家電やITの世界では、さまざまな新製品や新サービスが登場しているが、そういった新しい「モノ」や「コト」を理解するうえで知っておきたいキーワードがたくさんある。そこで、現代を象徴する必須用語の基礎知識を数回にわたり、わかりやすく解説していこう。
IoT家電/HEMS(スマートハウス)/宅配ボックス/スマートロック/クラウドAI/コミュニケーションロボット/サブスクリプション/ビットコイン
IoT家電
インターネット経由で新たなレシピをダウンロードできたり、外出先から制御ができたりする家電が続々と登場している
2016年ごろからよく見かけるようになった言葉が「IoT家電」だ。IoTとは、Internet of Thingsの略で、「物のインターネット」などと訳されるが、要するにインターネットにつながることで、より便利になった物のことだ。
もともとインターネットにつなぐのが当たり前のパソコンやスマホなどは、IoTとは呼ばない。つまり、IoT家電とは、インターネットに接続できる家電のことであり、エアコンやオーブンレンジ、冷蔵庫、ロボット掃除機などが挙げられる。
例えば、シャープのウォーターオーブン「ヘルシオ AX-AW400」は無線LAN機能を内蔵しており、クラウドサービス「COCORO KITCHEN」と連係して、音声対話による献立相談などを実現する。
また、パナソニックのエアコン「エオリアWX/Xシリーズ」も無線LAN機能を標準搭載しており、スマホアプリを使ってエアコンの操作や室内空気の状況確認などが可能だ。寒い冬でも、帰宅途中で部屋のエアコンの暖房をオンにできるので、冷え切った部屋に帰らずに済むわけだ。
このように、家電のIoT化によって、日常生活がより便利で快適なものになるため、今後もこの動きは進んでいくであろう。
HEMS(スマートハウス)
政府は、2030年までにすべての住宅にエネルギーを管理するシステムを設置することを目指している
HEMS(ヘムス)とは、「Home Energy Management System」の略で、家庭で使われているエネルギーを管理するシステムのことだ。HEMSによりエネルギーが「見える化」されることで、無駄なエネルギーを節約できる。
HEMSの利用には、HEMSコントローラーとエネルギー計測ユニットが必要だ。分電盤の変更が必要になる場合もあり、導入費用は10万〜20万円程度になる。
なお、政府は過去に二度、HEMS導入補助金を交付してきた。また、地方自治体によるHEMS導入補助金も存在する。HEMSの導入に当たっては、これら補助金の制度を上手に活用したいところだ。
宅配ボックス
集合住宅や戸建て住宅をはじめ、駅やコンビニ、公共施設などで宅配便を受け取ることができる宅配ボックスが増えている
受取人が不在の時でも宅配便を受け取れるようにした鍵付きの箱、またはロッカーの設置が進んでいる。これが宅配ボックスだ。
以前から、マンションなどの集合住宅では設置されている物件も多かったが、最近は、住宅の自宅玄関に取り付けるタイプの個人向け宅配ボックスや、駅やコンビニなどに設置され、自分の都合のいいタイミングで荷物の受け取りができる宅配ロッカーも増えてきた。
例えば、パナソニックの戸建住宅用宅配ボックス「コンボ」は、サイズが4種類用意されており、エントランスに合わせてさまざまな設置方法が選べる。
また、Packcity Japanは、2016年7月から「PUDOステーション」と呼ばれる宅配ロッカーの提供を開始した。PUDOステーションは、駅やコンビニなどに設置されており、メールで送信されてきた受け取り用のパスワードを入力することで、自分宛ての荷物を受け取ることができる。
しかも、特定の宅配事業者だけが利用できるのではなく、複数の宅配事業者が利用できるオープン型となっているため、幅広く活用することができる。現時点では、ヤマト運輸や佐川急便、DHLジャパン、順豊エクスプレスがこのPUDOステーションへの配送を行っている。PUDOステーションでは、宅配ロッカーの設置場所を検索することができる。
スマートロック
サムターンに取り付けるタイプだけでなく、LTEモジュールを内蔵し、より多用途に使えるタイプも登場
スマートフォンなどの機器を用いて開閉を行う鍵がスマートロックだ。ドア内側のサムターンにかぶせる形で取り付けられるものが多く、工事や鍵の交換は不要である。
スマートロックは、鍵を電子的に受け渡ししたり、一定時間のみ有効な鍵を生成できたりといった利点があり、オフィスやコワーキングスペース(フリーランスの個人など、各々独立した業者が共有するシェアオフィスのこと)での利用にも向いている。
また、tsumugが発表したコネクテッドロック「TiNK」は、LTEモジュールを内蔵し、直接インターネットに接続できることが特徴だ。鍵を開けるための権限をリアルタイムに管理でき、誰がいつ利用したかという履歴も把握することができる。
クラウドAI
インターネット上のクラウドで動く人工知能。スマートスピーカーと連係することで、さまざまな情報を伝えてくれる
クラウドAIとは、AI(人工知能)をイン ターネット上のクラウドで動くサービスとして提供しているものだ。クラウドを使うことにより、インターネットに接続さえできれば、高いコストがかかるAI処理機能をそれぞれの端末に搭載しなくても、音声認識をはじめとするAI機能を利用できるわけだ。
