【デ・ジ・キャラット】令和の今なぜ注目?2000年代のオタク文化を象徴したコンテンツの魅力

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今回は「令和のデ・ジ・キャラット」プロジェクトとして復活を果たしたキャラクターコンテンツ「デ・ジ・キャラット」についてご紹介します。元はアニメグッズなどを手掛けるブロッコリーのマスコット的なポジションとして誕生した経緯を持ちながら、なぜ今に至るまで支持を集めているのでしょうか。その理由を筆者の視点から解説していきます。

令和に復活!『デ・ジ・キャラット』とは?

90年代後期からゼロ年代中期に一世を風靡

2021年6月にブシロードより発表された「令和のデ・ジ・キャラット」プロジェクト。2022年の誕生24周年(メインキャラクター「でじこ」の口癖「~にょ」にちなんだもの)を機に、2006年の「ウィンターガーデン」以来16年ぶりとなる完全新作アニメの制作・放映などが発表されました。かつて一世を風靡したマルチメディア企画のリメイクとして、大きな話題を集めています。

とはいえ、デ・ジ・キャラット自体がトレンドとしてオタクカルチャーのなかで人気を博していたのは90年代後期からゼロ年代中期にかけてのこと。今では「懐かしさ」を通り越し、そもそも存在自体を認知していない方も珍しくないでしょう。そこで、まずは「デ・ジ・キャラット」シリーズの誕生から、トレンドとなった経緯までを整理してお伝えします。

「ゲーマーズ」のマスコットキャラクターとして1998年に誕生

「デ・ジ・キャラット」は当時、株式会社ブロッコリーが運営していたホビーショップ「ゲーマーズ」(※現在はアニメイト傘下にて運営)のマスコットとして誕生。そこを起点として、メディアミックス的に展開されたキャラクターコンテンツです。

当時のショップ情報誌に掲載されていた4コマ漫画が初出とされ、登場以来「ゲーマーズの顔」として多くのファンに親しまれてきました。なお、初出となった漫画は現在もブロッコリー公式HPにて閲覧できます。

デ・ジ・キャラット=通称「でじこ」を主役としつつ、妹分にあたる「ぷちこ(プチ・キャラット)」や、ライバル的キャラクターの「うさだ(ラ・ビ・アン・ローズ)」、「ぴよこ(ピョコラ=アナローグIII世)」なども登場し、人気タイトルとして各メディアを賑わせました。00年代当時の秋葉原や、オタク文化の顔役として活躍したタイトルでもあります。

漫画・アニメ・ゲーム…マルチに展開されるキャラクターコンテンツの先駆け

「デ・ジ・キャラット」は、当時のオタク文化における流行をマルチに取り入れたデザインや、それを逆手に取った毒舌的なキャラクター性などが人気に火をつけました。そしてその後、アニメやゲーム、漫画やライトノベルといったさまざまな媒体で、メディアミックス展開されていったのです。

1999年には、情報番組「ワンダフル」(TBS経歴)内で初のアニメ化を果たし、各キャラクターに声優が配されました。以降アニメを中心に、ゲームやドラマCD、ライトノベルやラジオなど、さまざまな媒体でコンテンツが発表され、また関連グッズも数多くリリースされました。

「キャラクターコンテンツ」として始まった企画は、ソーシャルゲームなどが存在しなかった当時では比較的珍しく、今に続く「萌え文化」や「アキバカルチャー」の先駆け的存在として活躍しました。

「デ・ジ・キャラット アニバーサリーベストアルバム」収録楽曲ファン投票全曲試聴

www.youtube.com

「令和のデ・ジ・キャラット」プロジェクトとは

「令和のデ・ジ・キャラット」プロジェクトは、そんなデ・ジ・キャラットシリーズを現代に合わせて復活させるために始まったコンテンツです。

コラボカフェの開催や新規グッズの展開なども行われており、新作アニメ放映前から既に水面下で盛り上がりを見せています。

以前にも10周年・15周年といった節目で、たびたび「デ・ジ・キャラット」シリーズに関連した企画が行われることもありました。しかし、「令和の」というタイトルや、完全新作の発表などからも推察できるように、今までよりも力の入った内容になると思われます。

新キャラクターとして、株式会社ブシロード(創業者がブロッコリーと同一の企業)のマスコットキャラクター「ブシロドノミコト(通称ブシロ)」とのコラボレーションなども展開されており、今後の動向にも期待したいところです。

デ・ジ・キャラットが支持され続ける理由とは?

