バルミューダが2万円超の製品をヒットさせたのをきっかけに、トースター市場は、この5〜6年で様変わりを見せた。それまでは数千円の製品が一般的だったが、今では1万円以上のモデルが目立っている。ほかにもパナソニック、シロカ、アイリスオーヤマ、ブルーノのオーブントースターを紹介する。
監修◆中村 剛(なかむら つよし)
「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権で優勝の実績を持つ家電の達人。家電製品総合アドバイザー。東京電力「くらしのラボ」所長。
目指せ!家電選びの達人今回の家電は「オーブントースター」
おうち時間が増えたことで、オーブントースターの存在感が高まっている。市場を盛り上げているのは「新世代トースター」ともいうべき1万円以上の高性能モデル。単にトーストするだけでなく、長く使える愛用品へとスタイルを変えつつある今どきのトースターに焦点を当てた。
1万円以上のモデルが台頭
外側はカリッと、中はモチッと仕上げる
バルミューダが2万円超の製品をヒットさせたのをきっかけに、トースター市場は、この5〜6年で様変わりを見せた。それまでは数千円の製品が一般的だったが、今では1万円以上のモデルが目立っている。
高性能なトースターは、高火力でパンの表面を焼き固め、中に水分を閉じ込めることで、外側はカリッと香ばしく、中はモチッと食感よく仕上げることができる。時間や温度の設定なしに、ちょうどよく加熱するマイコン式や、内部で熱を循環させることでノンフライ調理などができるコンベクションタイプなども実用性が高い。
また、性能面だけでなく、デザインやメンテナンス性がいいのも今どきモデルの特徴。さらに、メーカーがメニューサイトを運営してレシピを提供し、使いこなしをサポートする例も見られる。インテリアに合うトースターでいろいろな調理を楽しみ、お手入れもしっかりして長く愛用する。そういった使い方が、一つの流れになっていきそうだ。今回は、それらの特徴を持つ新世代トースターから5モデルをピックアップ。個性を交えて紹介していきたい。
各社独自のアプローチ
専用容器を使うアイリス、短時間で焼くシロカ
■アイリスオーヤマ
トースト、料理、デザートなど20種類の自動調理メニューを有する多機能モデル。専用容器を搭載することで、ハンバーグや焼きそば、アクアパッツァといったメニューにも対応している。
アイリスオーヤマ
マイコン式オーブントースター
MOT-401
実売価格例:1万6280円
マイコンを搭載し、20種類の自動モードを実現。専用容器を採用したことで、はやりの「生食パン」モードにも対応する多機能な一台。
専用容器で生トーストが作れる。自動メニューも多彩
専用容器のさらなる売りは、モチモチした食感の「生トースト」が作れることだ。容器の四隅に水を入れ、密閉状態で食パンを蒸し焼きにすることで、普通に焼くだけでは味わえないスペシャルなもっちり感が味わえる。
専用容器を使わない通常のトーストもおいしく焼けて、一台で多彩な食感を楽しむことが可能だ。
《アイリスオーヤマ/トースト結果》
メニュー、枚数、焼き色を選んでスタート。通常のトーストの場合は、水を使わず、食パン2枚が3分10秒で焼き上がる。
■シロカ
トースト1枚を90秒と、スピーディに焼けるのが特徴の「すばやき」。最新モデルでは、端側になるほどコイルの密度が高いヒーターを採用したことで、熱を均一に行き渡らせている。
シロカ
すばやきトースター
ST-2D351
実売価格例:1万7800円
独自の「炎風テクノロジー」を新たに採用し、トーストの質を向上。スピーディな焼き時間はそのままに、焼きムラを抑えてしっとり仕上げる。
スピーディに焼けるのが特徴。メンテも簡単になった
また、前面ガラスの二重化による保温効果も相まって、従来機よりパン内部の水分含有量が14%アップ。トーストの中身が、よりしっとり仕上げられるようになった。
《シロカ/トースト結果》
リフレクターやファンを使い、熱の最大効率化を図って、スピーディに焼くのが特徴。食パン2枚は1分50秒でトーストする。
オートメニューは9種類を搭載し、ダイヤルを回してボタンを押すだけの簡単操作で最適な焼き加減を提供してくれる。
焼き網を外すと扉が90度開く構造で、すき間のパンくず掃除も簡便化した。
トースト以外のレシピも充実
やきいもやスイーツ作りも気軽に楽しめる
■パナソニック
オーブンの分野で長年培った技術を投入し、高級オーブンレンジ「ビストロ」の名前を冠したハイテクモデル。
パナソニック
ビストロ NT-D700
