〈コロナ禍のサステナビリティ消費〉応援消費とエシカル消費|SDGsで変わる商品・変わる買い方

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コロナ禍によって「買い物のしかたが変わった」と感じている人は多いと思います。「サステナブルな買い物に対する意識が強まった」という人が増えているのですが、では「サステナブルな買い物」とは、具体的にはどんな買い物のしかたをすることでしょう?

「サステナブルな買い物」とは

コロナ禍によって「買い物のしかたが変わった」と感じている人は多いと思います。
図表(1)のように、「サステナブルな買い物に対する意識が強まった」という人が増えているようです。全体としては32.9%ですが、40代と60代の女性では、4割を超えています。「サステナブルな買い物」とは、図表(1)の調査では「環境・社会・経済に配慮した買い物」を指すとしています。具体的には、どんな買い物のしかたをすることでしょう?

「応援消費」に積極的な人7割超

たとえば、「応援消費」はコロナ禍にも注目されました。
営業を自粛せざるを得ない「飲食店」や農産品などの出荷が滞ってしまった「生産者」などを支援(応援)したいと思う人が増えたからです。

〈図表(1)〉
コロナ禍によって変わった「サステナブルな買い物」意識

実際に、飲食店や生産者を支援する気持ちで、飲食・購入した人も少なくありません。
図表(2)の調査によれば、飲食店に対しては30.7%、生産者に対しては23.3%が支援目的で消費をしています。この調査が行われたのは、ちょうどコロナの第2波のころです。

〈図表(2)〉
「飲食店」や「生産者」へ支援目的による飲食・購入経験

さらに「今後は(応援消費を)したい」という人は、飲食店に対しては43.3%、生産者に対しては51.1%にも上りました。その後も続くコロナ禍に、多くの人が応援消費をしたことが伺えます。

図表(2)の調査では、どんな方法で応援消費をしたのかも尋ねています。飲食店に対しては「店内での飲食(外食)」「テイクアウトの利用」、生産者に対しては「直販サイトでの購入」「道の駅など産地で購入」が、それぞれ多くなっています。

もともと、東日本大震災による被災地を支援する目的で、被災地の食材を購入するよう呼びかけたのが、応援消費のはじまりとされています。その後も、災害が起こると、被災地を支援する目的で応援消費が行われてきましたが、コロナ禍では、応援消費をする対象が、地域から店舗へと広がりました。

応援消費には「社会を止めない」というメッセージが込められているように思います。つまり、応援の気持ちを込めて買うのも「サステナブルな買い物」と言えるのではないでしょうか。

コロナ禍で寄付金が増加

図表(3)のように、家計の支出として「つきあい費」が減える一方、「寄付金」が増えているのも、コロナ禍による「消費変化」のひとつと言えるかもしれません。

総務省「家計調査」によれば、昨年の世帯(2人以上)当たりの年間平均支出額で、「寄付金」への支出が「つきあい費」を上回りました。

ふるさと納税も応援消費!?

つきあい費は、家計調査のなかでは「親睦または交際的な要素のある会費」として、「交際費」のなかに分類されています。交際費は全体として、儀礼的な贈答や接待などの慣習が薄れつつあることから減少傾向にありますが、つきあい費は、個人的なつながりの要素が強いので、景気が良くなると増えて、悪くなると減るなど、上下動してきました。

〈図表(3)〉
「つきあい費」と「寄付金」世帯当たりの年間支出額の推移

昨年のつきあい費の落ち込みには、人との接触を断たざるを得なかった、コロナの影響が色濃く感じられます。

寄付金は、つきあい費とは逆に急増しています。コロナ禍に苦しむ団体や施設などへ寄付する人も増えたことでしょう。

実は、この家計調査の寄付金には「ふるさと納税」も含まれます。
ふるさと納税の特徴には、単に寄付するだけでなく、返礼品の地域産品を消費することで産地を応援できるという点もあります。

先述した図表(2)の「応援消費」でも、生産者に対する支援方法として「ふるさと納税」を挙げる人がいました。

総務省によれば、一昨年(2020年)のふるさと納税の受け入れ額は、全国で6,725億円となり、前年より約2,000億円も増えました。さらに、昨年(2021年)はこれを上回ったものと推察できます。

