調理家電は、わりと危険なものが多いです。それは、料理には「切る」もしくは「熱する」ことが必要だからです。しかも、そこにコストはあまり掛けられません。電気ケトルの雄、T-falの定番「アプレシア プラス 0.8L」は、本体に触ると熱いですし、横倒しになると熱湯が漏れます。まぁ大人しか使わないし、安全に操作できるところで使うという、割り切った仕様です。
テーブルの上に置けるオーブントースター
昨今、共稼ぎは当たり前の時代。
子どもが一人で留守番。遅いときなどは「チンして食べてね」といったことも珍しくありません。
電子レンジは多くの場合、単価が高いモノが多く、安全性にもかなり気を配っています。
しかし、オーブントースター系は、単価が安いモノが多く、なかなか仕様をアップすることができません。
そんな中、窓に触っても火傷しない、タイガー魔法瓶のコンベクションオーブン&トースター「KAT-A130」が発表されました。
皆さんは、オーブントースターは、どこに置いていますか?
多くの人は台所でしょう。しかし「テーブルの上」という人もそれなりにいるのではないでしょうか。
パン焼きなどは、そちらの方が便利です。
ポップアップトースターの時代、トースターは使う度に、台所からテーブルに出されたモノですが、今主流のオーブントースターは、4枚一度に焼くため、サイズもかなりありますし、動かすのはどちらかというと面倒なシロモノです。
このオーブントースターが、台所ではなく、テーブルの上に設置できるとしたら、どんなに便利でしょう。
まず、食事中に立たなくてもよくなります。
次に、温かいものをすぐ食べることができます。焼肉などは食べるのが止まらなくなりますが、それは「焼きたて」だからです。
すごく便利ですし、美味しい。
今後、高齢化社会になるにつれ、「二人メシ」「一人メシ」が増えます。
高齢者ですから、そんなに食欲があるわけではありません。しかし、健康でいるためには、美味しく食べるということが必要です。この様な潜在ニーズに対してどう対応して行くのかが、今からの白モノ家電のポイントです。
サイズと断熱と価格
このように、オーブントースターをテーブルの上に置きたいのはやまやまなのですが、今のオーブンだと問題になることが多いです。
それは「熱」です。
小型のオーブンは断熱性が不十分な機種が多く、かなり熱くなるのです。
周りの金属は熱伝導性がいいので、ここの熱放出をある程度にしないと、庫内温度を上げることはできません。
逆に、今まで見放されてきたのが、窓。ガラスの部分です。
ガラスは金属に比べると熱伝導率がとても低いです。このため、後回しにされてきました。
逆に、オーブンの庫内はなるべく温度が高いことが求められており、火力は上がるばかり。いつしか、ガラスの表面温度は80〜90℃に。
私は、カプチーノが好きで、スチームドミルクを作りますが、その時のミルクの温度は68℃。この温度を手のひらで感じ取り、ミルクの温度を調整するのですが、多分、火傷ギリギリだと思います。触っては放し、触っては放しを繰り返しながら、スチームドミルクを作ります。
それ以上のガラス。しかも、そこに触ったから得することはありません。損どころか、火傷でもしたら大損となります。
しかし、断熱ガラスは高いですし、小型オーブンはできれば、価格を抑えたいところ。あちら立てば、こちら立たずと言ったところです。
断熱はお家芸
さて、これに挑戦するタイガー魔法瓶ですが、お家芸はもちろん「魔法瓶」。社名にもなっている商品です。
魔法瓶は、今は「ステンレス&真空」となっていますが、その歴史は、いかに熱を封じ込めるのかという歴史でもあります。
熱はちょっとでも温度差があれば、高い方から低い方へ移動します。保温というのはかなり高度な技術でもあり、細部に至るまで気配りが重要です。
今回、タイガーが採用したのは、「断熱Wガラス」。二重構造で対応したわけです。
結果は上々。
私もデモ機に触れさせて頂きました。今までのものが、80〜90℃なのに対し、約57℃。それでも、熱いことは熱いです。
料理にもプラス
外に熱が逃げないということは、中の温度を高めることと同じです。
これはイイです。焼きムラが出来にくくなりますし、早く焼き上げることもできます。
早く焼けるということは、トーストの場合、水分を中に閉じ込めるので、外はサクサク、中はモチモチ。料理家電の理想形に近くなっているので、一気にパワーアップします。
置き場所の選択肢が拡がるし、料理も美味しくなる。ちょっと嬉しいコンベクションオーブン&トースターの登場です。
タイガー魔法瓶
コンベクションオーブン&トースター
KAT-A130
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。