パーキンソン病の治療の中心は薬物療法ですが、補助的に大きな役割を果たすのがリハビリテーションです。薬物療法の効果に加えてリハビリテーションを行うことで、パーキンソン病には症状がまだよくなる、さらによくなる「伸びしろ」があります。音楽療法は、歩行障害に対するリハビリテーションで有効な方法のひとつとしても注目されています。今回はパーキンソン病の歩行障害に効果のある音楽療法について、順天堂大学名誉教授、順天堂大学大学院医学研究科脳神経内科特任教授の林明人先生に解説していただきました。

パーキンソン病の歩行障害が良くなる音楽療法

従来の音楽療法と違い「聴くだけ」でも歩行障害を改善

歩行リズムを取り戻すためには、メトロノームなどの音リズムはとても重要な要素ですが、さらに音楽を組み合わせた音楽療法では、脳内ドパミンの分泌を促進することが知られています。パーキンソン病に対する音楽療法を取り入れることは、日本神経学会でも推奨され、ますます注目を集めています。

本書『パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き 』(マキノ出版)の音楽療法は、これをさらに推し進めた方法です。ねらいは、音リズムを聴くことによる脳内の歩行リズムの正常化にあります。

すなわち、歩行訓練を行わずに、音楽を聴くだけで歩行障害の改善効果を引き出すことを可能にしたという点は、従来の音楽療法とは大きく異なります。

具体的には、クラシックや童謡の旋律にのせて、1分間に120回の音リズムを患者さんに聴いてもらいます。こうして一定のリズムで脳を刺激するだけで、パーキンソン病の患者さんは歩きやすくなり、さらに気分が明るくなるということが研究によって実証されています。

これらの結果は、一定の音リズム刺激によって、パーキンソン病で障害を負った脳内の歩行リズムが回復する可能性を示しています。

画像: 従来の音楽療法と違い「聴くだけ」でも歩行障害を改善

音楽を楽しみながらリハビリの意欲を引き出す

私がパーキンソン病に対する音楽療法の研究をスタートさせたのは、今から25年前の1997年にさかのぼります。以後、国際シンポジウム「Science for Music」など国内外の学会で発表したのち、2000年に英語の論文で報告を行いました。

さらに、2001年の「パーキンソン病フォーラム」で研究結果をポスター発表し、第1回パーキンソン病フォーラム・ベストポスター賞を受賞したことから、翌年の同フォーラムでは講演の機会を与えられました。

そこで、パーキンソン病の歩行障害に苦しむ患者さんに広く音楽療法の有効性をお伝えし、実行していただくためのツールとして、2005年に初のCDブック『パーキンソン病に効くCDブック』、2012年に『パーキンソン病に効く音楽療法CDブック』を上梓しました。

今回の『パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き 』は3冊目となります。

音楽療法を楽しみながら長く続けていただくために、今回はCDを2枚付けました。CDに収録された曲は、リズムをつなぐ心地よいメロディによって、純粋に音楽として楽しむことができます。音楽を楽しめると、体の動きがよくなるだけでなく、気持ちも明るくなり、リハビリテーションに対する意欲を引き出すことにもつながります。

パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き 』の付録のCDは次の2枚です。曲目リストをご紹介しましょう。

画像1: 【パーキンソン病の音楽療法】聴くだけでも歩行障害が良くなる特殊音源を大公開!症状改善の「伸びしろ」は音リズムにあり

パーキンソン病の音楽療法「CD1」

第1部 聴くだけパート
1. ナレーション①
 (聴くだけパート、リズムは1分間に120回)
2. 交響曲第94番「驚愕」(ハイドン)
3. エリーゼのために(ベートーヴェン)
4. くるみ割り人形「小序曲」(チャイコフスキー)
5. くるみ割り人形「行進曲」(チャイコフスキー)
6. くるみ割り人形「中国の踊り」(チャイコフスキー)
7. カノン(パッヘルベル)
8. ペール・ギュント「朝」(グリーグ)
9. オンブラ・マイ・フ(ヘンデル)
10. ディヴェルティメント17番1楽章(モーツァルト)
11. ノクターン第2番(ショパン)
12. くるみ割り人形「花のワルツ」(チャイコフスキー)
13. スラブ舞曲6番(ドヴォルザーク)
14. ピアノ協奏曲第2番1楽章(ベートーヴェン)
15. 星条旗よ永遠なれ(スーザ)

第2部 歩け歩けパート
16.ナレーション②
  (歩け歩けパート、リズムは1分間に90回)
17. 交響曲第9番「新世界より」第2楽章(家路)(ドヴォルザーク)
18.荒城の月(滝廉太郎)
19.ナレーション③(リズムは1分間に100回)
20. ふるさと(岡野貞一)
21.赤い靴(本居長世)
22. ナレーション④(リズムは1分間に110回)
23.トロイカ(ロシア民謡)
24.旧友(カール・タイケ)
25. ナレーション⑤(リズムは1分間に120回)
26. 一週間(ロシア民謡)
27.ワシントン・ポスト(スーザ)

画像2: 【パーキンソン病の音楽療法】聴くだけでも歩行障害が良くなる特殊音源を大公開!症状改善の「伸びしろ」は音リズムにあり

パーキンソン病の音楽療法「CD2」

第1部 聴くだけパート
1 ナレーション①「リズムは1分間に120回」
  (※11と12にはメトロノームのリズムはなし)
2 クラリネット協奏曲 イ長調 第1楽章(モーツァルト)
3 ピアノ五重奏曲「ます」第4楽章(シューベルト)
4 ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第1楽章(ベートーヴェン)
5 「トルコ行進曲」(ベートーヴェン)
6 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第1楽章(モーツァルト)
7 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第3楽章(モーツァルト)
8 「G線上のアリア」管弦楽組曲第3番(J・C・バッハ)
9 「子供の情景」第7番「トロイメライ(夢)」(シューマン)
10 「トルコ行進曲」ピアノ・ソナタ第11番(モーツァルト)
11 「スラブ舞曲」第10番(ドヴォルザーク)
12 オペラ「カルメン」前奏曲(ビゼー)
13 「アヴェ・マリア」(グノー)
14 「野ばら」(シューベルト)
15 行進曲「威風堂々」第1番(エルガー)

第2部 歩け歩けパート
16 第2部ナレーション②
17 ナレーション③「リズムは1分間に90回」
18 「大きな古時計」(H・C・ワーク)
19 交響曲第6番「田園」第1楽章(ベートーヴェン)
20 ナレーション④「リズムは1分間に100回」
21 「とおりゃんせ」(童謡)
22 「ラデッキー行進曲」(J・シュトラウス1世)
23 ナレーション⑤「リズムは1分間に110回」
24 「われは海の子」(文部省唱歌)
25 交響曲第9番「合唱」第4楽章(ベートーヴェン)

「CD1」は、今回のために新しく制作しました。
「CD2」は、2005年に上梓した『パーキンソン病に効くCDブック』の付録と同じ曲目です。現在、この本は絶版ですが、CDの評判がとてもよく、「また聴いてみたい」という声も寄せられていたので、本書にも付けることにしました。
2枚のCDとも曲目の構成は、音楽を「聴くだけのパート」と、音楽を「聴きながら歩く練習をするパート」に分けて監修しました。

画像: パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 www.youtube.com

パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法

www.youtube.com

また今回は、音楽療法の理解を深めていただくための方法として、解説を動画でも見られる工夫も加えました。短時間で見ることができますのでご覧ください。

画像: パーキンソン動画(ショートバージョン) www.youtube.com

パーキンソン動画(ショートバージョン)

www.youtube.com


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