ふるさと納税をする人の多くは「応援したい」という気持ちより、「美味しいものが食べたい」とか「税金控除を受けたい」とか、別の理由からでしょうが、結果としての「応援消費」であっても、各地の「生産活動を止めない」ことに一役買っていると言えましょう。

エシカル消費マークの認知率は低い

図表(4)は、消費者庁による「エシカル消費に関連するマークの認知状況」調査の結果です。
8つのマーク(ラベル)が並んでいますが、上から5つ目の「エコマーク」の認知率が8割超え、次いで、上から2つ目の「オーガニック(有機JASマーク)」が4割弱であったことを除けば、他の6つのマークの認知率は2割未満でしかありません。

あなたは、いくつ知っていますか?

「エシカル消費に関連するマーク」の認知率は、総じて低いことが分かります。さて、図表(4)を見ているあなたは、いくつ知っていますか?

この消費者庁の調査は、2020年2月に行われました。
ちょうどクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号でのコロナ感染についての報道が連日のようにされ、巷ではマスクが不足してドラッグストア等で買うのに行列をつくったり、一方で高く転売されているのが問題になったりしたころです。

もしかしたら、図表(1)のような「サステナブルな買い物」への意識が、このころに芽生えた人もいたかもしれません。また、いま調査すれば、マークを知っている人もずっと多くなったかもしれません。

とはいえ、買い物する際に、商品を選んでいるとき、こうしたマークを見る人の少ないことは、これまでの調査から分かっています。

〈図表(4)〉
「エシカル消費」関連マーク認知状況

たとえば、食品を選ぶときに、注意している「表示」を挙げてみてください。
価格、賞味(消費)期限、産地、ブランド、容量、カロリーや栄養成分などを挙げる人は多いでしょう。買い物時には、その他にも表示されていない鮮度感、安心感、美味しさなど、見た目や感覚的に判断すべきことはたくさんあります。私もそうですが、たまたま買った商品にマークが付いていたのを後で気づいた、という人もいるのではないでしょうか。

しかし、「サステナブルな買い物」を意識するなら、こうした「エシカル消費に関連するマーク」にも興味を持つべきでしょうし、何より知っておいて損にはなりません。なぜなら、「サステナブルな買い物」をする際の目安になるからです。

では、「サステナブルな買い物」と「エシカル消費」って、何がどう関係しているのでしょう?

そもそも「エシカル消費」とは?

「サステナブルな買い物」とは、冒頭の図表(1)で、「環境・社会・経済に配慮した買い物」を指すと述べました。サステナブルは「持続可能な」という意味に過ぎませんが、「環境・社会・経済」と結びついています。

サステナブルという言葉は、国連の「環境と開発に関する世界委員会」が、1987年に公表した報告書のコア概念「サステナブル・デベロップメント(持続可能な開発)」により広まったからです。

「サステナブルな買い物」と「エシカル消費」とSDGsの関連性

これをきっかけとして、現在ではサステナブルといえば「環境に配慮しながら開発(社会の豊かさ、経済の成長)を進めましょう」という意味に捉えられるようになりました。

SDGsのSDも、S=サステナブル、D=デベロップメントです。これに、Gs=ゴールズ(目標)を付けて、2030年までに世界中で達成すべきことを書き出したものが、SDGsということです。

「エシカル消費」は、1989年に英国で創刊された雑誌名です。
商品やサービス、企業などを独自の尺度で測定して「エシカル(倫理的)度」として発表し、読者の倫理観に訴える情報誌だったとか。そのエシカル消費の言葉が広く知られるようになったのは、1997年に、当時の英国の首相が演説のなかで使ったのがきっかけとされます。

たとえば、SDGsには「つくる責任つかう責任」という目標(12)がありますが、「つかう責任」では、まさに消費者の倫理的な尺度が問われます。

このように「サステナブルな買い物」と「エシカル消費」とSDGsは関連しています。具体的に、図表(4)の8つのマークを事例として、SDGsにどう関連しているのか見てみましょう。

