近年、冷蔵庫がとても省エネになっている。10年前と比べて、消費電力は半分以下、電気代は年間1万円もかからない。しかも、本体サイズは変わらないのに容量が増えていて、食品の大量ストックが可能。今回は、こうした使い勝手を軸に、最新モデルを見ていこう。
冷蔵庫の進化真空断熱材の採用により庫内が広くなった
ここ10年くらいの間に、冷蔵庫はものすごく省エネになった。10年前の同等製品と比べて消費電力は半分以下、電気代は、1年間で1万円もかからない。その要となったのが真空断熱材で、外筐はもとより、庫内各室の境界部に使用することで、効率的な冷却と安定した温度管理が実現し、消費電力が激減した。
これは、使い勝手にもメリットをもたらしている。高性能な真空断熱材を使うことで、外筐や境界部の薄型化が進み、そのぶん庫内スペースが広く使えるようになった。例えば、本体幅が68.5センチの冷蔵庫の場合、以前は450〜500リットル程度だった容量が、最新モデルでは550〜600リットルにまで大容量化している。冷蔵庫は「大は小を兼ねる」の典型なので、同じ設置スペースなら大容量のほうが使いやすく、このサイズが近年の売れ筋。庫内が広いと、見通しがきいてフードロスを減らせるし、一度にたっぷり買って保存できるから、買い物の回数も減らせる利点がある。
真空断熱材は高価なため、これまではコストアップを価格に反映させやすい500リットル以上の製品に採用されていた。でも、ここ数年、改良や量産が進み、最近では本体幅60センチクラスの製品にも、高性能な真空断熱材が採用されるようになってきた。消費電力は10年前の同等製品の半分以下で、容量は400〜450リットルに増加し、機能面も550〜600リットルクラスと遜色ない。夫婦二人や単身世帯には、このサイズもおすすめだ。
冷蔵庫は高価なので、そうやすやすと買い替えられるものではないが、もし、今の冷蔵庫を10年以上使い続けているなら、最新モデルに置き替えるのが賢明。電気代を節約でき、使い勝手もいいので、安心感と同時に高い充足感が得られる。
本体幅が68.5センチで600リットルクラスが主流!
最新の注目は、定格内容積が600リットル前後のモデル。主要5社の最新モデルをセレクトした。
シャープ
SJ-GX55E
実売価格例:34万6500円
3段構造の大容量冷凍室「メガフリーザー」や軽く触れるだけで扉が開く「電動アシストドア」を搭載。AIoTクラウドサービス「COCORO KITCHEN」にも対応。
東芝
GR-P600FWA
実売価格例:40万8240円
エチレンガス分解性能が向上し、野菜の老化をさらに抑制する「もっと潤う摘みたて野菜室」を装備。スマホで運転状況がわかるクラウドサービスにも対応。
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パナソニック
NR-F604HPX
実売価格例:38万2790円
脱臭・除菌して庫内を清潔に保つ「ナノイーX」を搭載。「Wシャキシャキ野菜室」はモイスチャーコントロールフィルターが改良され、最適湿度をキープ。
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日立
R-HW60J
実売価格例:24万1270円
真空で密閉して肉や魚を長もちさせる「真空チルド」、眠らせるように野菜を保存する「新鮮スリープ野菜室」など、鮮度キープと使い勝手のよさを追求。
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三菱
MR-WX60D
実売価格例:39万2500円
「氷点下ストッカーD」「切れちゃう瞬冷凍」「ワイドチルド」「しっかり冷凍室」など五つの温度帯でおいしさが長もち。野菜室はビタミンCがアップする。
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機能の充実肉や魚を凍らせない機能や野菜長もち機能が人気
今回セレクトした5モデルは、いずれも本体幅68.5センチの最新モデルで、寸法、ドア数、消費電力などの基本部分もほぼ同じ。容量は、シャープ機だけが550リットルクラスで、ほかの4モデルは600リットルクラスだ。ただし、各モデルとも、使い勝手に違いがある。
例えば、シャープの冷凍室は、他社の1.5倍の大容量になっていて、深さの異なる3段の棚にたっぷり収納できる構造。最上段には、可動式の仕切り棒まで備える。
日立の冷凍室には、深さ約5センチの大型アルミトレイが装備されている。広いトレイには食品を重ねずにたくさん置けるし、素早く冷凍できるので、おいしいホームフリージングが可能になる。
生の肉や魚を、ギリギリ凍らないマイナス1〜4℃でストックする機能も、近年、各社で標準化されつつある。東芝の「速鮮チルド」、パナソニックの「微凍結パーシャル」、日立の「真空チルド」、三菱の「氷点下ストッカー」と手法はさまざままだが、生の肉や魚を3〜5日で使いきりたいとき、この機能が役立つ。
