2015年に、鳴り物入りで登場したIoT。2018年は、ほぼ全洗濯機がIoTを搭載し「よりキレイに!」を目指しました。そして2019年。ほぼ全冷蔵庫にIoTが搭載されました。シャープのプラズマ冷蔵庫の最新冷蔵庫は「少子高齢化」「省エネ」「食ロス」「共働き世帯増加」など、人々のくらしの変化に対応したIoTサービスを拡充させました。今回は、便利になったはずの「IoT家電」に関して、今一度考えてみたいと思います。
多機能な「IoT家電」が続々登場
シャープの冷蔵庫『SJ-GA55E / 50E』に搭載されたIoT
2019年2月発表の最新の冷蔵庫『SJ-GA55E(551L)/ 50E(502L)』が発表されました。IoT(シャープは、AI+IoTでAIoTと表現)に力を入れているシャープらしく、いろいろなIoTサービスが搭載されています。
プラズマクラスター冷蔵庫
GAシリーズ 「SJ-GA55E」
今回のシャープは「くらしの変化にフィットしたAIoT」を標榜しました。くらしの変化というのは、「少子高齢化」「省エネ」「食ロス」「共働き世帯増加」。「食ロス」はともかくあとの3項目は、もう元には戻らないでしょう。
それに対しシャープは、次のAIoTサービスを提案しました。全部で6種類。2018年モデルに、「食ロス」「共働き世帯増加」用に提案した4種類に加え、「少子高齢化」「省エネ」を加えたわけです。
現時点で、最も多いIoTサービスです。
IoTサービスのポイント
自分にとって有用なサービスが少ない
日本の家電の多機能ぶりは有名で、使わない機能があるのは、ご理解頂けると思います。使わない機能という意味では、スマホアプリの方がもっとスゴいです。こちらの方は、1ヶ月無償、あと有償という場合もありますので、質が悪い・・・。
それは置いておきまして、非常に細かい所まで作り込まれた家電に、IoTを使った新しいサービスを入れ込むわけです。多分、その人にとって有用なIoTサービスは、10に1つ位だと思います。「IoT」「コネクティド家電」とメディアが報道するわりに、ピンとこない理由の一つです。
PCやスマホのようなバージョンアップが難しい
次の問題は、IoTサービスは年々変わると言うことです。パソコン、スマホでいうバージョン・アップです。しかしそれができないこともあります。今回のIoTサービスの内、2018年モデルは「見守り機能」をバージョン・アップで付け加えることはできますが、「省エネ」機能を付け加えることはできません。
これはそのモデルが、その機能に必要なセンサー等 ハード的に対応していないからです。前のモデルのユーザーに取っては、残念と言うわけです。
これから言えることは、買った後IoTサービスが付け加えられることは、当てにしてはならないということです。
そしてもう一つのポイントは、IoT自体はまだまだ固まっていないということです。パソコン、スマホの様に、最低必要なサービスも決まっていませんし、玄関周りはともかく、家の内の家電にWi-Fiというのもまだ決まっていません。多くのメーカーが今、Wi-Fiを使っていますが、次にはもっと安く、省エネなLPWA(Low Power Wide Area)規格の検討もされています。
家電IoTの弱み
より便利になるには時間がかかりそう
シャープによると、プラズマクラスター冷蔵庫の2018年モデルでは、約50%のユーザーが、ヘルシオ、ホットクックと連携して使用したといいます。これは家電の連携ですが、ユーザーがヘルシオ、ホットクックを持っていたからだとも言えます。
シャープ・ファンと言ってもイイでしょうね。今後、この様な一社囲い込みのために、IoTは使われていくと思います。
本来なら、いろいろなサービスをソフトメーカーが担い、より自由度の高いサービスが望まれるのですが、白物家電のIoTは、シャープの例でも分かるように、家電のセンサー他、設計と密接な関係に有り、パソコン、スマホのアプリの様に、なかなかソフトメーカーが入ることができません。このため便利になるのに時間がかかると思われます。
なんとかソフトメーカーが参入、より多方向からIoTサービスを作り上げていければ良いのにと思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オ
フィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があ
り、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。
生活家電.com