【麻倉怜士の4K8K感動探訪(2)】NHK BS8K「躍進する世界の8K」で分かったフランスと中国の凄さ

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NHKでBS8K放送が始まって12月で一年。それを記念して、BS8Kで30分番組「BS8K開局1年特集 躍進する世界の8K」が放送された。いま、世界のテレビ局や映像クリエーターたちが熱心に8K制作に挑んでいることがコンパクトに語られた。

執筆者のプロフィール

麻倉怜士(あさくら・れいじ)

デジタルメディア評論家、ジャーナリスト。津田塾大学講師(音楽理論)、日本画質学会副会長。岡山県岡山市出身。1973年、横浜市立大学卒業。日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。『プレジデント』副編集長、『ノートブックパソコン研究』編集長を務める。1991年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。高音質ジャズレーベル「ウルトラアートレコード」を主宰。
▼麻倉怜士(Wikipedia)
▼@ReijiAsakura(Twitter)
▼ウルトラアートレコード(レーベル)

「8K画面を観ていると、ものが焦げる臭いも感じるのです」

MIPCOMが開催されたカンヌ・コンベンションセンター。2019年10月。

NHKでBS8K放送が始まって2019年12月で一年。
それを記念して、2019年12月1日午後5:30~からBS8Kで30分番組「BS8K開局1年特集 躍進する世界の8K」が放送された。いま、世界のテレビ局や映像クリエーターたちが熱心に8K制作に挑んでいることがコンパクトに語られた。

実は、番組内の多くの8K映像は、私がごく最近に視聴体験したものだ。
それがフランスカンヌの国際番組見本市のMIPCOM。ここで、NHKが初めてシアター「NHK8KTHEATER」を展開。パナソニックの4KDLPプロジェクターを4発同期運転し、248インチのスクリーンに投射。音響は22.2chサラウンド。このシアターで上映された8K作品の多くが、番組「BS8K開局1年特集 躍進する世界の8K」で紹介された。現場では、確かにNHKの8K取材班が多くのクリエイターを取材していた。

まず紹介されたのが、ドラマに進出した8K。
NHK制作の8KドラマのNHK「浮世の画家」。戦前との社会の激変に戸惑う老画家を渡辺謙が演じた、カズオ・イシグロ原作作品だ。主演の渡辺謙は試写会で、「8K画面を観ていると、ものが焦げる臭いも感じるのです。それは画面からのリアリティに加え、22.2チャンネルの音を聴いて感じる感覚かもしれません」と話した。番組ではこの感想が、レッドカーペットの上で語られていた。8Kというのは、単なる高精細映像ではなく、「五感で体験」するメディアなのかもしれない。

NHKと北京テレビの共同制作の8Kドキュメンタリー「天に光 地に彩 中国四川省ガルゼチベット族自治州」(カンヌにて麻倉怜士撮影)。

ヨーロッパで8Kを大きくリードするフランス

私はMIPCOMにて、「浮世の画家」の渡辺一貴監督(NHKエンタープライズ・番組開発エグゼクティブプロデューサー)にインタビューした。

「ハイビジョンが始まった時も、鮮明に映りすぎるので、ドラマなどつくれるわけはないとされたものです。でも、いつの間にか普通になりました。8Kも同じだと思います。今回の経験から、8Kはとてもドラマに向いていると確信しました。多彩な表現が可能だからです。いままでの黒は黒一色でした。ところが8Kの黒は、その中にすこし暗い、明るいなど階調感がはっきり表現できる。新しい表現の道具になります」

確かに、本番組で見た「浮世の画家」のクリップは、しっとりした質感が高精細に、そしてハイコントラストに描かれていた。

NHK制作の8KドラマのNHK「浮世の画家」。老画家を渡辺謙が演じた(カンヌにて麻倉怜士撮影)。

「BS8K開局1年特集 躍進する世界の8K」がもうひとつ採り上げたのが、ネットで8Kを伝送するトレンド。
新メディアは、もはやネットなしには考えられない。世界で8K放送は日本だけだが、世界では5Gスマホが8K視聴の鍵になりそうだ。ヨーロッパで8Kを大きくリードするフランス。番組では、すでに8Kテレビが5万台売れているとリポート。24年のパリオリンピックを控え、8K熱が高まる。

中国ではソニーの85型の8Kテレビが2万台以上が売れた

公共放送フランス・テレビジョンは、今春、全仏オープン・テニス「ローラン・ギャロス」の全試合の5G・8K中継を行った。
シャープの8Kカメラで撮影した8Kのベースバンド信号を、NECのエンコーダーで85MbpsのHEVC信号に変え、アメリカのHarmonic社(NASAの4Kライブを手掛ける)がストリームに変換、ノキアが5Gで電波を飛ばし、OPPOの5Gスマホが受信、HDMIの4K×4本のアダプターで変換し、シャープの8Kモニターに入力した。

フランス・テレビジョンは、全仏オープン・テニス「ローラン・ギャロス」の全試合の5G・8K中継を行った。

プロセスの準備に2ヶ月、システムのセットアップには7日掛けて、1日8時間の全期間合計で100時間の8Kライブを成したという。
ポイントが、5Gの受信にスマホを使うことだ。5Gが本格化すれば、5Gの入力端子がテレビに付くだろうが、それまではスマホで5G8Kを受信する形態がデファクトになりそうだ。

2022年の冬季オリンピックでの8K放送を予定している中国の8K熱も凄い、とリポート。
2020年には一部地域で8K実験放送も始まるという。私も中国で講演する時は、「せひ8Kの話をしてください」と言われる。世界一の大きさを誇る8K中継車を活用し、北京で2019年10月、ディスプレイメーカーBOEと新華社通信の共同プロジェクトによる、8K5G伝送実験が行われた。

ディスプレイメーカーBOEと新華社通信の共同プロジェクトによる、8K5G伝送実験が行われた。

8Kテレビが売られている北京のテレビ販売店(NHK提供)

番組では、熱心に取り組んでいる北京テレビジョン制作の建国記念日の花火番組がたいへんきれいだった。すでに中国ではソニーの85型の8Kテレビ(チューナーレス)が2万台以上が売れたそうだ。
8Kの最前線が分かった、とてもためになるルポルタージュだった。

世界最大の北京の8K中継車(NHK提供)。

北京8K中継車内部(NHK提供)。

8K再放送
2019年12月5日(木)午後0:30~
2019年12月7日(土)午後6:00~
2019年12月9日(月)午後4:30~
2019年12月11日(水)午後1:30~
2019年12月13日(金)午後5:30~

BS4K
2019年12月1日(日)午後9:30
総合(地上デジタル放送)
2019年12月28日(土)午前6:10~

文◆麻倉怜士(デジタルメディア評論家)

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デジタルメディア評論家、ジャーナリスト。津田塾大学講師(音楽理論)、日本画質学会副会長。岡山県岡山市出身。1973年、横浜市立大学卒業。日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。『プレジデント』副編集長、『ノートブックパソコン研究』編集長を務める。1991年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。高音質ジャズレーベル「ウルトラアートレコード」を主宰。

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