野菜室は、鮮度を保つ工夫が注目される。シャープの「雪下シャキット野菜室」は2〜5℃の低温で野菜を長もちさせるし、パナソニックの「Wシャキシャキ野菜室」はプレートとシャッターで密閉度を高め、フィルターで湿度をコントロール。LED光を照射してビタミンCをアップさせる(三菱)、プラチナ触媒を利用して栄養の減少を抑える(日立)などの斬新な機能も登場している。
また、東芝、シャープ、三菱の一部機種では、野菜室を中央に配置して使いやすさを追求する。立ったりかがんだりが減り、重たい野菜も楽に出し入れできる。高性能な真空断熱材を境界部に使用することで、野菜室が中央でもそれほど消費電力に影響が出なくなっているので、今後は、このスタイルが他社にも波及するかもしれない。
●選ぶ際はここをチェック! 冷蔵庫のトレンド
(1)横幅はそのままで大容量化
高性能な真空断熱材を採用することで、筐体はもとより、庫内各室の境界部の薄型化が進み、そのぶん庫内スペースが広くなった。横幅68.5センチで550〜600リットル、同60センチで400〜450リットルと大容量化している。
(2)大容量でも低消費電力
高性能な真空断熱材により、効率的な冷却と安定した温度管理を実現し、消費電力は、10年前の同等製品の半分以下に激減している。気温に合わせて強〜弱を自動制御する省エネ機能も装備されている。
(3)多彩に活用できる冷凍室
上段冷凍室はホームフリージング用に、下段冷凍室はストック用に向く。下段は2〜3段構造になっていて、シャープは最上段に可動式の仕切り棒を装備。日立は最上段がアルミトレイになっていて、デリシャス冷凍が可能。
(4)野菜室を真ん中に配置
東芝は、全モデルで野菜室を中央に配置。シャープも、主力モデルでは野菜室が中央だ。三菱は、500リットルクラスの上位モデルで真ん中タイプを発売するなど、徐々に拡充している。
(5)野菜を長もちさせる工夫
野菜を長もちさせるには低温・高湿が大切で、ミストユニットやモイスチャーフィルターなど各社各様に工夫を凝らす。プラチナ触媒や光触媒でエチレンガスを分解したり、LED光やイオンで栄養を増やすモデルもある。
(6)除菌・清潔機能
シャープはプラズマクラスターを、パナソニックはナノイーXを放出して庫内を除菌。脱臭効果もある。東芝はLED光で、日立と三菱はフィルターで庫内の冷気を除菌する。
(7)Wi-Fi搭載・クラウド対応
シャープと東芝は無線LAN接続に対応。スマホアプリを使い、東芝では離れた場所から冷蔵庫の運転状況が確認できたり、シャープでは家族への伝言を冷蔵庫に送信できたりする。
使い方の工夫ドアを大きく開けて定期的に掃除をしよう
冷蔵庫が大容量になり、スペースにゆとりが生まれたことで、以前より食品を整理しやすくなっている。きちんと整理してあれば、フードロスが防げるし、必要なものをすぐに取り出せて、調理もスムーズに進む。
庫内を整理するときは、冷蔵庫のドアをしっかりと開けて行おう。冷気の逃げが運転効率の低下を生み、電気代が余計にかかるのを心配するかもしれないが、これは、もはや過去の話。冒頭でも述べたように、最近の冷蔵庫はとても省エネになっているので、ドアを少々長く、大きく開けたとしても、電気代に大きな影響はない。そもそも食品が冷えているので、ドアを閉めれば庫内全体がすぐに冷えるし、一説には、電気代は1年で数十円の違い程度ともいわれている。きちんと整理せずに食品をダメにする損失を考えたら、しっかりとドアを開けてきちんと整理したほうが得だ。
カビや汚れの付着もフードロスにつながる。菌などが発生・繁殖しないように、庫内の棚や内壁を定期的に掃除することも大切で、この場合も、しっかりとドアを開けてきちんと拭きたい。今回の5モデルは、イオン(シャープ、パナソニック)、LED光(東芝)、フィルター(日立、三菱)で冷気を除菌しているが、付着した汚れは取れないので、掃除は欠かせないものと心得よう。
まとめ
冷蔵庫の場合、突然壊れてしまうこともあり、よく製品を吟味せずに急いで購入してしまいがち。そのため、選んだモデルが、家庭のライフスタイルに合わないということも考えられる。そうならないように、購入後、10年くらいたったら、事前に候補を絞っておくと安心だ。冷凍機能の特徴や野菜室のこだわり、ドアや棚の工夫など、各社の持ち味を把握しておくと、選びやすくなるだろう。
監修/中村 剛(「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権優勝)
◆Profile/「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権で優勝の実績を持つ家電の達人。家電製品総合アドバイザー、消費生活アドバイザー。東京電力「くらしのラボ」所長。現在、暮らしに役立つ情報を動画(Facebook)で配信中。→「くらしのラボ」はこちら
取材・執筆/市川政樹(テクニカルライター)
※価格は記事制作時のものです。