冷蔵庫を使いこなす。これは結構、ハードルが高い課題です。保存性と使い勝手を両立させなければなりません。冷蔵で一週間、冷凍で一ヶ月は譲れないでしょうし、使い勝手は調理の時短に欠かせません。日本メーカーの2018年モデルの冷蔵庫は、各社とも、「今ある技術を突き詰めました」という感じでした。来年(2019年)は、IoT化だろう。その時は、そう予想しました。しかし、2019年、それを嬉しい形で日立が打ち破ってくれました。それが、2019年3月発売予定の、新フラッグシップ冷蔵庫『R-KX57K』です。
『R-KX57K』の3つの魅力
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『R-KX57K』の外見は、フレンチ扉の場合、いわゆる5室6扉の極めて、オーソドックスな冷蔵庫です。しかし3つの魅力を持ちます。
1つめは「ぴったりセレクト」。
これは、下2つの引き出しを自由に選択することができるものです。
下2つの引き出しと言えば、「野菜室」「冷凍室」。どちらが上かで悩むところ。「ぴったりセレクト」は、これに「冷蔵室」を加え、下の2つは、この3つの内、どれを選択してもイイという機能です。買った後、セレクトできるので、トライ&エラーが可能。冷蔵庫のよりユーザーに合ったカスタマイズ化ができます。
2つめは「まるごとチルド」。今まで冷蔵室の下だけだったチルドを、冷蔵室全体をその条件にしたものです。そしてこのチルド「うるおい系」なのです。お分かりですね。ラッチしなくても、数日はしなびない冷蔵室なのです。
ラップって結構面倒ですし、新聞屋さんのお土産に使われている位、消費も多い。それが不要って、個人的にもかなり嬉しいです。
そして、3つめは「IoT」です。
三日間はノーラップでも十分。
『R-KX57K』の冷蔵室の大きさは、308L。
これをまるごとチルドするのは実は結構大変です。というのは、温度により空気が含むことの出来る水分量(飽和水蒸気量)が変わるからです。
私たちが通常使うのは、相対湿度(飽和水蒸気量に対する割合)です。
冬場の室内、室温:20℃、湿度:50%とします。
20℃での飽和水蒸気量は17.3g/m3。湿度:50%なので8.65g/m3。まるごとチルドは2℃。5.57g/m3しか水分を含むことができません。
このため、冷蔵庫のドアを開け閉めするということは、水蒸気を冷蔵庫内に送り込んでいるようなものです。ちなみに、差分の水分は、水蒸気から水に戻ります。いわゆる「結露」です。
冷蔵室の大きさ:308Lで計算しますと、室内の水蒸気の許容範囲は、1.72g。
例えば、冷蔵庫を開け、相対湿度で20%変わった(40%と60%。肌のカサカサ具合が違いますね)として、0.34g。約水10滴ほどの量です。要するに、冷蔵室内の湿度は、それほど少ない水分量で制御しなければならないのです。
このためチルド室は、もっともよく開けられる冷蔵室とは別に設けられていました。
このため、冷蔵室はドライ環境であり、外から湿った空気が入り込んだときも、結露に対しマージンがありました。しかしラップをかけなければ、食品から水分が飛んでしまいます。
「まるごとチルド」は、この状況を打破した技術です。
今まで一つの冷却器で、冷蔵庫全体を冷やしていたのを、専用冷却器でより細かく温度調整を行い、また、隅々まで温湿度が均一になるように、風も工夫したそうです。
結果、得られたモノが「ノーラップでの保存」。
担当者に問うと「三日間はノーラップでも十分。」だということ。これはかなり、有用な機能です。時短にもなりますし、ラップ代もかからず、ゴミもでません。
IoTでは対応できないこと
今からの家電は、IoT。そう報じられて5年以上経ちます。
しかし、まだまだ立ち上がっていません。
私は、日本の家電メーカーは、IoTよりまず、この様に「まだできることを追求すべきだ」と考えております。しかも、今までの技術でできるモノではなく、よりユーザーよりの機能です。
『R-KX57K』は、今までの冷蔵庫よりワンステージ上の製品です。「省エネ」と「野菜室の位置」ばかり強調される冷蔵庫ですが、まだまだすべきことはあるのです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オ
フィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があ
り、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。
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