オールマイティに使うならHVかPHV、近距離移動が多い人はEVがおすすめ
現在、クルマのパワートレーン(動力伝達装置)の主流は、ガソリンやディーゼルの内燃機関を搭載するタイプだ。
ただ、今後は内燃機関だけのモデルは減少傾向で、内燃機関にモーターを組み合わせたハイブリッド(HV)、さらに、バッテリーを多く搭載して外部からの充電を可能にしたプラグイン・ハイブリッド(PHV)が主流となっていくだろう。
これらのクルマは動力源を二つ搭載するので、コストが高くなったり、重量がかさんだりする問題はあるものの、既存のインフラにおいては最も受け入れられやすいタイプといえる。
オールマイティさが光るPHV
一方、日産リーフを皮切りに本格投入がスタートした電気自動車(EV)は、効率や性能面では内燃機関を超える部分もあるが、航続距離と充電時間の課題はまだまだ残っており、技術革新が求められている。
さらにトヨタ・MIRAIが切り開いた水素燃料電池車(FCV)は、EVのデメリットを解消するものの、EV以上に水素ステーションなどのインフラ整備が課題となっている。
では、現時点において、これら次世代型のパワートレーンはどう選ぶべきか?
残念ながら「これが正解!」というものはなく、目的や用途に合わせて選択するのが賢明となる。
例えば、日々の通勤から休日のレジャーにまで、オールマイティに使いたいのならHVもしくはPHVがおすすめ。
逆に、近距離移動がほとんどという人なら、EVがいい選択肢になる。
特に、PHVやEVについては、自宅の駐車スペースに充電設備が設置可能であることが、重要な条件となるだろう。
近距離移動が多いならEV
サービスエリアでは充電待ち必至!? 電気ステーションはまだまだ数が足りない?
2010年に登場した初代日産・リーフの販売に合わせて、日本でも充電インフラの拡充が行われている。
2017年1月現在、日本全国に設置された急速充電器の施設数は6935ヵ所(基数では7204基)で、引き続き増加傾向だという。ちなみに、高速道路上ではガソリンスタンドよりも急速充電器の数が上回っているそうだ。
これなら「EVで長距離走行をしても電欠の心配はない」といいたいところだが、そこにはまだまだ課題がある。
急速充電機といってもガソリン/ディーゼルのように数分で満タンというわけにはいかず、現在は、約30分かかってしまう。
電気ステーションは足りない?
そのうえ1基(最近は2基の場所も)しか設置されていないため、タイミングが悪いと充電待ちで長時間ロスしてしまうことも。さらに急速充電器の種類によっても充電量が異なるため、思うように充電されないケースもある。
しかし、技術革新も進められており、高出力化によって航続距離100キロ相当分を8分45秒で充電可能な急速充電施設も増えてきているようだ。
メーカーによって微妙に異なるハイブリッドシステムの最適解はどれだ?
「21世紀に間に合いました」のコピーとともに登場した初の量産ハイブリッドカー・初代プリウスが登場してから20年を迎える。当初はイロモノ扱いだったが、今やさまざまなモデルでハイブリッドが採用されている。
ハイブリッドには、大きく分けると三つの方式がある。
まず、エンジンをモーターの力でアシストする「パラレル式」。エンジンとモーターを同軸上に置くシンプルなシステムで、世界の多くのメーカーが採用する。
次に、エンジンで発電した電力でモーターを駆動させるのが「シリーズ式」。日産(e-POWER)、ホンダ(スポーツハイブリッドi-MMD)が採用する。
三つめは、先述の二つの方式を緻密にコントロールする「シリーズパラレル式」。こちらはトヨタ/レクサス(THS-II)が採用する。
シリーズパラレル式には賛否も
この3方式が、メーカー独自の技術やこだわり、モーターの使い方(燃費を上げたい/パフォーマンスを上げたい)などにより、さらに細分化されている。
では、どれが最適なのか?
内燃機関に近いフィーリングが味わえるのはパラレル方式で、EVのフィーリングを航続距離の心配なしで体感できるのがシリーズ式。
シリーズパラレル式は、両方のいいところ取りといいたいが、アクセル操作とリンクしない独特の操縦感覚や、製造コストに賛否がある。
解説/山本シンヤ(自動車研究家)