エアコン選びには、省エネ性の判断の目安となる「APF(通年エネルギー消費効率)」の値が大切だ。また、AI自動運転や清潔性など各社の独自性も見どころ。テレワークなどが推奨される昨今、優秀なエアコンのもと、快適かつ清潔な部屋で過ごしたいというニーズが例年以上に高まっている。
目指せ!家電選びの達人今回は「エアコン」
長引く外出自粛生活をきっかけに、家庭環境を見直す人が増えている。特に、これからの暑い季節は、優秀なエアコンのもと、快適かつ清潔な部屋で過ごしたいというニーズも例年以上に高まっている。今回は、主要各社の最上位機種を対象に、気になる能力を検証する。
■監修者のプロフィール
中村剛
「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権で優勝の実績を持つ家電の達人。家電製品総合アドバイザー、消費生活アドバイザー。東京電力「くらしのラボ」所長。現在、暮らしに役立つ情報を動画(Facebook)で配信中。
エアコン選びのチェックポイント
エアコンは夏の必需品。AI自動運転や清潔性など各社の独自性が見どころだ!
●対応畳数の選択
「6〜8畳」と書かれている場合、6畳は木造住宅、8畳は鉄筋住宅を示している。暖房と冷房で対応畳数が異なるときは、暖房時の能力をチェックするようにしたい。
●本体サイズと電源
熱交換器は表面積が大きいほど効率がよく、省エネになるが、本体サイズも大きくなる。電源は、14畳用以上は200ボルト仕様が多く、電圧の切り替え工事が必要。
●省エネ性能
カタログの「APF」(通年エネルギー消費効率)の数字が判断の目安で、値が大きいほど省エネ性が高い。従来、「COP」で表示されていたが、意味合いはほぼ同じ。
●メンテナンス性
エアフィルターのホコリをブラシでかき取る自動掃除機能に加え、熱交換器のケアを行うモデルが人気。各社がそれぞれ独自の取り組みを見せている。
最新の動向
省エネ性はさらに向上。高気温時の動作も保証
地球温暖化が進み、夏季には真夏日や熱帯夜が当たり前のように続く近年、エアコンは生活必需品となっている。各メーカーも、さらなる快適性を目指し、さまざまな取り組みが見られる。
エアコンは、省エネ性も着実に向上し、判断の目安となる「APF」(通年エネルギー消費効率)の値が「7」を超えるモデルも登場している。購入する際には、APFの値に注目して、性能を比較するといい。
また、外気温が40℃を超えるような状況下での動作が保証されているのも、最近の製品の傾向。つまり、猛暑の中でも故障や電気代を気にせず、安心して使えるモデルが増えたというわけだ。
AI自動運転
温度や間取りなどの情報を解析して最適に空調
機能面でも、新しい技術が盛り込まれている。最近のトレンドとなっているのは、AIによる自動運転だ。室内機本体に高感度センサーを搭載しており、壁や床の温度や人の居場所、日当たりの変化や部屋の間取りなどの情報を細かく取得し、それをAIが解析し、最適な空調を行うという仕組みである。さらに、運転履歴や生活パターン、天気予報などの情報も取り入れることで、使用者の好みや先々の温度変化を反映させた先回り運転も可能となった。
AIは、室内を常に心地いい状状態に整えてくれるハイテク機能といえるが、その恩恵が、実感としてわかりづらいという面もある。そんな中、うまく実用につなげていると思えるのが、パナソニックの「つけっぱなし判定」だ。
これは、専用のスマホアプリに出かける時間を入力すると、AIが家の断熱性と天気予報を基に、電気代と帰宅時の室温を予測。エアコンをつけっぱなしにしたときと、運転を停止して帰宅後に再開したときのどちらが得になるかを表示してくれる。1〜2時間程度の外出時に役立つ、気の利いた機能だ。なお、スマホとの連係機能は、各社の上位機種は導入済みだ。
■パナソニック
エオリア Xシリーズ
実売価格例:28万7160円(CS-X400D2=14畳用)
ラインアップ:6畳、8畳、10畳、12畳、14畳、18畳、20畳、23畳、26畳、29畳
ナノイーXで室内とエアコン内部を除菌
フィルターからかき取ったホコリを屋外へ自動排出するお掃除機能が人気。高濃度のナノイーXで、室内とエアコン内部を除菌する。
期間消費電力量 | 1036kWh |
省エネ基準達成率 (目標年度2010年) |
146% |
通年エネルギー 消費効率(APF) |
7.3 |
「ナノイーX」 内部クリーン