デ・ジ・キャラットが今もなお支持される理由

歴史を辿ると、1998年から続く老舗タイトルである「デ・ジ・キャラット」シリーズですが、なぜここまで長きにわたって親しまれているのでしょうか。

時代の変遷に合わせて変化できる高い柔軟性

「デ・ジ・キャラット」は、主人公・でじこのストレートな萌え要素と、シニカルで毒舌なキャラクター性のギャップが、心をつかんで離しません。さらに、キャラクターグッズなどの販売を行うショップのマスコットならではの、オタク文化に関するパロディやオマージュの引き出しの多さも、当時人気を集めました。

でじこの萌え要素と毒舌なキャラクター性のギャップがたまりません。

digicharat-reiwa.com

これらの要素が、時代ごとの流行を取り入れ、自虐ネタも含む多彩なアプローチで適合できる柔軟性の高さを、コンテンツ全体に与えています。そのあたりが、今なお廃れず受容されている理由ではないかと推察できます。

近い性質を持つコンテンツとして挙げられるのが、かつて週刊少年サンデー誌上で連載されていた「かってに改造」「さよなら絶望先生」といった久米田康治氏の作品や、氏のアシスタントとしてキャリアをスタートし「ハヤテのごとく!」などのヒットを生み出した畑健二郎氏の作品などでしょう。余談ですが、サンデーで先日スタートした久米田康治氏の新作「シブヤニアファミリー」の1話掲載時には、畑健二郎氏連載の「トニカクカワイイ」のタイトルが「ハヤテのごとく!2」にすげ替わるなど、ブラックジョーク気味のパロディに徹する姿勢は今なお貫かれています。

上述したコンテンツ内でも、「流行やサブカルチャーに対するパロディ・オマージュ」が作品全体で行われています。パロディ対象を知っている人は文脈で笑い、知らない層は作品をきっかけに対象を知る、といった読み方が行われていました。

当時の内容には時代性を感じるものの、同じフォーマットを現代に転用すれば、一気に「新しさ」を感じることができるのです。その構造こそが、「デ・ジ・キャラット」が色褪せずに迎え入れられるメカニズムなのではないでしょうか?

90年代~ゼロ年代に生まれた「データベース消費」という形

また、「デ・ジ・キャラット」に関しては、批評家の東浩紀氏が自著「動物化するポストモダン」内で論じています。多数の萌え要素(メイド服・ネコミミ・鈴・しっぽ)をコラージュ的に散りばめたキャラクターであるとした上で、90年代後期以降のサブカルチャーにおける消費のあり方を「データベース消費」と定義し、情報の集積そのものがコンテンツ化しつつあることを指摘しています。

これは、同じく批評家の大塚英志氏が、80年代カルチャーを「物語消費」(商品やグッズの消費行動が単体の個性ではなく、世界観やストーリーの文脈から行われること)と定義したことに対し、90年代以降はどう異なるかを論じたものとなります。

詳細に関しては省略するとして、「デ・ジ・キャラット」の個性や特徴、展開される内容などを今一度鑑みると、たしかに前述した柔軟性の高さは「データベース消費」的なフォーマットであることが分かります。

「デ・ジ・キャラット」の柔軟性の高さは「データベース消費」的なフォーマットに当たります。

twitter.com

物語消費の時代には「世界観がキャラクター・アイテムを生み出す」(物語が先)という構図が取られていましたが、データベース消費の時代においては「キャラクターが世界を形作る」(情報が先)であるといった違いが見られます。

では、現代はどのような時代であるかと言えば、それは「シェアリング消費」の時代ではないかと考えられます。SNSをはじめとする情報網のさらなる発達をきっかけに、それまでオタク的属性を保有していなかった人々も、通常のドラマや映画などを消費する感覚で、アニメ・ゲームといった文化に親しむようになりました。もはや、メインカルチャーとサブカルチャーの垣根は存在しなくなりました。

また、好きなキャラクターやコンテンツに対する形容から「嫁」といった所有的な文脈が取り除かれ「推し」という言葉にすげ変わりました。「萌え」は「尊い」などの語彙に変化し、すべては「自分が良いと感じたモノの魅力を広め、逆に他の良さを受け取る」ための意味へと移行しつつあります。従来のオタクが取っていた「所有」という行動は、ネット上や友人間での「シェア」へと転化したとも取れるでしょう。

つまりは、「良いものを独占し、自己の中で良さを堪能する」といった在り方は既に一般的ではなく、「良いものを他者と分かち合うために探索する」といったコミュニケーションツールとして、各種コンテンツが存在する時代になりつつあるのです。

まとめ

今回は「令和のデ・ジ・キャラット」について、その歴史を一から紐解きながら、魅力や人気を集めた背景などを整理してお伝えしました。消費行動の在り方が大きく変化した現代において、「デ・ジ・キャラット」のポジションはどのように変化するのでしょうか。「ショップのマスコットキャラクター」として誕生したでじこは、元から他のモノを「宣伝・紹介」するガイドとしての役割を備えています。そんな性質こそが、SNSによる「シェアリングの精神」が浸透した今、改めて求められているのかもしれません。

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松島広人(フリーライター)

Webディレクターとしてコンテンツの企画・編集・校正・執筆・SEOを担当する傍ら、フリーランスのWebライターとしても精力的に活動。業種・業界を問わず多数のジャンルを手がける。ポップカルチャー・サブカルチャーにも精通しており、幅広い知識を活かしたライティングを得意とする。

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