているが、鬱蒼とした密林までも3DCGで再現。生い茂る木々の間を駆け抜ける場面では、奥にある樹木の奥から敵戦車が見えているのがわかるし、横方向からの奇襲など、3DCG制作のメリットを駆使した自在なアングルが戦車戦の面白さを何倍にも高めている。

知波単学園の隊長・西絹代。多彩な突撃を展開し、大洗女子学園を追い詰める。

© GIRLS und PANZER Finale Projekt

アニメにおいて4K化以上に重要なこと

現在、実写では4K以上の解像度での制作が一般的になっているが、アニメは今もHD(2K)の制作が標準だ。これは日本に限らず、海外のディズニーも同様。HDに比べて4倍以上にもなる4Kでのアニメ制作がコスト的な負担が大きいことは間違いないが、3DCGでは単に高解像度な映像とするだけでなく、画面中に現れる戦車や密林の木々といったオブジェクトの数も重要だ。無理に4K化をして、真っ平らな平原を実写と見間違える精密な戦車が走るだけの映像を見ても、面白くもなんともない。アニメにおいては、たくさんの戦車や、舞台となる密林の木々の一つひとつをきちんと描くことが4K化以上に重要で、臨場感をさらに高めてくれるのだ。本作を見ると、それがよくわかる。

物語では、密林を抜けて川を渡り、中州へと追い込むような作戦が展開する。つぎつぎに変化する舞台をリアルに再現しており、戦場すべてをミニチュア模型のようにCGで制作しているのかと思うくらいだ。こうした地形を活かした戦車戦が繰り広げられ、実に見応えのある場面となっている。

空間や場面、状況によって異なる音の響きに注目

緻密に作り込んだ音響で臨場感が高まる

大きな魅力である音響は、エンジン音や砲撃音が戦車の車種ごとにすべて違うといった、細かな作り込みがますます緻密になっている。シリーズを通して見ると実にさまざまな戦車が登場しているが、それらの音も実に多彩だ。砲撃の音も、映像のその場所から発射されているように感じるし、車体をかすめて飛んでいくシーンなどでは、その移動感もしっかりと再現されている。

空間における音の配置も、いっそう巧みになっている。知波単学園との戦いの舞台である密林では、泥濘地を走る感じが実にリアルだ。戦車内の場面では、外部からの砲撃などの音はややくぐもって聞こえ、車内での声の響きも異なっている。映像で描かれている場所の空間の広さや狭さを、音によってもきちんと再現し、臨場感を高めているのだ。

準決勝の相手となる継続高校との対戦では、舞台は雪に覆われた山村が舞台となる。雪原が舞台となったことは過去にもあるが、雪原では音が吸収されるため、リアルにその音を再現すると迫力不足になるそうで、当時もそのバランスに苦労したという話を聞いたことがある。今回も、リアリティと迫力のバランスを取りつつ、より進化した音響を楽しめる。

継続高校の隊長・ミカ。戦車内でも奏でるカンテレの音色にも注目。

© GIRLS und PANZER Finale Projekt

エンジン音や砲撃音のリアリティがすごい

雪原を走る場面では、キャタピラの音はあまりせず、エンジン音だけが響く。急制動や転回で積もった雪が周囲に散っていく場面では、雪が崩れるドシャッとした音もする。砲撃音は迫力はあるが、音が雪原に吸われて、ややくぐもったような音になっているのも雰囲気が伝わる。ちょっと感心したのは、村の家屋の中から窓越しに戦車が走っていくのを眺めるシーン。走行音というよりも、重量感たっぷりのエンジン音だけが聴こえる感じに響いていく。このあたりはまさしく、体感的な音響と言っていい。

このように、3DCGを駆使した映像とその場の空間をリアルに再現する音響とで、実に臨場感のある戦車戦が楽しめる。『最終章』ではドルビーアトモス制作も行われているだけに、立体的な空間の再現や自在の音の定位は、ますます優れたものになっている。その音響の進化ぶりは、5.1ch音声でも十分に楽しめる。

準決勝の舞台は雪原。雪上を走る音の違いが豊かに再現されている。

© GIRLS und PANZER Finale Projekt

まとめ

あんこうチームの練度の高い動きや砲撃を存分に楽しめる

物語の主人公である「あんこうチーム」のIV号戦車は、これまでにも数々の名勝負を繰り広げてきた戦車であり、あんこうチームの面々の練度も高い。特に本作では、知波単学園との戦いで密林でのゲリラ戦で守勢に回るなか、夜戦にもかかわらずあえてライトを点灯して自分の位置を敵にさらして形勢の逆転を図る「ちょうちんあんこう作戦」を展開。継続高校との戦いでは、奇襲を受けて包囲された状況の中で次々と敵戦車を撃破していく勇壮な姿が楽しめる。このあたりは大きな見どころで、ヒーローの大活躍を優れた映像と音響で満喫できる。それだけに、その後の急展開が実にショッキングで、続く第4話を早く見たい気持ちになってしまう

本作は迫力の戦車戦はもちろんだが、大洗女子学園の各チームの面々や対戦相手となる他の学校など、膨大な数の個性豊かなキャラクターの活躍も大きな魅力。実を言うと当初は、「舞台は大きく変わるものの、戦車戦が続くばかりでは飽きてしまう」と思っていた。ところが、既存のキャラクターをさらに深く掘り下げ、新しいキャラクターも続々と登場して、まったく飽きさせない。しかも、映像と音響はますますグレードアップしている。TVシリーズと『劇場版』は見たけれど、『最終章』は見ていないという人もいるかもしれないが、ぜひとも『最終章』も見てほしい。再び“ガルパン”に夢中になってしまうこと請け合いだ。

『ガールズ&パンツァー最終章 第3話』Blu-ray特装限定版のディスクとブックレット

© GIRLS und PANZER Finale Projekt

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発売・販売元:バンダイナムコアーツ
Blu-ray税込価格¥8,580/DVD税込価格¥6,380

▼TVシリーズ&OVA&「劇場版」(公式サイト)
▼「最終章」(公式サイト)
▼@garupan(公式Twitter)

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鳥居一豊(AVライター)

オーディオ、AVの分野で活躍するAVライター。専門的な知識をわかりやすく紹介することをモットーとしている。自らも大の映画・アニメ好きで自宅に専用の視聴室を備え、120インチのスクリーン、有機ELテレビなどを所有。サラウンド再生環境は6.2.4ch構成。

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