運転終了ごとに内部を加熱して乾燥させ、高濃度のナノイー Xでカビの成長を抑制する。熱交換器表面は、ホコリを弾くコーティング加工で汚れをガードしている。
AI快適おまかせ
ワンボタンで、AIが最適な運転モードを自動選択。心地よさ優先の快適モードと、節電優先のエコナビモードが選べる。
「エオリア」アプリ
外出先からスマホで室内状況の確認が可能。前年と今年のエアコンの電気代比較や、電気代の月別表示をする「エコ情報」も好評だ。
エアコンの気流に関しては、風が直接体に当たって暑い/寒いといった不満を解消すべく、部屋全体をムラなく空調するスタイルが基本となっている。天井に沿って遠くまで冷風を吹き出し、下から空気を回収して大きく撹拌するのだが、ここで独自性を見せるのが、富士通ゼネラル。冷気を吹き出す本気流とは別に、循環用の二つのファンを搭載することで自然に近い風を生み、部屋のどこにいても心地いい涼しさが感じられるようになっている。
■富士通ゼネラル
ノクリア Xシリーズ
実売価格例:29万7000円(AS-X40K2=14畳用)
ラインアップ:6畳、8畳、10畳、14畳、18畳、20畳、23畳、26畳、29畳
気流、メンテナンスなど独自性が高い
2種類の気流で、空間全体を快適にするハイブリッド気流が好評。熱交換器のメンテナンス方法やリモコンの仕様なども独自性が高い。
期間消費電力量 | 1097kWh |
省エネ基準達成率 (目標年度2010年) |
140% |
通年エネルギー 消費効率(APF) |
6.9 |
熱交換器加熱除菌
熱交換器を55℃以上に加熱し、お湯でフィンを洗うことで、効果的に除菌する。加熱時間35分+除菌10分+乾燥5分がケアの目安。
デュアルブラスター ハイブリッド気流
温度調整されたメイン気流に加え、室内機の両端に搭載したファンからサブ気流を放出。温度と速さの異なる二つの気流の組み合わせで、部屋の温度ムラを防ぐ。
Bluetoothリモコン
テーブルに置いたまま使用が可能。手をかざして左右に振るだけで、リモコンに触れずに、エアコンのオン/オフができる。
そのほか、センサーが一人一人の体温を見分け、それぞれに合わせて気流をコントロールするメーカーもあり、人数の多い家庭に注目されている。
清潔性・メンテナンス性
「凍結洗浄」の日立、ホコリの侵入を防ぐシャープ
また、清潔性やメンテナンス性への取り組みも目立ってきた。エアフィルターのホコリをブラシでかき取る自動掃除機能だけでなく、最近は熱交換器など、エアコン内部の清潔性にも踏み込んでいる。エアコンは、運転時に内部で水が発生するため、放っておくとカビが繁殖する。それを防ぐため、熱交換器のケアでは、結露の水を利用してフィンを洗い流し、熱で乾燥させたり、イオンで除菌したりというモデルが多い。
その中で目立つのが、日立とシャープだ。日立は、熱交換器を凍結させ、霜を一気に溶かすことで汚れをはがす「凍結洗浄」を採用。さらに、内部のファンに付着したホコリをブラシで落とす「ファンロボ」、エアコン内部の環境を見張ってカビを抑制する「カビバスター」の搭載で、さまざまな角度から清潔性を高めている。
■日立
白くまくん Xシリーズ
実売価格例:31万6800円(RAS-X40K2S=14畳用)
ラインアップ:6畳、8畳、10畳、12畳、14畳、18畳、20畳、23畳、26畳、29畳
熱交換器の奥にあるファンも自動掃除
熱交換器の奥にあるファンの汚れにもアプローチする一台。内蔵カメラで人を見分け、部屋の滞在時間に合わせたハイテク制御も話題。
期間消費電力量 | 1009kWh |
省エネ基準達成率 (目標年度2010年) |
153% |
通年エネルギー 消費効率(APF) |
7.5 |
凍結洗浄(熱交換器自動お掃除)
熱交換器を凍らせて霜を付け、一気に溶かして汚れを洗い流す独自方式で、油汚れにも強い。1回にかかるコストは約7円。最新モデルでは、室外機にも採用された。
カビバスター
24時間体制でエアコン内部の温度と湿度を監視。カビが成長しやすい環境になると、イオン放出や加熱・低湿制御で繁殖を抑制する。
ステンレスイオン空清
プラズマ電極から放出されたイオンがホコリを帯電させ、ステンレスフィルターで捕集。イオンは、空気中の浮遊菌やカビ菌の抑制も。
シャープでは、エアコンと空気清浄機を兼ねる高性能な集じん脱臭フィルターでホコリの侵入を99%カットできるほか、熱交換器を吹き出し口の付近に配した特殊構造で、結露の発生も抑えられる。
