恐竜型ロボット・LGスタイラー導入で話題「変なホテル」が注目を集める理由

オリンピックイヤーのなか、着実に拡大を続けるホテルグループが「変なホテル」。恐竜型の受付ロボットや最新家電などの技術を導入し、常に注目を集める変なホテルが目指すものは何なのか。ロボットの導入とは「効率化と効率化と同時にエンタメでもあるんです」という担当者に話を訊いた。

話題の商品徹底解剖!エイチ・アイ・エス「変なホテル」のキーパーソンに訊け!

2020年は、東京五輪/パラ五輪の開催によるさまざまな経済効果が期待されており、ホテル業界も新規宿泊施設の建設ラッシュが起きている。そんな中、着実に拡大を続けるホテルグループが「変なホテル」だ。恐竜型の受付ロボットや最新家電などの技術を導入し、常に注目を集める変なホテルが目指すものは何なのか。担当者に訊いた。

●キーパーソンはこの人!

H.I.S.ホテルホールディングス株式会社 参事
遠藤正巳さん

ハウステンボスでのプロジェクトが原点

東京五輪/パラ五輪が開催される2020年は、我々の日常生活だけでなく、日本経済へのさまざまな影響も予想される。訪日外国人の増加によるホテル業界への経済効果もその一つ。現在も、全国各地で新規宿泊施設の建設・開業が進んでいる。

そのホテル業界にあって、ひときわ異彩を放つホテルグループが、大手旅行会社エイチ・アイ・エスのグループ会社が展開する「変なホテル」だ。同ホテルの企画・運営を担当する遠藤正巳さんは、次のように話す。

変なホテルのブランドコンセプトは『変わり続けることを約束するホテル』。”変テコなホテル”ではなく”変化するホテル”を目指しています。先進技術を積極的に導入することにより、ホテル運営の効率化を図りつつ、お客様の快適性やワクワク感も追求しています」

「変なホテル 浅草 田原町」フロント
最新技術の「3Dホログラム」を導入。執事恐竜忍者チェックインチェックアウトをサポート。

変なホテルの誕生は約5年前にさかのぼる。エイチ・アイ・エス創業者で代表取締役会長兼社長の澤田秀雄氏が、長崎県のハウステンボスの再生を手がける中で「スマートホテルプロジェクト」を構想。それが1号店である「変なホテル ハウステンボス」(2015年7月開業)につながった

「当時目指したのは、ホテル運営のムダをなるべく排除し、効率化を図ることでした。室内設備を根本から見直し、光熱費を抑えるため、建物の設計面でも工夫を盛り込みました。また、開業後のランニングコストで大きな割合を占める人件費の削減にも着手。フロント業務や客室清掃などにロボットを活用することで、人間のスタッフを大幅に減らしました。これは、現在も変なホテルの全店舗に共通する特徴になっています」

変なホテルは効率化の一方で、遊び心も重視している。例えば、宿泊者を出迎えるフロントの受付ロボットは、人間型だけでなく、恐竜型や3Dホログラムタイプもある。また、客室内でシャープの「ロボホン」と遊ぶことができたり、館内案内や観光案内のためにロボットコンシェルジュの「unibo(ユニボ)」が置かれていたりする。

「恐竜型ロボットを相手にチェックイン手続きをしたら、お客様にはワクワクした思い出が残ります。ロボットの導入は、ホテル側からすると効率化という効果がありますが、同時に、お客様にとってはエンターテインメントになる仕組みなのです」

ロボットの導入というのは、効率化と同時にエンタメでもあるんです。

「unibo」(AIロボットコンシェルジュ)
音声認識を搭載。話しかけると、ホテルの施設や周辺店舗、最寄り駅までの案内などを行う。

「Tabii」(客室内タブレット)
照明やエアコン、アロマなどのIoT設備を音声でコントロールすることが可能。

「ロボホン」(コミュニケーションロボット)
「変なホテル 大阪 なんば」には、客室にコミュニケーションロボットを設置。実用から遊びまで、さまざまな機能が楽しめる。

