新型コロナウイルス感染拡大による、全国の小中学校等の休講措置をうけ、「オンライン授業」が新しい教育の形として広く普及しています。また、ウィズコロナ、アフターコロナ時代の教育スタイルとしても「オンライン教育」は注目されています。この記事では、実際にコロナ禍中においてオンライン講義を実践されている先生に、オンライン講義の配信方法や工夫ポイント、コツなど「オンライン授業のいろは」を伺いました。【解説】善甫啓一(筑波大学・システム情報系・助教)

オンライン講義でのこだわりポイント

ーオンライン講義をする上で独自にこだわっているポイントはありますか?

①板書へのこだわり

オンライン講義事例①で述べたように、「物理の問題としてモデル化を行い,立式して,数学的に解くことで解答を得る」と言う学習プロセスは、どこまで行っても、自分の手を動かして学習する必要があります。スライドの中に埋め込まれた数式ではなく、手書き感がある数式を提供することが,自分で書く意識を高めると思っています。

幸いなことに、講義をしてチョークの粉まみれになることが嫌でしたので、従前からプロジェクター画面にiPadでした板書を写して授業をしていました。よって、オンライン化への移行は容易でした。

画像: 善甫助教の手書きの数式。

善甫助教の手書きの数式。

②対面のコミュニケーションを意識

グループディスカッションの講義では、学習の狙いを果たすため、カメラを確実に付けるように指導しています。物理的に対面している会話だとお互いに察せる話の間など、ノンバーバルなコミュニケーションの要素を、リモートだと受け取りづらくなります。少しでも物理的に対面している状態に近いスムーズなディスカッションのために、カメラは付けるようにしてもらっています。

③講義動画の収録・制作に対するこだわり

▶︎収録時に"聞き手"を用意

講義動画の収録の際に、聞き手を他の人にお願いすることもよくあります。説明が雑な部分やわからない部分を指摘してもらうためです。

▶︎一発録画はせず、必ず編集作業を

また、一発録画ではなく、必ず編集作業をしています。前述したように一時停止・巻き戻しによって時間の概念が変化していること、YouTubeなどの動画コンテンツに触れている学生が多いことから、収録したそのままのスピードではなく、再生速度を少し早めて、無駄な「あー」「えー」などの部分をカットし、板書を書いている時は20倍速くらいで早めて、動画自体をコンパクトにしています。

この編集も自分でやることで、例えば,板書中は無駄口を叩かないなど、編集しやすい収録も作れるようになってきました。また、ファイルサイズを下げるため10fpsくらいに下げることも行っています(30fpsで動く善甫を見たがる人は居ないだろう)。

オンライン講義を今後も取り入れていきたいか否か

ー今後もオンライン講義を活用していきたいとお考えですか?

基本的な科目では積極的に取り入れたい

基礎導入系の科目など、内容が基本的な科目に関しては、積極的に取り入れてゆきたいと考えています。教室の収容人数という物理的制約が無くなることが大きなメリットであると考えています。

ディスカッションを伴う科目に関しては、計りかねていますが、リアルタイムで実施できるのであれば問題ないかと思います。オンライン化に伴う弊害は、著作権の問題さえ回避できれば、然程無いものなのだと思っています。

これからオンライン講義を始める人にアドバイス

ーこれからオンライン授業を始めたいと考えている先生方に向けて、今後も続けていきたいと感じた方法、学生の習熟度が上がった方法などがあれば教えてください。

オンライン授業は複数人での運営が理想

オンライン会議にも同様なことが言われていますが、教員1人では運営は無理だと思います。特にリアルタイムで複数人を相手にするためには、場のマスターだけではなくアシスタントが必要となると思います。

オンラインでも雑談を取り入れてみる

たとえオンラインだとしても、如何に雑談を入れることが出来るかが重要だと思います。700人弱の受講生がいる科目は1年生向けであり、今年の1年生はまだ大学に入構すら出来ていません。私も筑波大学出身なので、「元筑波大生のキャンパスライフ紹介」と称し、私が大学生であった頃の様子をショートショートで紹介しています。これのウケが良いのか悪いのかわかりませんが、一定数の需要があるようです。大学は画面越しの世界だけではないことも積極的に伝えてゆきたいですね。(もちろん情報系の研究者としては完全リモートキャンパスライフはそそるものがありますが。笑)

こぼれ話

研究室運営もオンライン化が余儀なくされている

余談ですが,現在,授業だけでなく、研究室運営もオンライン化が余儀なくされています。研究室の構成要素は、オンライン化が容易な部分(文献調査,研究計画,議論,論文指導,ソフトウェア開発等)は多くありますが、「集団で集まって学び合いを実現する場」と言う重要な要素があります。

▶︎仮想的な研究室(XperLab)の運営

これも、面白半分でオンライン化が予測された3月中旬から、Skype上で仮想的な研究室(仮想XperLab)を立ち上げて、平日の昼間に構成員の学生たちに繋いでもらっています。

ここで、事務処理や授業の情報交換などのフォーマルな情報交換だけではなく、ちょっと声をかけたい時の様子伺い、雑談や一緒にビリーズブートキャンプをするなどインフォーマルなやり取りを行う場としても活用しています。毎夕にある、何を言っても「すっごーい!」「えらーい!」とみんなで言い合う「フレンズたいむ」と名付けた日次活動報告会なども、みんな楽しんでいるようです。

▶︎カメラを使って「ノンバーバル」なコミュニケーションに近づける

その際に、物理的に研究室にいる時と同様に顔を見せてもらう(=カメラをオンにする)様にしています。最初はカメラに映ることに慣れないかと思いますが、冷静に考えると、物理的に社会生活を送る上で、顔にモザイクを掛けて歩いている人なんていませんよね。

素性の知れぬ不特定多数相手は顔出しは避けるべきですが、内輪の集まりやグループでディスカッションさせる際には、少しでもノンバーバルなコミュニケーションの促進のためにカメラを付けた会話をするべきだと思っています。

オンライン講義のバリアフリー化にも対応

また、筑波大の講義では,障がいを持つ学生に対する配慮・対応は殆どの講義が要望に応じて実施しますし、それをサポートするセンターも備えています。今年度は需要がなかったので、特に実施していませんが、次年度以降のためにそれを想定した準備をしておくべきですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?さまざまなオンライン授業用のツールの一長一短や、現場での情報のやり取りのコツ、オンライン資料の著作権の問題など、これからオンライン教育を取り入れていきたいと考える際に、参考になるヒントが随所に散りばめられていたのではないでしょうか?

とはいえ、教育機関の規模は、大学のような大きな組織から、個人塾など小規模なものまでさまざま。この記事で取り上げたようなオンライン授業を今すぐに実践するのは難しいという方も多いと思います。そんな時は、オンデマンド型・リアルタイム型の併用、収録動画の編集(板書の時は動画の速度を速める…など)のコツなど、取り入れられそうな要素から試してみてください。

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