代表的なクラウドAIとしては、Googleの「Googleアシスタント」、Amazonの「Amazon Alexa」、LINEの「Clova」、IBMの「IBM Watson」などがある。
クラウドAIは、スマートフォンの音声アシスタント機能として以前から使われているほか、最近では企業のコールセンターなどでの採用も進んでいる。
クラウドAIを使ったコンシューマー製品としては、スマートスピーカー(AIスピーカー)に注目が集まっている。LINEの「Clova WAVE」やGoogleの「Google Home」、Amazonの「Amazon Echo」が代表的だ。
これらのスマートスピーカーは、各社のクラウドAIと連係して動作し、音声対話によって、天気予報やニュースの確認、スケジュールの確認や入力、家電の制御、音楽やラジオの聴取などが可能になっている。
コミュニケーションロボット
ロボットは、音声や身振りなどで、生活に癒やしや潤いを与える存在になりつつある
コミュニケーションロボットとは、音声や身振りなどによる人間とのコミュニケーションを実現し、ペットや相棒のような存在として、日常生活に癒やしや潤いを与えてくれるロボットである。数年前、ソフトバンクの「Pepper」や、シャープのモバイル型ロボット電話「ロボホン」が登場し、話題となったのを覚えている人も多いだろう。
2017年5月には、トヨタから小型コミュニケーションロボット「KIROBO mini」の先行販売が開始されたほか、2017年11月には、コミュニケーションロボットの元祖ともいえるソニーの犬型ロボット「aibo」が、実に12年ぶりに復活することが発表され、大きな話題となった。
aiboは、数多くのセンサーを搭載し、クラウドと常時接続するなど、この12年の世の中の変化を感じさせるロボットへと進化している。予約販売分が数十分で売り切れたほどの人気で、今、コミュケーションロボットに再び注目が集まっている。
さらに、2018年末までに、Pepperの生みの親である林要氏が率いるGROOVE Xが開発中のコミュニケーションロボット「LOVOT(ラボット)」が発表される予定。コミュニケーションロボットが当たり前に存在する世界が、もうそこまで来ているのだ。
サブスクリプション
月額や年額で一定料金を支払うことで、さまざまなサービスが使い放題になる
サブスクリプションとは、月額、または年額で一定料金を支払うことで、支払っている期間内はサービスが受けられる制度のこと。月額/年額定額制ともいう。
現在の日本では、動画配信、音楽配信、雑誌/書籍配信などのコンテンツ配信サービスに採用されることが多く、そのほとんどが期間内はコンテンツを無制限に利用できる「○○放題」となっている。
定額見放題の動画配信は、「Netflix」「Hulu」「dTV」「DAZN(ダ・ゾーン)」「Amazonプライム・ビデオ」などが人気。定額聴き放題の音楽配信は、「Apple Music」「Google Play Music」「LINEミュージック」「AWA」「Spotify」「Amazon Prime Music」などが人気がある。こちらはメーカーやネット企業の大手が運営するサービスが目立つ。
定額読み放題の雑誌/書籍配信は、「dマガジン」「ブックパス」「楽天マガジン」「U-NEXT」「Kindle Unlimited」など、キャリア系のサービスが目立つ。
特に、動画見放題と音楽聴き放題を含むさまざまなサービスを3900円/年で提供するAmazonのお得感は群を抜いており、サブスクリプションビジネスを牽引する存在となっている。
ビットコイン
ネット上の仮想通貨として流通するビットコイン。わずかな期間で相場が乱高下するなど、投機の対象としても話題
ビットコインとは、暗号技術を使って送金管理が行われるデジタル通貨の一種。「仮想通貨」あるいは「暗号通貨」とも呼ばれる。
中央銀行で資金の流れを管理する従来の通貨とは異なり、「ブロックチェーン」と呼ばれるデジタル台帳を分散管理する技術を用いており、安全性が高い点に特徴がある。
これまで、日本国内では、一般的な通貨や電子マネーに属さないグレーゾーンの扱いだったビットコインだが、2017年の改正資金決済法の施行によって、現実の通貨との取り引きを行う「ビットコイン交換所」が規制対象の登録制となり、それに対応できない業者が淘汰される形となった。その一方で、残った業者は政府のお墨付きを得た形となり、より安全性をアピールするようになっている。
国外に目を向けると、例えば中国のように、交換所が締め出されているケースもある。しかし、だからといってネット上でのビットコインのやり取りそのものを規制することはできないため、ネットで入手したビットコインを日本などでの買い物に利用するなど、国をまたいでの決済や送金に活用する手段としても注目を浴びている。
また、昨今ではビットコインの取り引きに資金が集中し、1年も経たずに価格が20倍以上に跳ね上がるなど、一種の投資ブームの対象となっている。この現象は、ビットコインから分裂した「ビットコインキャッシュ」や、同種の技術を用いた「オルトコイン」(ビットコイン以外の仮想通貨の総称)にも波及し、仮想通貨全体の価格水準を押し上げている。
解説/石井英男(テクニカルライター)/福多利夫(フリーライター)/鈴木淳也(ITジャーナリスト)