立地や客層に合わせて異なる特徴を持たせる

現在、変なホテルは全国に16店舗あるが、それぞれが立地や宿泊者の属性を意識した特徴を持っている。

例えば、今回の取材で訪れた「変なホテル 東京 浜松町」は、羽田空港からのアクセスがよく都心のビジネス街にも近いため、ビジネス客の利用が比較的多いという。そのため、エンターテインメント性よりも、快適性や利便性が重視されている。

「変なホテル 東京 浜松町」支配人
加藤大樹さん
写真右はフロントに立つ女性ロボット。首振りやまばたきなどで滑らかに接客を行う。

クリーニングマシン「LGスタイラー」の全室導入は、その一つだ。独自のスチーム技術により衣服のニオイやシワ、ホコリ、花粉などを除去してくれるもので、特に出張で泊まるビジネスパーソンから高いクチコミ評価を得ているという。

「1日の仕事を終えてホテルに戻り、着用したスーツをLGスタイラーに入れておけば、翌朝にはパリッとした状態で着られます。『自宅に購入を検討していたが、ここで実際に使ってみて効果を実感できて、参考になった』というお客様からの声も届いています」
(変なホテル 東京 浜松町 加藤大樹支配人/マネージャー)

「LGスタイラー」
スチームの循環とハンガーの細かな振動によって、スーツなどの衣類のケアを行う。ビジネスマンに人気の設備。

ホテル業界では初の試みとなる「ファイテンルーム」もユニーク。ファイテン独自の水溶化メタル技術で作られた「アクアチタン」を含浸させた壁紙やカーペットのほか、同技術による「アクアゴールド」を含浸させた羽毛を使った寝具が採用された客室だ。ファイテンルームがある3階フロアは、廊下にもアクアチタンが採用されているという。

「ファイテンルーム」
寝具だけでなく壁紙やカーペットにまでファイテン社の水溶化メタル技術を使用した素材が使われている。

「アクアチタンやアクアゴールドに囲まれた空間は、お客様の心身を本来のリラックス状態へと導いてくれます。また、ファイテンのフットマッサージ器『ソラーチ』も客室内に設置されており、立ち仕事や外回りの営業など、足の疲れに悩むお客様から好評です」
(変なホテル 東京 浜松町 加藤大樹支配人/マネージャー)

そのほか、レイコップのふとんコンディショナー「futocon(フトコン)」が設置された部屋も用意するほか、Googleの「Chromecast(クローム キャスト)」は全室に配備。通話やデータ使い放題の無料貸し出しスマートフォン「handy(ハンディ)」は、外国からの宿泊客に好評だという。

これからの数年で100店舗達成が目標

それにしても、ホテル運営の徹底した効率化を推進するだけでも容易なことではないのに、宿泊客にとっての快適性やエンターテインメント性も同時に追求するのは、並大抵のことではない。変なホテルがそれを実現できた理由は何だろうか。

「私も含めたスタッフのほとんどが、旅行会社出身であることは大きいでしょうね。ホテルの設計や運営について何もわからないという状態からスタートしたからこそ、ホテル業界の常識にとらわれない発想ができた部分はあると思います」

ホテル業界の出身者が少なかったことで、発想の自由さが生まれました。

確かに、フロント係を人間からロボットに置き替えたうえで、そのロボットを恐竜型やホログラムにするというようなアイデアは、ホテル業界の発想ではない。業界内部からではなく、外部からの視点でイノベーションが生まれるという現象は他の業界でも起きていることで、非常に興味深い。

最後に、変なホテルの今後の展開を遠藤さんに訊いた。

「変なホテルとしては、これからの数年で100店舗を達成することを目指しています。また、既存の店舗についても、よりよくなるように設備などの入れ替えを行っていくつもりです。私たちは常にアンテナを張って、新しい先進技術を探しています。お客様の楽しさや快適さにつながる技術であれば、ホテル業界の常識にとらわれず導入し、今後も変わり続けるホテルでありたいと考えています」

Memo
業務効率化によるコストカットは、宿泊料金の引き下げや最新設備の導入などにつながり、宿泊者にも恩恵をもたらしている。この流れは今後、ホテル業界全体で進むことが予想される。

◆インタビュー、執筆/加藤肇(フリーライター)

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