お腹にガスが溜まり痛みを伴う「ガス腹」。あまりの痛みや苦しさに病気かも?と不安に思う人もいるでしょう。ガスの正体は、食事等で飲み込んだ空気や、腸内細菌の活動によるもの。このガスが何らかの原因で増え、腸に溜まることで不快な症状が起こるのです。ガス溜まりはおならを出し切る簡単な方法で予防・解消することができます。消化器専門医である東邦大学医療センター大森病院病院長の瓜田純久先生と、さく病院胃腸内科の相馬渉先生にそれぞれ解説していただきました。【2020年5月20日更新】

注目のガス腹の原因「SIBO」とは?

最近は、ガス腹の原因として「SIBO(小腸内細菌異常増殖症・small intestinal bacterial overgrowth)」も有力視されています。SIBOとは、小腸内で腸内細菌の異常増殖した状態で、悪玉菌が出すガスによってガス腹が進行すると考えられているそうです。さく病院胃腸内科の相馬渉先生に、ガス腹の原因と、ガスをすぐ抜きたい時の「ガス抜き体操」について解説していただきました。

②解説者のプロフィール

画像: ②解説者のプロフィール

相馬渉(そうま・わたる)

さく病院胃腸内科医。2005年、大分大学医学部卒業。大学病院や関連施設にて数多くの消化器内視鏡検査・治療を経験。横浜のたまプラーザ南口胃腸内科クリニックにて「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」の技術を習得後、福岡天神内視鏡クリニックの院長就任。 2020年4月より現職。患者さんに優しい医療がモットー。日本消化器病学会専門医。
▼さく病院(公式サイト)
▼研究分野と専門論文(CiNii)

胃薬や鎮痛剤、ヨーグルトも

ガスがたまる原因はいくつかあります。薬の副作用でガスが増えることもあります。胃薬(胃酸を抑える薬)や鎮痛剤、抗生剤などです。こうした薬を服用中で、おなかの張りがある人は、医師や薬剤師に相談してください。少々意外かも知れませんが、ヨーグルトなどの発酵食品も、腸内でガス産生を活発にするため、ガス腹の人はしばらく控えたほうがいいでしょう。

増殖した細菌がガスを生み出す

最近では(小腸内細菌異常増殖症・small intestinal bacterial overgrowth)と呼ばれる小腸の異常が、ガス腹の有力な原因として注目されています。

大腸と違って、小腸には腸内細菌があまり生息していません。せいぜい1万個くらいです。ところが、胃酸の働きや小腸の機能が低下することによって、ふだんの10倍ほど(10万個超)に異常増殖します。この状態がSIBOです。

SIBOになると、増殖した細菌(主に悪玉菌)が発酵してガスを生み出します。このガスが小腸をパンパンにふくらませたり、一部の細菌を大腸に送り込んだりすることでガス腹が進行するのです。

おなかが張る、おならがよく出る、腹痛や吐き気がするといった症状から、悪化すると過敏性腸症候群などの病気まで招くといわれています。

ガス腹の主な原因まとめ

  • 早食い、口呼吸による空気の飲み込み過ぎ(呑気症)
  • 腸内環境の悪化・便秘
  • 薬の副作用
    • 胃薬(胃酸を抑える薬)、鎮痛剤、抗生剤など
  • ヨーグルトなどの発酵食品の摂取
  • SIBO(小腸内細菌異常増殖症)
    • パンやパスタなどの小麦食品や、砂糖の多い加工食品などのとり過ぎ
    • 間食
    • 運動不足

整腸剤の活用もおすすめ

糖質制限は極端にならぬよう

ガス腹の根本改善には、やはり腸内環境を整えることがいちばんです。食生活に関しては、大切なのはバランスのよい食事をとること。一定の食品に偏り過ぎないようにしてください。糖質制限も極端に走るのはよくありません。ご飯などは、糖質以外に食物繊維が豊富に含まれています。腸の善玉菌の大事なエサになりますから、ご飯は適量とるようにしてください。

私は、便秘やガス腹の患者さんに、という善玉菌を含む整腸剤(強ミヤリサン錠やビオスリー錠など)の活用もお勧めしています。腸内環境を整えるのに、大変有効です。

酪酸菌が産出する酪酸は、大腸粘膜のエネルギー源になり、大腸の動きを活発にしてくれます。酪酸菌はぬか漬けに含まれている善玉菌で、乳酸菌やビフィズス菌より日本人の体に合いやすく、安心で確実な整腸効果が期待できるのです。

整腸剤は原則として副作用がないので、食事と同じように毎日とることができます。1日1回、3錠を飲む習慣を続けているうちに、いつの間にかガス腹や便秘が解消したという患者さんも多数おられます。