実売価格例:2万7000円
「遠近トリプルヒーター」と、ヒーターの出力を7200とおりに調整する「インテリジェント制御」を搭載。パンに合わせて最適なトーストを行う。
三つのヒーターで失敗なく絶妙に焼き上げる
トースト時には、7200とおりのパターンから最適なプログラムを選び、ベストな焼き加減に仕上げる。遠赤外線2本と近赤外線のトリプルヒーターがパンの中と外を同時に加熱するため、難しい冷凍クロワッサンのリベイクもお手の物だ。
また、手動モードを使って、冷凍生地から焼き上げることもできる。
シンプルでミニマムなデザインだが、液晶画面が見やすくて、使いやすい。モード選択時は、「うすぎりトースト」などとメニュー名で表示されるのでわかりやすく、スムーズに操作ができる。
《パナソニック/トースト結果》
うすぎりトーストモード→スタートで約3分。表面のカリッと感と、中のもっちり感のコントラストが絶妙な焼き上がりに。
オートモードは、各種パンメニューのほか、話題のやきいも専門店の味を追求した「じっくりやきいも」を含む15種類を搭載。
■バルミューダ
洗練されたデザインや、スチームを使ったトースト、活発なレシピ展開など独自のこだわりが満載で、新世代トースターの先駆的存在。
バルミューダ
BALMUDA The Toaster K05A
実売価格例:2万5850円
販売台数100万台を突破した大ヒットトースターの最新機。独自のスチームテクノロジーと細やかな温度制御で、こだわりの味を追求する。
焼く前に水を注入。水分や香りを中に閉じ込める
発売から2回マイナーチェンジをしており、最新機では温度制御全体を見直して、よりおいしい仕上がりを実現している。
《バルミューダ/トースト結果》
吸水口に水を入れてトーストモードを選び、タイマーを3分にセットしてスタート。冷凍パンの場合は1分プラスする。
また、焼き網やボイラーカバー(スチーム発生部のカバー)の改良で、メンテナンス性も向上した。特に焼き網は、フレームに載せるだけという仕様で着脱が手軽になり、内部の掃除がよりこまめにできるようになっている。
■ブルーノ
スタイリッシュなデザインが多い中、クラシカルな味わいが人気のブルーノ。タイマーにはチクタクと時を刻むアナログ音を採用し、レトロな雰囲気を一層盛り上げる。
ブルーノ
crassy+ スチーム&ベイク トースター
実売価格例:1万5400円
レトロで温かみのある北欧デザインを採用し、インテリア性に富んだモデル。粉から作るパンレシピを公開するなど、レシピサイトの独自性も光る。
トーストは水を注入し、スチームでモチッと仕上げる
「スチーム」「ノーマル」「コンベクション」の3種類のマニュアルモードを備え、料理やスイーツ作りにも幅広く利用が可能だ。トーストする際はスチームモードを使い、水蒸気でパンの表面を包み込み、高温で一気に焼き上げる。
《ブルーノ/トースト結果》
ダイヤルで「スチーム」を選択→温度を設定→時間をセットして開始。トースト2枚は、250℃で3分〜3分半で焼き上がる。
レシピサイトでは、アレンジパンや料理ではなく、粉から作る手作りパンレシピを公開するなど、ちょっと変わったアプローチを展開。自分の手でこねるパン作りを推奨することで、おうち時間の充実をサポートしながら、トースターに親しむ時間も生んでいる。
各社がオリジナルレシピの提供にも注力
最近は、レシピサイトをメーカーが直接運営するケースが増えている。オリジナルレシピの提供などで製品の使用をサポートすると同時に、ユーザーとの接点を持つメリットがある。
「パナソニック」のレシピサイト
写真映えするアレンジパンやオーブンメニューを多数掲載。人気の生食パン専門店「乃が美」とのコラボも好評。
「ブルーノ」のレシピサイト
人気ベーカリーのシェフが考案した、作りやすいパンレシピを公開。作り方が動画で丁寧に紹介され、まねしやすい。
「バルミューダ」のレシピサイト
オリジナルやプロとのコラボレシピを紹介。ニュースメール(無料)に登録すると、最新のレシピ情報が届く。
まとめ
今回は、所有する心地よさや使う楽しみなど、付加価値が充実しているトースターを選んだ。コロナ禍で家で過ごす時間が増えた昨今は、そういった豊かさを備えるアイテムが求められているように思う。もちろん、新世代トースターは、性能もしっかりと進化していて、道具としても魅力的だ。先々は、ネットとつながって自動メニューが増やせるなど、ハイテク方面の進化にも期待できそうだ。
※価格は記事作成時のものです。
取材・執筆/諏訪圭伊子(フリーライター)