そもそも内部が汚れにくい構造であるため、手入れは半年に一度、エアフィルターのゴミを吸い取るだけという手軽さだ。とにかく手入れがめんどうという人には、魅力的なモデルといえる。
■シャープ
Airest L-Pシリーズ
実売価格例:28万3800円(AY-L40P=14畳用)
ラインアップ:6畳、8畳、10畳、14畳
集じんフィルターで浄化した空気で空調
日本電機工業会の基準を満たし、「空気清浄機と呼べる唯一のエアコン」をうたう。集じんフィルターで浄化した空気で、空調を行う。
期間消費電力量 | 1484kWh |
省エネ基準達成率 (目標年度2010年) |
104% |
通年エネルギー 消費効率(APF) |
5.1 |
空気清浄機能
高性能フィルターで吸込口を覆い、さらに、強い風量が確保できる4連シロッコファンを搭載。8畳の部屋を5分で浄化する空気清浄パワーを実現した。
集じん脱臭フィルター
集じん脱臭フィルターが、ウイルスやカビ菌など、空気の汚れを丸ごと集じん&脱臭。ホコリは99%カットし、内部への侵入を防ぐ。
COCORO AIR
気温、日射量などの気象予報をもとに、クラウドAIが運転を制御。使用者からのフィードバックも活用して、好みの温度に調整する。
なお、エアコンの清潔性は、衛生面や省エネ性の確保のほか、エアコン自体を長もちさせることにもつながる。性能に問題がなく、まだまだ使えるエアコンでも、ニオイやカビが気になって使わなくなるケースもあるという。
自分で掃除がしたい人には、三菱電機のように、パーツを外して内部のケアがしやすいタイプも用意されている。エアコンを長く快適に使うためにも、メンテナンス性には、しっかり目を向けておきたい。
■三菱電機
霧ヶ峰 FZシリーズ
実売価格例:31万6800円(RAS-X40K2S=14畳用)
ラインアップ:14畳、18畳、20畳、23畳、26畳、29畳
赤外線センサーで繊細な温度管理が可能
人工衛星にも搭載された赤外線センサー技術を活用。手のひらと指先の温度差まで判別でき、より繊細な温度管理が可能となった。
期間消費電力量 | 958kWh |
省エネ基準達成率 (目標年度2010年) |
131% |
通年エネルギー 消費効率(APF) |
7.9 |
おまかせA.I.自動
AIが一人一人の体感温度差を予測して、気流を細かく自動コントロール。左右独立のファンで、それぞれに最適な風を送る。
見まもり機能
2~30分間隔でセンシングが行われ、スマホを使って部屋の温度分布の確認が可能。小さな子供やペット、高齢者のいる家庭でも安心。
はずせるボディ
フラップやフィルターお掃除メカが外せて、内部の掃除が可能。カビやすい通風路なども、徹底的にきれいにできる。
■ダイキン
うるさらX Rシリーズ
実売価格例:31万1600円(AN40XRP=14畳用)
ラインアップ:6畳、8畳、10畳、12畳、14畳、18畳、20畳、23畳、26畳、29畳
多彩な除湿運転により快適な環境を作る
湿度コントロールを得意とし、多彩な除湿運転で快適な環境を作り出す。加湿ができるのも大きな特徴で、冬の使用にも向いている。
期間消費電力量 | 1066kWh |
省エネ基準達成率 (目標年度2010年) |
146% |
通年エネルギー 消費効率(APF) |
7.2 |
水内部クリーン
屋外の空気から取り込んだ水分で結露水を生成し、熱交換器の汚れを洗い流す機能。結露の発生しにくい冬でも洗浄が可能となる。
AI快適自動運転
左右160度の回転式センサーで、壁や床の輻射熱を検知。過去の運転履歴を参考にしながら温度や湿度をコントロールして、快適運転を行う。
サーキュレーション気流
天井に沿って気流を回し、部屋全体を素早く快適化。窓からの熱を遮る冷房垂直気流との組み合わせで、部屋の温度ムラを抑える。
まとめ
夏に需要が高まるエアコンだが、省エネ性が特に発揮されるのは冬。暖房器具としては断トツで熱効率がいいので、冬に使うことも考慮して、機能や畳数を選びたい。
また、エアコンをうまく使うには、ほかの家電と組み合わせるのも手だ。扇風機との併用をはじめ、空気清浄機で部屋のホコリを減らせば、お手入れの頻度も減らせる。エアコンだけに任せっぱなしにしないのも、快適に過ごすコツである。
※価格は記事作成時のものです。
■解説/中村剛
■取材・執筆/諏訪圭伊子(フリーライター)