バイオプラ最大のデメリット!
「バイオマス」も「生分解性」もダメ?
じゃ、「バイオマス」由来のプラスチックであれば、カーボンニュートラルによって、再生と循環のなかに入れるのではないでしょうか?しかし、それも既存のプラスチック問題と同様に、きちんと処理された場合に限られますし、プラスチック問題を〈その3〉で整理したように、マイクロプラスチックをなくすことにはなりません。
それなら、環境中で分解する「生分解性」のプラスチックにすれば?
これも**〈その3〉**で見たように、環境条件によって、分解しなかったり、分解のし方が変わったりします。しかも、国連環境計画(UNEP)は「たとえ海で分解するプラスチックだとしても、海洋プラスチックごみ問題を解決するものではない」と言います。
なぜなら、分解するまでに時間が掛かり、その間に劣化し、微細片化し、汚染物質を吸着したり、生物によって誤食されたりするからです。さらに、生分解性なら、その辺に捨てても構わないだろうと「ポイ捨て」する人が増えるのではないか、とも言うのです。
図表①には、「バイオマスプラスチック」の活用によって「温室効果ガスの排出抑制」や「枯渇(石油など)資源の使用削減」を図り、「生分解性プラスチック」の活用によって「廃棄物処理の合理化」や「海洋プラスチックごみ削減」を図る、とありますが……。現状では、まだまだ途上ということなのでしょう。
もちろん、バイオプラの開発は日進月歩ですから、環境負荷がなく、安価で、使い勝手がよく、捨てやすいモノがつくられる可能性はあると……、期待しています。ただし、現在のところは、私たちがプラスチックを使う際に注意しながら生活していく必要があるということです。
SDGsの12番目「つくる責任つかう責任」の「つかう責任」に当たります。
識別表示マークってどう?
いまは"5角形"で考えませんか!
バイオプラは、すでに製品に活用されています。図表③のような識別表示マークを見かけることもあります。

右端の「バイオマスマーク」は、プラスチックに限らず、バイオマスを10%以上配合している製品に付けることができます。また、真ん中の「バイオマスプラマーク」は、バイオマスを25%以上配合しているプラスチック製品に付けることができます。
例えば、〈その1〉の図表②に「バイオマス配合のレジ袋の例」を挙げましたが、そのレジ袋には、「バイオマスマーク」と「バイオマスプラマーク」の2つが付けられていました。なぜ2つも付いているのでしょう?レジ袋をよく見ると、レジ袋自体はバイオマスを25%配合してつくられ、そのレジ袋に印刷したインキの一部にバイオマス原料を用いているということが分かりました。
……それで……?
こうしたレジ袋の実体を知って、私たちはどう注意して生活すればいいのでしょう?
本来ならレジ袋を断るところでも、購入したモノによっては、店側の配慮でレジ袋に入れてくれることがあります。その配慮を断るべきってこと……?
それとも、せっかくもらったレジ袋だから「再使用」すればいいとか、または「へぇ、バイオマスが使われているのね」と思うだけでいいとか……?
確かに、まずは「認知」されることを目的としたマークもたくさんあります。しかし、プラスチック問題が「まったなし」なら、私たち消費者の選択がいいかどうか、さらに次の選択へつながるような示唆がほしいと思います。
最近、図表④のような表示マークを見つけました。客観的なデータも必要でしょうが、消費者として選択した商品やサービスが良かったどうか気になります。

図表④の左側のマークは、衣服から排出されるマイクロプラスチックを減らして、海を守ろうというプロジェクトから生まれたそうです。右側のマークは、商品やサービスが排出している温室効果ガスをCO²に換算し、従来よりどれぐらい削減できたかを表示しています。どちらも「だから、買いましょう」というより、「買ってみたら、そうだった」として、共感を集めているようです。
自分の選択を強制されたくありませんが、どう選択するかは悩ましいところです。そこで、図表⑤のように、考えてみるのはどうでしょう?

これまで見てきたように、プラスチック製品を選択しようとする場合には、まず前提として、「使わない」という選択肢を考え、次いで、使うことを選択した場合もごみを「減らす」ことを考え、「再使用」を考え、その後に「リサイクル」を考えます。
理想としては、100%「再生可能資源による代替」がなされればいいのでしょうが、現在のところは望めない状況にあることが分かりました。したがって、再生可能資源による代替を選ぶ場合には、代替できる程度や環境への負荷、生活への必要性など、考えなければならないことも多くなります。
これら(太字の)5つの選択肢を"5角形"として構成したのが、図表⑤です。すべての選択で「考える(再考する)」ことを求められるなんて、面倒くさいですよね。
とはいえ、私たち消費者は消費する以上、そのモノを「使い切る!」ことこそ、大切な役割ではないでしょうか?使い切ることで、そのモノに対して、さらに、そのモノをつくった人に対して「リスペクト(Respect)」も生まれます。
まとめ
プラスチック問題について、4回にもわたって考察してきました。〈その1〉で家庭から出るプラスチックごみの行方を追いかけ、〈その2〉で海洋プラスチック汚染の現状と原因を知り、〈その3〉で問題点を整理するとともに、日本が解決策として掲げる「3R+Renewable」を検討し、今回の〈その4〉では、既存のプラスチックに替えて、日本が導入を推進する「天然素材」や「バイオプラ」導入について、図表①のようにまとめて概観しました。
しかし、現在のところ、既存のプラスチック問題を"すんなり解決"できる方法はないようです。現状では、私たちにできることを考えながら生活していく必要があります。
じゃ、どう考えたらいいのか、ということで図表⑤のような「プラスチック製品の選択"5角形"」に表してみました。プラスチック製品を使う際に、どうぞ思い出してみてください。
執筆者のプロフィール

加藤直美(かとう・なおみ)
愛知県生まれ。消費生活コンサルタントとして、小売流通に関する話題を中心に執筆する傍ら、マーケット・リサーチに基づく消費者行動(心理)分析を通じて、商品の開発や販売へのマーケティングサポートを行っている。主な著書に『コンビニ食と脳科学~「おいしい」と感じる秘密』(祥伝社新書2009年刊)、『コンビニと日本人』(祥伝社2012年刊、2019年韓国語版)、『なぜ、それを買ってしまうのか』(祥伝社新書2014年刊)、編集協力に『デジタルマーケティング~成功に導く10の定石』(徳間書店2017年刊)などがある。