「ガス抜き体操」とは

おなかのガスをすぐに抜きたい場合は、「ガス抜き体操」を試してください。ガス抜き体操は、「そけい部のマッサージ」「大腸のマッサージ」「ガス抜きストレッチ」の3つからなります。どれも簡単ですから、どなたでもすぐに始められます。

いずれもあおむけになって、リラックスした状態で、約30秒ずつ行います。就寝前に布団の上で、そけい部こすり、大腸もみ、ガス抜きストレッチの順に行うといいでしょう。また、自分のガス腹に特に効くと思う体操は、症状があるときの、応急処置にも利用してください。

「ガス抜き体操」のやり方

●そけい部のマッサージ

便秘やガス腹で悩む多くの人は、たいてい大腸が長くなっています。特に固定されていないS状(図参照)は、伸びやすく、最終的にはねじれます。すると、物理的に便やガスが通過しにくくなるわけです。

画像: ●そけい部のマッサージ

そこで、伸びてねじれたS状結腸をほどいてやるのが、そけい部こすりです。そけい部とは、股の部分です。そけい部の少し上に、S状結腸があるので、手指でこするうちにねじれが改善してきます。

画像: ❶ あおむけになり、両ひざを軽く曲げ、そけい部に両手のひらを当てる。 ❷ 指をしっかりそろえ、下から上に強くこすり上げる。これを30回行う。

あおむけになり、両ひざを軽く曲げ、そけい部に両手のひらを当てる。
指をしっかりそろえ、下から上に強くこすり上げる。これを30回行う。

そけい部こすりを数回くり返しただけで、腸が動き出し、便秘が改善した、ガスが抜けたという人もおおぜいいらっしゃいます。ただし、そうした腸は、ねじれがクセになっていることが多いので、定期的にそけい部こすりを行い、腸の形を整えてください。

●大腸のマッサージ

おなかの中心部を「の」の字にマッサージするという人は多いのではないでしょうか。しかし、それでは大腸を十分に刺激できません。大腸の図を参考に、大腸をまんべんなくもむつもりで、両手のひらを重ね、大きく強く円を描きます。

そうすることで、おなかが温まり、おなかの張りや痛みが和らいできます。続けているうちに気持ちがよくなって、自律神経(意志とは無関係に血管や内臓をコントロールしている神経)のうちの休息時に優位になる副交感神経が活発になります。

すると、腸のぜん動運動(腸の内容物を送り出す動き)が促進され、停滞したガスや便も動き出すのです。就寝前に行うことで、翌朝驚くほど便が出たという人も少なくありません。

画像: ❶ あおむけになり、両手を重ね、おなかの右下に当てる。 ❷ 両手で強めにおなかを押しながら、時計回りに大きく円を描くようにもむ。大腸に沿って手を少しずつ移動させながらもむ。これを30秒行う。

あおむけになり、両手を重ね、おなかの右下に当てる。
両手で強めにおなかを押しながら、時計回りに大きく円を描くようにもむ。大腸に沿って手を少しずつ移動させながらもむ。これを30秒行う。

●ガス抜きストレッチ

ひざを抱えて胸に近づけるストレッチです。このストレッチを行うと、背中や腰が伸びるとともに、体の深部にある(背骨と太ももの骨をつなぐ筋肉)が伸びて、腹部全体の血流がよくなります。その結果、腸の働きも活発になります。

また、ガス抜きストレッチのポーズをとると、肛門の位置が高くなり、ガスがより抜けやすくなります。そけい部こすりで大腸の形を整え、大腸もみでぜん動運動を促したあとに行うことで、その効果がより発揮されるでしょう。

画像: ❶ あおむけになり、両足を伸ばす。 ❷ 右ひざを両手で抱え、ひざ頭を胸に近づけるようにして10秒間保つ(上半身は動かさない)。 ❸ 左ひざも同様に行う。 ❹ 最後に、両ひざを抱えて、同様に行う。

あおむけになり、両足を伸ばす。
右ひざを両手で抱え、ひざ頭を胸に近づけるようにして10秒間保つ(上半身は動かさない)。
左ひざも同様に行う。
最後に、両ひざを抱えて、同様に行う。

※いずれのガス抜き体操もリラックスして行う。

まとめ

ガス抜きを習慣にしよう

仕事中や、人と会っている最中に、ガスが溜まっているなと自覚しても、ついつい、我慢してしまうことも多いでしょう。今回、瓜田先生と相馬先生に教えていただいた「ガス溜まり」の解消法は毎日の習慣として取り入れることができます。皆さんも、是非参考にしてみてください。

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