SDGsと関連する主な目標

図表(5)に、8つのマークごとに、SDGsと関連する主な目標を挙げてみました。

図表中で「主な」と断っているように、関連するSDGsはこれだけではありません。SDGsは互いに絡み合って最終目標に到達するよう設定されているからです。

マークから分かるSDGsとのつながり

たとえば、最初の「フェアトレード」マークは、国際的に公正な取引(貿易)を推進する目的として、途上国でつくられた農産物などの原材料や製品を、適正な価格で購入していることが証明された商品に付けられます。

これをSDGsとの関連でみれば、適正な価格で購入することで、途上国の農園などで働く人々の生活を守り、貧困をなくし(SDGsの目標(1))、働きがいも経済成長も(SDGsの目標(8))、パートナーシップで目標を達成しよう(SDGsの目標(17))といった意味が、読み取れてきませんか。

〈図表(5) -1〉
エシカル消費関連マークとSDGsとの関連

その他にも、目標(10)(人や国の不平等をなくそう)、目標(16)(平和と公正をすべての人に)など、いくつものSDGsに関連しているので、さらに目標をつなげていくことができます。

図表(5)で、8つのマークのSDGsとの関連を見ていくと、目標が重複していることに気づきます。
たとえば、目標(8)(働きがいも経済成長も)は、「フェアトレード」の他に「オーガニック」「FSC」「レインフォレスト・アライアンス」「MSC(海のエコラベル)」「伝統マーク」など、多くのマークと関連しています。

〈図表(5) -2〉
エシカル消費関連マークとSDGsとの関連

実は、同じ目標でも、具体的に達成すべき「ターゲット」が異なります。
「フェアトレード」の目標(8)のターゲットは「2030年までに、すべての人が生産的で働きがいのある人間らしい仕事につき“同一労働同一賃金”を達成する」ことです。

また、「オーガニック」や「伝統マーク」のターゲットは、「イノベーション等を支援して開発を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などで起業や成長を奨励する」ことです。

さらに、「FSC」は、森林、「レインフォレスト・アライアンス」は農業、「MSC」は漁業(水産資源)の持続可能な取り組みを支援するマークで、目標(8)では「すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する」ことをターゲットとしています。

まとめ

こうした「エシカル消費に関連するマーク」は、図表(5)の他にもたくさんあります。
買い物の際に少し目配りするだけで、いくつも見つけることができます。興味を持ったマークを調べてみると、貢献してみたい目標を見つけられるかもしれませんし、何より「サステナブルな買い物」を意識するきっかけになります。

執筆者のプロフィール

加藤直美(かとう・なおみ)
愛知県生まれ。消費生活コンサルタントとして、小売流通に関する話題を中心に執筆する傍ら、マーケット・リサーチに基づく消費者行動(心理)分析を通じて、商品の開発や販売へのマーケティングサポートを行っている。主な著書に『コンビニ食と脳科学~「おいしい」と感じる秘密』(祥伝社新書2009年刊)、『コンビニと日本人』(祥伝社2012年刊、2019年韓国語版)、『なぜ、それを買ってしまうのか』(祥伝社新書2014年刊)、編集協力に『デジタルマーケティング~成功に導く10の定石』(徳間書店2017年刊)などがある。

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加藤直美(消費生活コンサルタント)

愛知県生まれ。消費生活コンサルタントとして、小売流通に関する話題を中心に執筆する傍ら、マーケット・リサーチに基づく消費者行動(心理)分析を通じて、商品の開発や販売へのマーケティングサポートを行っている。主な著書に『コンビニ食と脳科学~「おいしい」と感じる秘密』(祥伝社新書2009年刊)、『コンビニと日本人』(祥伝社2012年刊、2019年韓国語版)、『なぜ、それを買ってしまうのか』(祥伝社新書2014年刊)、編集協力に『デジタルマーケティング~成功に導く10の定石』(徳間書店2017年刊)などがある。

加藤直美(消費生活コンサルタント)をフォローする
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